VIRGIN DUCATI | ドゥカティ ストリートファイター848 試乗インプレッション

ストリートファイター848の画像
DUCATI Streetfighter 848

ドゥカティ ストリートファイター848

  • 掲載日/2012年03月27日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/Ducati Japan  取材・写真・文/高城 一磨

848ccながらモンスター1100よりパワフル!
ワイドレンジに遊べるストリートファイター848

水冷ハイパワーエンジン搭載のドゥカティ製ネイキッドモデルであるストリートファイターは、2009年にデビューした。テスタストレッタエンジンを搭載した水冷モンスターの後継モデルとして登場したが、ST用シャシーベースの水冷モンスターに対し、ストリートファイターはシャシー、エンジンともスーパーバイクの1098がベースで、よりハードコアな作りを持つ。

今回登場したストリートファイター848は、兄貴分と同じくスーパーバイクベースという素性を持つが、排気量が小さくなっただけではなく、各所にユーザーフレンドリーな作りを盛り込んでいる。エンジン、シャシーともに 848EVO をベースとしながらも、最終的には完全専用設計と手間をかけた、その狙いは?

ストリートファイター848の特徴

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スーパーバイクとほぼ同じディメンション
ミドルクラス初のテスタストレッタ11°

ついに日本へも上陸したパニガーレ。何を隠そうこれまでのドゥカティスーパーバイクモデルとは、かなり異なった作りとなっている。

ストリートファイター(1100)は、もともとスーパーバイクベースだが、ストリートファイター848のフレームは専用で開発が進んだ。ドゥカティがドゥカティであるためには、スポーツ性を捨てるワケにはいかないが、その基本部分を大きくスポイルすることなく、もっと日常域での乗りやすさ、扱いやすさを向上させた水冷モデルがあってもいいのではないか、そんな想いから開発はスタートしたという。乗り味を決めるフレームを専用設計で開発した理由はそこにあり、様々な仕様を試したものの、最終的にはスーパーバイクのディメンジョンとほぼ同じ数値を持つ車体構成になった。だが、これは「結果的に」であって、最初からその数値で作り込む予定ではなかったのだとか。期せずして、スーパーバイクのディメンジョンの対応力の広さを証明するカタチになったわけだ。

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またエンジンは 848EVO ベースだが、バルブのオーバーラップ角(吸排気バルブが同時に開いているタイミング、クランクの回転角度で表す)を、スーパーバイク仕様よりも抑えることで低中速域でのパンチを出し、インジェクションを含めたエンジン出力マッピングの調整を合わせて施すことにより、融通の利くエンジン特性に仕上がった。シャシーやエンジンだけではなく、ポジションもリラックス度を増している。部分的にではなく、全体的に内容の見直しを図ったからこそ、レベルの高い仕上がりになったのだが、その根本には「より多くの人に、スーパーバイク直系のスポーツ性を楽しんでほしい」という想いがあったのでは、と感じている。

ストリートファイター848の試乗インプレッション

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雨天でも扱いやすい高いバランスの車体
引き出すことができれば、走りはスーパーバイクレベル

日本のオートバイマーケットというのは少々特殊で、いまだに排気量の大きいほう、パワーの高いほうがエライという信仰が根強く残っている。だが非日常的なスピードを楽しむサーキットや、一部のパワー・オリエンテッドな人々を除いて、排気量が 600cc もあれば、ほとんどの状況でパワーを使い切れていないことのほうが多い。前置きが長かったが、なにが言いたいのかといえば、ここで紹介する「848」という排気量でも、もはや「十分事足りているのだよ」ということ。同じスタイルの兄貴分が 1,100cc もあるから、なおさらインパクトに欠ける部分があるとは思うが、そういう予備知識を除き1台のバイクとして接してもらうと、この手の中間排気量といわれているバイクのおもしろさ、凄さがわかると思う。

