VIRGIN DUCATI | ドゥカティ スーパーバイク1098 試乗インプレッション

スーパーバイク1098の画像
DUCATI Superbike 1098

ドゥカティ スーパーバイク1098

  • 掲載日/2008年10月29日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/Ducati Japan  取材・文・写真/八百山 ゆーすけ

スーパーバイクレースとともに
進化した水冷Lツインの最新型

996SPSでサーキットランを楽しむ僕にとって、1098への試乗は心躍るものだった。というのも前作の999シリーズは、僕の996をはじめとした916/996/998シリーズからデザインやバイクの作りが大きく変わってしまい、996の新しいモデルだとは思えなかったからだ。それが、1098では排気量が拡大された新しいエンジンながら、いろいろな部分が隔世遺伝のように916/996/998の面影を残している。そこに僕は特に惹かれているのである。ドゥカティのデスモドロミックL型二気筒エンジンには大きく分けて水冷と空冷があり、1098は水冷エンジンを搭載するスーパーバイクシリーズの最新作。このシリーズは、世界スーパーバイク選手権(SBK)にチャレンジするために’88年に登場した851以来、ドゥカティ全モデルの中で常に最高のパフォーマンスを与えられてきた。スーパーバイク選手権では2007年シーズンまで2気筒は1000ccまでという規則があったのだが、2008年シーズンからは1200ccまで認められるため、それを見越して排気量を1099ccにアップしたのが1098なのである。

スーパーバイク1098の特徴

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未だ人気の高い916/996/998が
現代風にリファインされ蘇った!?

2003年に前作999がデビューしたとき、プロジェクターランプ2灯を縦に配置したレイアウトが、まるで『銀河鉄道999』に出てきた機関車のノーズにも思えるほど個性的だった。1098ではオーソドックスな横2灯のレイアウトになり、サイドパネルにあったスポイラーもなくなった。箱形だったサイレンサーも楕円断面の2本出しとなり、全体としてとてもコンベンショナルなのが1098のデザインだ。一方、スイングアームは916/996/998シリーズのように再び片持ちとなっているのが特徴。右側面からは細身のY字型5本スポークのホイールが丸々見える。プロジェクターランプを使ったデュアルヘッドライト、楕円断面2本出しマフラー、片持ちスイングアームなど、字面だけを追えばそのまま916/996/998シリーズ。イメージとしては998まで先祖がえりしたレイアウトを、現代風にアレンジしたのが1098と思えてならない。

1099ccにスープアップされたエンジンは「テスタストレッタエボリューション」と呼ばれ、サイズアップにも関わらずヘッド周りはさらにコンパクトに進化。エンジン全体で5kg近い軽量化を実現している。エンジンは各部の見直しで999から20HP近い出力向上を実現し157HPをたたき出す。このパワーを受け止めるのがドゥカティ伝統の鋼管トレリスフレーム。日本製のスーパーバイククラスのバイクが、すべてアルミフレームなのに対して、ドゥカティはmotoGPマシンも含めて頑なに鉄パイプフレームを使い続けている。1098ではさらにこれが太くなり、カウルの隙間から覗く赤い骨格が存在感をアピールしてくるのだ。また、このIT化が進んだ時代に登場したドゥカティならではの装備にも注目したい。「DDA=ドゥカティ・データ・アナライザ」と呼ばれ、motoGPなどレースマシンに搭載されるデータロガー(記録)機能を1098Sでは標準装備(1098はオプション設定)する。これは水温、速度、エンジン回転数、ギアポジション、スロットル開度、ラップタイムといったデータを、専用のUSBメモリに記録し、パソコンの専用ソフト上でグラフ化して見ることができるというもの。1098ではバイクを移動するための道具から、スポーツライディングで楽しむ道具と捉え、オモチャ的な機能を付加した新しい試みだといえる。ワインディングを走った後、仲間とこのグラフを見ながら「アクセルの開けが足りないよ」と「回転数が高すぎるんじゃない」とワイワイやる話題の中心になりそうだ。

スーパーバイク1098の試乗インプレッション

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排気量アップを凌ぐパワー感
でもスロットルを開けるのが楽しい

シートにまたがってみて「うーん、やっぱりコレコレ」と唸ってしまった僕。前作999では、シート高が780mmと乗りやすい高さになり、安定傾向のポジションになってしまったことをちょっと寂しく感じていた。やっぱりドゥカティはとても高いところに座り、そこからパタンと倒れるようにバンクする乗り物という感覚があった。その高いところから倒れる感じがこの1098で復活したように感じたのである。走り出してみてすぐに感じたのは、排気量アップがもたらす力強さ。996に乗り始めた頃、その加速感にシビれたものだが、1098は間違いなくそれを圧倒的に上回るパワーフィールを与える。試しに高速道路の本線料金所から低いギアを引っ張ってダッシュしてみたところ、猛烈な加速感に圧倒された。ただ、それは扱いきれないものではない。コーナーの立ち上がりでスロットルを開けるときに4気筒のような神経質さがなく、躊躇なくしっかり開けていける2気筒ならではのキャラクターが楽しい。

