VIRGIN DUCATI | MH900e DUCATI購入ガイド

MH900e

  • 掲載日/2010年10月13日【DUCATI購入ガイド】
MH900eの画像

MH900e

「1970年代の耐久レーサーや900MHRを現代にカムバックさせたい。そんな話を同僚たちと夢中になって話していたら、ドゥカティの新しいイメージになるからと経営トップからのゴーサインが出た」

これは製作者であるピエール・テルブランチ(ドゥカティ・チーフデザイナー=当時)の言葉で、MH900eがどんなオートバイであるのかをとても簡潔に語っている。

1970年代半ば、ルマン24時間をはじめとする世界耐久選手権を戦っていたドゥカティの速さと強さ、そしてカッコよさに憧れた少年が世界有数のデザイナーとなり、彼らに対する畏敬の念と自身の夢を融合させ、作り上げたのがMH900eなのである。テルブランチと同じように、70年代のレースシーンを観てドゥカティに憧れた人々にとっても、やはり夢がかたちになったオートバイといえる。

MH900eのモチーフになったのは『DUCATI NCR 900 TT1』で、1978年にマイク・ヘイルウッドがマン島TTで優勝したマシンだ。その翌年、ドゥカティはその記念として量産版である『900MHR(マイク・ヘイルウッド・レプリカ)』を発売する。900MHRは瞬く間に人気となり、「速くて美しいオートバイ=ドゥカティ」のイメージを世界中のバイクファンが抱くようになっていった。900MHRはドゥカティの歴史に名を刻むモデルであることはもちろんだが、同時にモーターサイクル史にとっても重要で欠かせないオートバイである。

そうした背景の中、カジバ傘下から独立を果たしたドゥカティにとっての新しいイメージモデルとして、MH900eは誕生した。その姿かたちはオリジナリティ溢れるものだが、世界初となるインターネットによる予約販売という販売形態にも独自性が表れていた。

いよいよ市販されたGPレプリカ

1998年9月、ドイツ・ミュンヘンで開催された『インターモット98ミュンヘン』にて、MH900eは前触れも予告もなく発表され、世界中をあっといわせた。しかしこの段階ではプロトタイプにすぎず、ドゥカティはMH900eを市販化するかどうかを決定していなかった。生産コストの見積もりもなく、市販したとして本当に売れるオートバイであるのかどうかも未知数だったからだ。しかし世界のドゥカティファンは熱烈にMH900eの登場を待ち望み、ドゥカティへラブコールを送った。日本からは二輪専門誌『クラブマン』の読者アンケートがイタリア語に翻訳され、ドゥカティ本社に届けられた。

そうした想いが結実し、1999年12月の『ボローニャ・モーターサイクルショー』にて量産版もMH900eが発表された。一部のディテールは異なるものの、プロトタイプをほぼ踏襲したスタイリングとフォルムを持つ量産版には、やはり世界中の注目が集まった。

そして2000年1月1日午前0時、インターネットによる予約販売が開始された。2000台の限定生産、価格は15,000ユーロ(当時の通貨換算で約160万円)だった。予約したオーナーのもとに車両が届けられたのは、それからおよそ1年半後、2001年5月からのことだった。

MH900eの画像
MH900eの画像
MH900eの画像

スーパーモノをはじめ、999や旧ムルティストラーダ、ハイパーモタードを手がけたデザイナー、ピエール・テルブランチによって形となったMH900e。シンプルな見た目のとおり、外装パーツの脱着は容易となっており、補器類はカウル内にうまく収められている。

MH900eの車体構成

エンジンはSS900i.e.にも搭載される、排気量904ccの空冷2バルブを採用。オイルパン部分にはベベルLツインを連想させるアルミ製ダミーカバーが装着される。そのLツインを搭載するのはMH900eオリジナルのトレリスフレームで、クロームモリブデン鋼をTIG溶接する仕様となっており、すべて手作りという贅沢なものになっている。テルブランチは往年のマシンのような両持ちスイングアームを採用したかったようだが、「未来をイメージさせたい」というドゥカティの意向により片持ちスイングアームとなっている。しかしこのスイングアームもフレーム同様のトレリス構造を採用し、MH900eならではの意匠を醸しだしている。