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ストリートファイター848も、1,000cc や 1,200cc の大排気量ツインが当たり前のように肩を並べる中では、ニューモデルとはいえ目立たず、「ああ、排気量の小さい水冷のヤツね」と片付けられがちかもしれない。でも、それではこのバイクの真の姿を理解しているとは言えず、もったいないと思ってしまう。ストリートファイター848が素晴らしいのは、ネイキッドモデルとしての高いバランスにある。ストリートファイター(1100)よりも万人向けで、しかもドゥカティらしいスポーツ性を損なっていない。それはサスを柔らかく設定しているとか、エンジンの出力マップを日本専用に作っているとか単一的なことではなく、「水冷デスモ・クワトロの楽しさを、もっと多くの人に」というコンセプトのもと、車体からエンジンに至るまで専用設計で開発した効果で、各機能を先の共通目標に向かい作りこんだ結果に他ならない。ストリートファイター(1100)がスーパーバイクのハードさを残しネイキッドスポーツの頂点を目指すものなら、ストリートファイター848はその敷居を技術力で低くすることにより、ドゥカティの考えるスーパーバイク系モデルのおもしろさをより日常レベルで味わえるように仕向けたもの。だから、路面の変化、天候の違いなど、様々な条件変化にも扱いやすさを崩さずに対応することができ、ラクに速く走ることができる。このバランスの高さは、ストリートファイター(1100)を部分的に見直し作られたものでは到達できないレベルにあり、それはドゥカティがこのモデルを如何に重要視しているかの表れと考えてよい。

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今回ストリートファイター848の試乗では、1日約300kmのツーリングで使用し、流して走るペースを中心に市街地からワインディングまで、路面温度の低い中を試乗した。帰路ではワインディングの途中から雨になり、明かりの少ない山道、冬、夜、雨天という悪条件も経験している。スポーツライディングに関しては、ツーリング後、改めて路面がドライの条件でワインディングを堪能し確認させてもらった。いまの季節、標高を上げれば山はまだ冬の気配が濃厚で、条件的には決していいものではないが、このモデルに関しては逆にその寛容な性格を知るいい条件だったように思える。

まず乗って感じたのは、ポジションが随分とラクになったな、ということ。2011年までのストリートファイター(1100)では、フロントに荷重を掛けるためもっと前傾度合いがキツかった。ハンドルがポスト部分で 20mm ほどアップされたことは聞いていたが、身長 174cm の自分の場合、軽く背中が曲がり適度なスポーツ性を保つポジションに思えた。国産ネイキッドのようにシートが低いわけではないから、あそこまでリラックスしたポジションにはならず、正直ツーリング向けのポジションとは言いがたい。前傾のきつ過ぎないスポーツライディング向けポジションで、ツーリングもできる、と言うほうが正確だろう。

エンジンの反応は低回転からスムーズで、3,000rpm 前後からダイレクト感を上乗せし始め、5,000rpm も回せば、かなり元気に反応してくれる。3,000rpm 以下は右手の動きに対し穏やかな反応を示すため、市街地の渋滞等で低速走行を強いられた際には助けられた。ギクシャク感がないため、ズボラな運転も許容してくれる。いっぽうで元気に走りたいなら 5,000rpm から上を使うことになるが、ワインディングでは7,000~8,000rpm まで回せば相当な速さで走れる。スロットルの反応もリニアで、ほしいパワーを右手の僅かな動きで微調整できるため、スムーズに速く走ろうとすると結果この回転域を多用することになる。実はエンジンの回転自体はその上のゾーンまで回るし、実質的なパワーもさらに上乗せされるのだが、8,000rpm 以上はスーパーバイク系らしい激しさ溢れる反応を見せ、ここを連続して使いこなすのはかなり手強いと思う。

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各回転域のつながり自体はとてもスムーズで、どこかに谷があったり突如盛り上がるということもなく、どの回転域でもスロットルを開けた分だけ応じて車体を前に出すという、丁寧な作り込みがされている。そのため雨天のワインディング、しかも夜間という条件で、水滴で前が見えづらくタコメーターを見る余裕のない状態でも、右手を丁寧に動かすことだけを意識して前方に集中し操作をすれば、ストリートファイター848はとてもスムーズに、しかも安定して走ってくれた。おそらく最新のピレリタイヤのグリップ力に助けられたところも大きいと思うが、悪条件でも安定感を崩さない走りには少々感心した。

ここまでの説明に対し、補足を少々。勘違いしてほしくないのは、このエンジンは穏やかなだけではない、ということ。その気になってスロットルをワイドに開け、パワーを使い切ろうとすると、公道では持て余すほどのアグレッシブさも持ち合わせている。電子制御技術の進化によるフレキシビリティ(柔軟性)は、乗り手次第、使い方次第でバイクの性格を如何様にでも変貌させることができる。ストリートファイター848が扱いやすいと言っても、スーパーバイクを源流に持つモデル。油断は禁物です。

