特集 ドゥカティジャパン

「1日に8台のペースで生産」

D16RRの車体生産ラインは、丁寧な組み立てに気を遣い、最高峰のモーターサイクルに相応しい仕上がりになるよう配慮しています。最高のパフォーマンスを生み出すには、優秀な設計にハイクオリティパーツも必需品ですが、我々はそこに「情熱の手」を付け加えることで、ドゥカティらしい味付けを濃厚にしているのです。

 

エンジンラインでも説明があったと思いますが、我々が優先しているのはとにかくクオリティです。それゆえ一般の生産ラインのように台数を追うことはしません。午前中に組み上げたエンジンは午後に車体ラインへやってきますが、1台につき専属メカニックが2〜3人つきっきりになり、完成まで同じスタッフが組み立てていきます。スペースとスタッフの人数を考えてもライン上に並べられるのは4台が最大で、日産8台で動くならスタッフは1日に2台D16RRを組み立てる計算になります。

 

エンジンライン同様、スタッフは選抜メンバーで構成されており、皆この仕事に誇りを持って携わっています。アッセンブルするだけなら誰でもできると思うかもしれませんが、それは違います。組み立てるだけでも、そこに情熱が加われば、自ずと仕上がりは変わってくるものです。同じパスタでも家ごとに味が異なるのと同じですね。我々は我々が組んだD16RRに、自信と誇り持っています。存分に堪能してください。

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Project Engineer / パオロ・ヴェルサーリ  Paolo Versari<

Project Engineer / パオロ・ヴェルサーリ Paolo Versari

ボローニャ大学で航空宇宙学を専攻
2000年 ドゥカティモーターホールディング社入社、R&D部門に配属
主なプロジェクトへの参加は998,999の車体設計に従事
他、Multistrada、モンスターS4R、SC、1098の開発プロジェクトに参加
2007年 D16RRのプロジェクトリーダーに就任

D16RR車体生産ライン

大量生産を基本とするマスプロダクト製品は、モーターサイクルに限らず生産ラインに於いてとことん効率を優先する。クルマの場合、機械が正確な作業を延々繰り返していくが、モーターサイクルの場合まだ人の手に負うところが大きい。基本となるパーツが右から左へコンベア上を流れ、各作業員が担当分のパーツを組み込み徐々にカタチにしていく。人は基本的に動かず同じ場所で同じ作業を繰り返し、目の前をいくつものエンジンや車体がゆっくりと流れて行くのが一般的な生産ラインの在り方だ。

 

ところがD16RRの車体組み立てラインは、まるで昔に戻ったかのような方法を取っている。1台が組み上がるまで担当者がつきっきりで面倒を見るのだ。正確に言えば、トロリー(滑車)に載ったフレームとエンジンがゆっくり進んで行くから、固定台で作業する昔と同じというのは大げさなのだが、1台に人がつきっきりで面倒を見るという状況は変わらない。しかも、マスプロダクトの生産ラインと呼ぶには抵抗があるくらい、台数が少ないのである。生産ラインと言えば限られたスペースにギッシリ並んでいる印象があるが、そのイメージからかけ離れた、余裕すら感じる間取りである。

 

秒単位で時間に追われるより、より確実で丁寧な仕上りを目指す。MotoGPワークスマシンとほぼ変わらない内容のドリームバイクは、そんな贅沢な空間で、リアルレプリカに見合う仕上がりのために手間を惜しまず組み立てられている。

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車体組み立てはエンジン単体に比べ、当然重量がかさむ。そこで車体を固定するトロリーも自動運搬式になるのだが、この車体専用組み立てラインの真下にはトンネルがあって、車体完成後にトロリーがそこを潜り、スタート地点に戻る仕組み。なかなか凝った仕掛けである。

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トロリーにはまずエンジンが固定され、その上に作業を済ませたフレームを被せ、スタートする。

