VIRGIN DUCATI | ドゥカティ ハイパーストラーダ 試乗インプレッション

ハイパーストラーダの画像
DUCATI Hyperstrada

ドゥカティ ハイパーストラーダ

  • 掲載日/2013年07月10日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/Ducati Japan  取材・写真・文/山下 剛

ハイパーモタードから生まれたツーリングモデルは
扱いやすいミドル版ムルティストラーダだ

いきなり結論めいた見出しではじめてしまったが、まったくそのとおりなのだ。低~中回転域での扱いやすさに秀でた水冷Lツインエンジン「テスタストレッタ11°」を搭載したハイパーモタードをベースに、長距離・長時間ツーリングを快適に走るための各種装備を追加したモデルが、ハイパーストラーダである。

ハイパーモタードとの違いは、20mm 高いハンドルポジション、防風効果の高いウィンドスクリーン、専用セッティングの前後サスペンション、左右パニアケース、ピレリ製タイヤのスコーピオントレール、センタースタンド、大型の前後フェンダー、エンジンガード、2カ所の 12V 電源ソケットとなっている。

排気量、車格、扱いやすさ、長距離ツーリングにおける優位性、走行モード切り替えによる走りの万能性。どれを見てもムルティストラーダのミドル版といって間違いはない。各装備の詳細については以下で述べることにして、まずはハイパーストラーダの特徴を見ていこう。

ハイパーストラーダの特徴

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ハイパーモタード、ムルティストラーダとは
どのように異なり、どのように同じなのか

ハイパーストラーダの特徴は、なんといっても排気量 821cc の「テスタストレッタ11°」エンジンの採用、長距離ツーリングに最適化された前後サスペンション、それによる足つき性の向上(降車時の押し引きのしやすさ)、ゆとりあるライディングポジション、長距離ツーリングでも安心な積載量、ガジェットやヒートウェア使用時に便利な電源ソケットなどを装備していることだ。

もっとわかりやすく比較するため、その特徴を図にまとめてみた。なお、比較の基準は「平均的な日本人体型、かつ平均的なライディングスキル」と思ってもらうと誤解が少ない。

  ハイパーモタード ムルティストラーダ ハイパーストラーダ
エンジンの扱いやすさ
エンジンのパワフルさ
車体の扱いやすさ
足つき性
荷物の積みやすさ

ムルティストラーダはスポーツ性、ツーリング性どちらもかなり高い次元で実現しているバイクだが、前述した「平均的日本人体型、かつ平均的ライディングスキル」で考えると、その性能を持て余してしまうのも事実だ。大陸横断や日本縦断といったスケールの大きな旅ならともかく、週末や連休の日帰り~2泊程度のツーリングでは、その性能を十全に発揮できるシーンは少ない。

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そうした視点で見た場合、ハイパーストラーダは日本人と日本の道路事情にかなり合致したスポーツツーリングバイクといえる。テスタストレッタ11°エンジンのパワーと低回転域から溢れるトルクは、高速道路から舗装林道レベルの狭い山岳道路でも扱いやすいし、満足いく走りを味わわせてくれる。足つきの良さは旅先でのUターンを気楽にしてくれるから、余計なことを気にせず好奇心の赴くままあちこちへ行ける。標準装備のパニアケースは数泊の荷物を余裕で飲み込むし、オプションのトップケースをつければタンデムツーリングだって快適だ。

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ドゥカティに対して「生粋のスポーツバイクメーカー」というイメージを持っていると、扱いやすさに優れるツーリングバイクはいわゆる「ドカティらしさ」に欠けると思う人もいるかもしれない。しかし扱いやすさは今やスポーツ性能のひとつである。そして、自分のライディングスキルに見合ったバイクを選ぶことは、スポーツライディングの第一歩でもある。

ハイパーストラーダはミドル版ムルティストラーダと表現したが、別の言い方をすれば「ムルティストラーダ日本仕様」といっても過言ではない。

ハイパーストラーダの試乗インプレッション

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ハイパーモタードをさらに扱いやすく
しかし「楽しさ」はしっかりとドゥカティ!