生産にあたってはビモータ社が携わっていたこともあり、ビモータ社と縁の深いメーカーが多数関わっている。そのため、MH900eの外装パーツを取り去ると、どことなくdb1を思わせるフォルムを持つ。フレームはベネリテライオ社、フロントフォークはマルゾッキ社、リアショックはパイオリ社、ヘッドライトやメインハーネスはCEV社、コンビネーションメーターはエステレコン社、マフラーはテルミニョーニ製でスイングアームはイタルメック社だ。ちなみにエンジン関連の電装系は日本製となっている。

MH900eの画像
エンジンはSS900i.e.にも搭載される空冷2バルブLツインを搭載。オイルパン部分にはベベルLツインを思わせるアルミ製カバーが装着される。フレームはベネリテライオ社による手作りのトレリスフレーム。
MH900eの画像
トップブリッジやステアリングダンパーはポリッシュ加工され、美しい輝きを放つ。メーターは電気式タコメーターと液晶表示のスピードメーターのみ。液晶部には時計、油温計を装備する。
MH900eの画像
ハンドルバーには996と同一のクイックリリース仕様が装着される。ただしアウターチューブ径が異なるためにカラーがセットされ、寸法を合わせてある。そのため996用ハンドルバーを流用可能。
MH900eの画像
エンジンの冷却効果を高めるため、バッテリーは二分割されて左右にひとつずつ取り付けられている。容量は7A×2となる。テスト走行によってプロトタイプから変更を受けた部位のひとつだ。
MH900eの画像
オートリターン式のサイドスタンド、ステップ、チェンジレバーは、ポリッシュ加工が施される専用品。電気式スピードメーターのセンサーがスプロケットカバー部に取り付けられている。
MH900eの画像
テルブランチは両持ち式にしたかったようだが、往年のビモータを思わせるトレリス構造の片持ち式スイングアームは文句なく美しく、ずっと眺めても飽きない。緩急ある曲線の構造体をチェーンが貫く。
MH900eの画像
リアサスペンションには、ドゥカティにしてはめずらしいパイオリ社製モノショックを採用。サス設定は日本専用にセッティングされ、乗車1Gでの沈み込みが大きく、足つきは良好だ。

新車と中古市場

2000台の限定で生産されたため、現在では新車を購入することはできない。また、世界初のインターネットによるオートバイの通信販売という方法によって販売されたこともあり、ショップに新車在庫がある可能性も皆無だ。よってMH900eを購入するならすべて中古車両になるのだが、総じて走行距離が少ない傾向にあるためデメリットは少ないだろう。なかには走行距離が二ケタ台の車両もあるので、状態のいいものを手に入れたいのであればある程度じっくりと探してみることも大切だ。

ちなみに発売当時の価格は15,000ユーロ。これは当時の通貨レートで換算すると約160万円となる。現在の中古相場は100~170万円くらいとなっており、予算に合わせた車両選びも可能な範疇といえる。

※中古市場などの情報については、2010年10月現在のものです

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価格・スペック

記載の車両情報や価格表記はメーカー発表当時のものです。
最新の車両情報に関してはメーカー公式サイトをご確認ください。
スペック情報は万全な保証を致しかねます。実際に購入される場合はDUCATI正規ディーラーへお問い合わせください。
排気量
904cc
ボア×ストローク
92×68mm
最高出力
80ps/7,500rpm
最大トルク
78Nm/6,500rpm
トランスミッション
6速
圧縮比
9.2:1
キャスター角
23.5°/24.5°
全長
2,050mm
全幅
780mm
全高
1,060mm
シート高
820mm
ホイールベース
1,430mm
乾燥重量
172kg
燃料タンク容量
9リットル
エンジン形式
L 型4気筒 2バルブ デスモドロミック 空冷
燃料供給
マレリ製電子制御燃料噴射 50mmスロットルボディ
クラッチ形式
乾式多板
フレーム形式
鋼管ハイブリッドトレリスフレーム(ALS450)、カーボンファイバー製シートフレーム
フロントサスペンション
オーリンズ製 FG353P 43mm TiNコートフルアジャスタブル倒立フォーク
リアサスペンション
オーリンズ製モノショック リバウンド・低速/高速コンプレッションダンピング・油圧プリロードアジャスト
フロントブレーキ
330mmセミフローティングダブルディスク ブレンボ製4ピストンラジアルマウントモノブロックキャリパー
リアブレーキ
240mmディスク 2ピストンキャリパー
価格
15,000ユーロ(2000年当時の新車価格)

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