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フレームナンバーの打刻

ハイブリッド・トレリスフレームを採用するD16RR。トレリスセクションは従来モデルより短く、これが軽量化の一助となっている。このメインフレーム部分は、エンジンと組み合わせる前にやるべき作業がある。フレームナンバーの刻印である。専用冶具にセットし台紙を挟んだ状態で、インプットしたアルファベットとローマ字を機械が正確に打ち込んでいく。これが、この車輌のアイデンティファイ・ナンバーになるのである。

 

エンジン組み立てラインでもそうだったが、自動化できる単純作業は機械に任せ、確実に作業をこなすのがドゥカティ式の考え。ただし、同じ確実さでも要所で手作業を盛り込むのがD16RR用ラインの特徴と言える。

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まずは、フロント及びリアの足周りパーツの装着から。必ず2人ペアで作業を進めていく。

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フォークをフレームにぶつけない、ただそれだけのために…

単一機能の専用機械が多いのはD16RRに限った話ではないが、フォークをフレームに組み込むためだけに用意されたサポート用マシンは、そうそうないのでは? フォークは三つ又とセットでオーリンズから納品され、組み込む際にフレームに当てないようにという配慮ゆえ(写真右)。下は、スイングアームにベアリングを圧入する機械。

 

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スイングアームにベアリングを圧入中(左)三つ又とセットになったフォークはそこそこの重量になるため、装着専用マシンを使用。予めヘッドパイプアングルに合わせてあり、エアを利用するため、安全確実(右)。

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フォークとスイングアームの装着後は、配線や灯火類に。エンジン周りはパーツ密集エリア。

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軽量コンパクト+ パワフルLツインの走り

徹底した軽量化もD16RRの特徴のひとつだが、それは樹脂系パーツの少なさからも見てとれる。外装関係はもちろん、メーターステーやパネル、エアダクトやライセンスプレートホルダーなど、ドライカーボンを多用。なかなか贅沢である。エアボックスを含めたこの辺りのパーツは、すべて外部のメーカーに製作を依頼しており、D16RRのアッセンブルラインではできあがっているパーツを組み込むだけの段取りになっている。

 

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インダクションボックスは、インジェクター等が組み込まれたアッセンブリー状態でマグネッティマレリ社から納品されている。

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後々手が入らなくなる場所へのケアが済んだら、エアボックスや外装類をマウントしていく。

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フォークをフレームにぶつけない、ただそれだけのために…

数を追わず丁寧で確実な作業をモットーにするとは言え、すべてが手作業なワケではない。単純なパーツ組み込みの場合は、すでにトルク値が設定された専用工具(主に電気ラチェット)が用意されており、スタッフは握ってスイッチを押すだけというのがエンジンも車体もライン作業の基本になっている。ただし気遣うべきポイントやイレギュラーはあるワケで、必要であればタップを直に立てて加工するなど、職人技も登場。一般的な量産ラインではなかなかお目にかかれない。

 

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ラインの両脇には様々な工具が並ぶ。D16RRのラインは電気系の比率が高めで、エア系もあるが電気工具の間に挟まっている感じだ。

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完成後仕様書を確認しテストセクションに移動。再びエンジンテストを行い車体もチェック。

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フォークをフレームにぶつけない、ただそれだけのために…

完成後、工場長が仕様書を確認しながら組み忘れ等ないか確認し、問題なければ検査ラインへ。最終チェックでは40箇所以上のチェック項目があり、不具合があればその場で直すことはせず、担当部署に連絡し担当者が責任を持って修理する仕組みになっている。各部のダブルチェックを潜り抜け、D16RRはようやく完成に至る。

 

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向って左が車体アッセンブルラインの名物工場長。エンジンも含めて、すべて彼が仕上がりのチェックを入れる。

DUCATI BIKES。このコンテンツはドゥカティ専門誌「DUCATI CAMPIONE DEL MONDO 011」の記事を再構成したものです。本誌では、デスモセディチRRのインプレッションやパーツリストなどを掲載。全てのドゥカティストに贈る完全保存版です。