まず、スタンダードで乗り始めたときは、やはり手ごわい印象があったことは正直に記しておく。サスペンションは良く動くが硬く感じるし、きつめの前傾姿勢は街中の走行に向いていないように思えた。ただ、エンジンについては音、レスポンス、扱いやすさともに好印象。特に5000回転前後の力強くもスムーズなパワーフィールは癖になる心地良さだ。そして、エンジンの面白さを味わっているうちに、バイクとライダーの動きに、国産モデルで見られる「あいまいな」部分が無いことに気が付いた。ライダーに伝わる路面情報、バイクへ伝える入力、そのいずれも余計なフィルターを通していないのだ。最初はあまりの情報量に戸惑いを覚えたが、慣れてくると同時にこの率直なやりとりによって、「これからどうすればいいのか」ということが、バイクから乗り手に伝えられてくる。

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一方、タウンスピードで低い回転数を使うときには、ストールしないかと神経を使うが、少し回してあげればダダダダというスナッチも少なく走ることができる。スーパーバイク選手権でLツインのトラクションの良さと、スリムなエンジンが生み出すコーナリング性能で幾度となくチャンピオンを取ってきたドゥカティ・スーパーバイク。このコーナリングマシンのポテンシャルを引き出すには、実は相当な修行が必要だといろいろなドカ乗りの先輩から聞いてきた僕。996ですら未だ満足なコーナリングができたのは数えるほどしかない。1098は乗りやすいという評判もあるが、少なくとも今回の試乗ではまったく満足なコーナリングを得ることができなかった。しかしそれは、逆に言うと取り組みがいがあるというもの。これが趣味ってモノじゃないかと思う。

こんな方にオススメ

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ワインディングで対話できる
スポーツライディングマシン

低いハンドルに高いシート、そして高い回転数を回して走るエンジンキャラクターなど、1098は紛れもなくスーパースポーツ。そのため、なかなか日常の足として、本格的なツーリングには向かないのは明白だ。ムルチストラーダやモンスターに乗っていたオーナーが、同じドゥカティだからといって、同じ感覚で乗るのは無理があるかもしれない。逆に国産スーパースポーツにちょっと食傷気味なライダーにとっては、2気筒という全然違うキャラクターに対するチャレンジとしてオススメだ。DDAに象徴されるように、1098は移動する手段としての乗り物ではなく、あくまでもスポーツライディングを楽しむためのバイクなのだ。日常から開放された週末に、ワインディングで1098と対話する。まさに週末にだけ会うことができるイタリア人の恋人のような存在なのである。

総合評価

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motoGPでチャンピオンに輝く
その勢いがオーラに表れている

今回、黄色い1098を目の前にして、バイクから放たれるオーラは何か違っていた。パッと見は最近の日本製スーパースポーツモデルに比べて強い主張がないものの、そこはドゥカティの最高峰モデルの最新作。試乗の約2週前にmotoGPでケーシー・ストーナーがチャンピオンを決め、2日前にはオーストラリアGPでドゥカティがワンツーフィニッシュを決めたのもあってか、さらにオーラが輝いて見えたのである。最近のドゥカティはmotoGPをはじめとしてとても勢いづいている。そんな勢いを受けて生まれたのが1098だと思う。実は前作999が出たときに、996のオーナーとして気にはなったが、結局買い換えるほど心が動かされなかった。今回の1098は大好きな996シリーズに回帰したようなスタイルやディテールだけでなく、全体から何かワクワクするようなものがビシビシと伝わってくる。試乗で立ち寄ったパーキングでも、何人かのライダーに声をかけられた。おそらく、これはドゥカティオーナーだけでなく、スポーツバイクが好きなら誰しもが感じる1098の最大の魅力なのかもしれない。

スーパーバイク1098の詳細写真

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motoGPばりのデジタルメーターパネル

コクピットに鎮座する大型液晶パネルのデジタルメーター。回転数をバーグラフ、スピードをデジタル数字で表示するほか、左ハンドルのアップダウンスイッチで、タイムやUSBメモリの内容などを表示することもできる。
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抜群の効きを見せるフロントブレーキ

ラジアルマウントされる鋳造モノブロックのブレンボキャリパーと330mmディスクの組み合わせで、抜群の効きを示すフロントブレーキ。インナーチューブの酸化チタン処理と相まって強いアピアランスを与える。
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走りをチェックできるデータロガー機能

タンデムシート下の車載工具が納まる小さなスペースには、データロガー用USBメモリを差すコネクタを装備。最大3時間半の車速、ギアポジション、スロットル開度などのデータを記録しパソコンで見ることができる。
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片持ち式スイングアーム

916/996/998の特徴のひとつだった片持ち式スイングアームが復活した。998以前の鋳造からアルミプレスのボックスタイプに進化している。高剛性の極太ゆえに、チェーンがスイングアームを貫通する。

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