もうひとつの注目ポイントである専用開発シャシーは、正直限界まで試す走りができていないため、公道での使用感として聞いておいてほしい。剛性に関してはケチをつける部分はまったくなく、伝統のトレリスフレームの強さは健在、といったところ。フレームに関しては(当然ながら)柔らかすぎであったり、硬すぎるという過不足を感じることはなかった。足周りはリアショックのスプリングが柔らかめになったと聞いたため、どんなものかと興味があったが、とくにフワフワとか柔らかすぎる印象はなく、どちらかといえば動きの渋さを感じた。これはフロントフォークも同様で、走行距離がまだ 1,000km 少々の状態だったため、サスペンションがこなれていない様子だった。サスペンションメーカーにもよるが、欧州製の場合は 3,000km、ヘタをすると 5,000km 以上走らないと動きに本来のスムーズさが出ないものもある。新車の場合はサスペンションにも慣らしが必要で、調整機能付きなら前後ともすべて緩めてよく動く状況を作りしばらく走ると、慣らしも早めに終わると思う。

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話を戻そう。ストリートファイター848のサスペンションだが、リアは確かにフロントに比べ柔らかく感じたが、その程度は、フロント側のセッティングをもっとも柔らかい状態にすればバランスが取れるのでは? と思うくらいの差。街中を流す走りでは、もう少し柔らかく動いてもいいなと思ったが、これは先の渋さが取れればまた異なる印象になるかもしれない。前後サスペンションともに調整機能がついているが、そのままの状態でペースを上げても大きくバランスを崩すことはない。ただ、コーナーの立ち上がりでスロットルを開けると、リアサスペンションが沈み込み過ぎて、思ったよりも外にはらむ傾向は確かにあった。これは攻め込んだ走りをする際に出てくる症状で、普通に流して走る上では気にならないものなので、ご安心を。しっかりエンジンを上まで回して使い、コーナリングを存分に楽しみたいのなら、サスペンションの調整次第でドゥカティらしいコーナリングマシンに変貌させることも可能だと思う。

その他の特徴としては、トラクションコントロールが標準装備となっており、これは今回ワインディングで路面温度が低く、タイヤがまだ暖まっていないときにスロットルを急開(本来はやってはいけないことだが)したときでも、しっかりフォローを入れてくれた。公道での安全性にも役立つ部分はあるが、本来は攻め込んだ走りをするためのフォローアップメカニズムであるため、路面温度が低い際のタイヤへの気遣い等は変わらず行う必要がある。この手の電子デバイスがさらなる発展を遂げたのはドゥカティ2012年モデル全般に言える特徴だが、乗り手の心構えとしてはそこに頼り切らないよう、バイクのコントロールは常に自分側で制御するという気持ちを切らさないようにしたい。

このストリートファイター848をひと言で表すなら、「扱いやすさを増した水冷モデル」ということになるのだろうが、そのユーザーフレンドリーな仕上がりの裏側には、かなり細かな作り込みがあり、いくつもの要素を組み合わせることで成立している。個人的に、レブリミット付近まで回した際の高回転音はサーキットで聞くドカ・サウンドそのもので、かなりしびれるし大好きだ。いっぽうで、トコトコのんびり走っても苦痛が少なく、随分とラクができる水冷モデルだな、という感想も持った。排気量が大き過ぎない分、ごく低速での押し出しが緩やかということもあるのだろう。この2面性こそこれまでの水冷モデルにない特徴で、この排気量だからこそ成せるものなのではないだろうか。

排気量が小さくなったからといって、楽しみまで小さくなったということは、バイクの場合には当てはまらない。ストリートファイター848の場合、むしろ使えるレンジが拡大したことによる、新たな発見のほうが多く、多くの人が走る悦びを見出すきっかけになる気がする。数値を超えたおもしろさ、これは一度乗ってみないとわからないと思う。チャンスがあれば自身で試乗をし、どんなバイクなのか判断してほしい。

ストリートファイター848の詳細写真

ストリートファイター848の画像
エンジンは、スーパーバイク用の848ユニットをベースに扱いやすさを最優先に開発された、ストリートファイター848の専用品。パワーは日本仕様で117hp(86.1kw)とイタリア本国仕様からダウンをしているが、公道上では十分以上のパワーで不足は感じない。
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エンジンカバーに誇らしげに刻まれた、テスタストレッタ11°(イレブンディグリー)のロゴ。バルブのオーバーラップ角を、スーパーバイク用のテスタストレッタ・エボルツィオーネの37°から11°に変更することで、低中回転域での扱いやすさを増強している。
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エキゾーストパイプがうねるようにとぐろを巻き、2本出しのステンレスサイレンサーにつながるマフラーの構成は兄貴分と同様。マフラーは2in1in2構造で、排気を干渉させトルクを稼ぐ作り。触媒を内蔵しており、各国の排気ガス規制に余裕をもって対応している。
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インジェクション関係はマレリ製を採用。スロットルボディはインテークポートに合わせて楕円形である。スロットルの動きにリニア(緻密/忠実)に反応するいっぽうで、右手の動きに対するツキにも唐突性がないため、スポーツ&のんびり走りの両立ができる。
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シャシーは鋼管パイプを組み合わせた伝統のトレリスフレーム。細身のパイプを組み合わせており華奢に見えるが、サーキットで200km/hオーバーのコーナリングもこなす、タフなフレームである。製造に手間がかかる反面、車両を軽量に仕上げられるメリットがある。
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つや消しシャンパンカラーのフロントフォークは、マルゾッキ製のφ43mmフルアジャスタブル仕様。ブレンボ4ポットキャリパーをラジアルマウントし、ブレーキング時の剛性も確保する。ディスクローターはφ320mm。キャスター角は24.5度、トレール130mm、ホイールベースは1,475mm。
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ドゥカティのアイコンとも言える、片持ち式スイングアームを採用。2011年モデルのプレス+鋳造パーツを合わせた製法から、2012年は鋳造部品を組み合わせた製法になった。形状自体も僅かにだが変更となったが、これは外観からではほとんどわからない部分だ。
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リアショックは、ザックス製のフルアジャスタブル仕様を装備する。スプリングをストリートファイターSよりも柔らかめのバネレートにしているため、ゴツゴツ感は少なくなった。リンケージ部分は非調整式を採用しているため、残念ながら車高調整はできない。
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ホイールはフロント/リアともに細身のスポークで、スポーティなデザイン。リアブレーキはブレンボ2ポットキャリパーにφ245mmディスクローターを組み合わせる。標準装備のトラクションコントロールは、前後輪のスリップ率を検値し8段階に分け制御を入れる。
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タイヤは前後ともドゥカティとピレリが共同で開発した、ディアブロ・ロッソ・コルサを採用。とくにリアタイヤは、これまで5.5インチホイールで一般的だった180/55サイズから、180/60サイズになり、接地面積を大きく取れることからグリップ力の向上も見込める。
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小振りな顔は、兄貴分と変わらぬストリートファイター848のルックス。ボディカラーはレッドとダークステルス(つや消しブラック)の他に、ご覧のファイターイエローが選べる。ファイターイエローは、少しゴールドが入ったような高級感のあるイエローペイントだ。
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ハンドルバーはアルミのテーパータイプを採用。クランプ部分は太く、グリップ部分は細いという凝った作りだ。またハンドルポスト部分の形状を変更し、2011年モデルよりも20mmほどハンドルバーをアップ。これは兄貴分のストリートファイターSも同様に変更。
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多機能デジタルディスプレイメーターはスピードを右に、トリップ/オドメーター/時計を左に数字で表示。タコメーターはモニター上面の数字に沿いバーグラフで表示。メンテナンススケジュール表示やトラクションコントロールのセットアップモニターも兼ねる。
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複雑な形状の樹脂製フューエルタンク。タンク後端はフレームに合わせて絞込み、ニーグリップ時は大排気量ツインを思わせないスリムな作りを感じることができる。タンク容量はリザーブ容量を含み16.5Lで、補給タイミングはモニター上のインジケーターで表示。
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ステップバーは従来よりも10mmほど長くしており、一般公道でも踏ん張りやすくなっている。バーの上面にラバーを使わないレーシーな仕上がりで、スポーツライディング時に踏ん張る分にはダイレクト感があっていいのだが、反面雨天時には少々滑りやすい。
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スロットルは一般的なワイヤータイプで、ブレーキマスターはブレンボのラジアルタイプ。フロントブレーキのコントロールはしやすく、制動力も十分。レバーの位置は調整可能。ウインカーがビルドインされたミラー(写っていないが)は、視認性が随分と改良された。
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クラッチも油圧タイプ。レバーを引く際のテンションが比較的高めで、ロングラン時には左手に結構な負担がかかる。操作に、ややハードさが残る部分だ。スイッチボックス部裏の大きなレバーはパッシング&ハイビーム切り替えスイッチ。これは少々慣れが必要。
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シートは薄くスポーティなまとまり。シート高は840mmでスポーツモデルとしては標準的高さだが、リアショックのバネレートを従来仕様より低くした分、またがったときの沈み込みで足着き性は向上している。パッセンジャーシートはエマージェンシー用サイズ。

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