さて、前置きが長くなった。ハイパーストラーダのエンジンはハイパーモタードとまったく同じだから、821cc 水冷Lツインエンジン「テスタストレッタ11°」の走りについては ハイパーモタードのインプレッション を参考にしてもらいたい。ここではハイパーモタードとの違いについてのみお伝えする。

走りに関する部分でのハイパーモタードとの違いは前後サスペンションで、フロント、リアともに調整機構については同一だが、ストローク長がフロントで 40mm、リアが 17mm 短くなっている。これはたとえばコーナーの進入時のブレーキングにおいてはサスペンションの沈み込みが少なく、挙動変化が少ないことを意味する。実際にワインディングで走らせると、ハイパーストラーダのほうが気楽に走れるし、フロントの沈み込みがないぶん、積極的にフロントブレーキを使っていけるのだ。また挙動変化の少ないから、どういう走り方であれ疲れも少ない。

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左右のパニアケースに荷物を積み込むと、リア荷重が増えるぶんコーナリングで曲がりにくいアンダーステアになりやすいが、リアサスペンションのダンピング調整をすれば挙動は落ち着くし、ライダー自身がフロント荷重を心がけるだけで解消するレベルだ。

かといってハイパーストラーダは、ゆるーく乗れるツーリングバイクなだけではない。走行モードをスポーツに切り替えれば、ドゥカティらしさに溢れるすばやい回転上昇の刺激、高回転域におけるデスモドロミックのメカニカルな振動とトルク感は、最新水冷Lツインエンジンの醍醐味に満ちている。トラクションコントロールと ABS があるから、心おきなくスロットルを開けられるし、スリッピーな日陰や濡れた路面でも安心感をともなって走り抜けていける。

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ひとつだけ気になる点は、今回試乗したのは日本標準仕様となるローシートだ。身長が 175cm 以上あるライダーだと、シッティングポジションが下がりすぎてしまい、ヒザが曲がりすぎて余裕がなくなるし、ハンドル位置が高くなってしまう。そのため、とくにコーナリングにおける荷重移動がやりにくい場面もあり、また体重がシート面に集中してしまうために長距離走行時に尻が痛くなりやすい。日本仕様にローシートというのは常套手段ともいえるが、追加でハイシートやミドルシートを購入することを考えると、車両購入時に好みで選べるシステムがあると、よりユーザーフレンドリーだ。ドゥカティに限ったことではないが、この点は改善の余地ありだ。

それを除けば、ハイパーストラーダは日本の道、日本のライダーに最適なツーリングスポーツだ。高速道路、ワインディング、市街地、どのシーンでもむずかしいことを考えずに乗れるし、走らせて楽しい。ひょっとして日本市場を意識してデザインされたのではないかと疑ってしまうほど、日本のバイク事情に合ったモデルだ。もちろんサーキット走行も可能だが、走行会やレースでの使用頻度が多いのであれば、素直にハイパーモタードのほうがオススメだ。

街乗りから日帰り~数泊のツーリングを楽しみ、ドゥカティのLツインエンジンの鼓動感が好きなら、迷うことはないだろう。とくに空冷ムルティストラーダオーナーにはこれこそ次世代ムルティともいえる。この「日本版ムルティストラーダ」が気になっているのであれば、ぜひディーラーにて試乗してほしい。

プロフェッショナル・コメント【01】

発売を前に行われたドゥカティジャパン主催の
ディーラー研修会で試乗してみた感想

ハイパーストラーダは、ローシートによって本国仕様よりもシート高が 40mm 低くなり、足つきに不安はありません。しかしパッセンジャー側は肉厚となっており、リモート式のプリロードアジャスタ付きリアサスペンションと合わせてタンデムも快適です。センタースタンドとパニアケースが標準装備で、トップケースもオプション装着可能。「ドゥカティはタンデム、積載できない」なんてもう言わせませんよ。(ドゥカティ市川 齊藤 直樹さん)

取材協力
住所/千葉県市川市関ヶ島16-2
定休日/毎週月曜
営業時間/10:00~19:00
電話/047-307-1098

プロフェッショナル・コメント【02】

首都高速を含めて約 70km 乗りましたが、ハイパーモタードより 20mm 高くなっているハンドルがゆったり心地良く、周りの景色を見ながら走れました。スクリーンの効果も比較的高く十分ですが、さらに大きなスクリーンもオプションとして存在します。今までアルミかプラスチックのパニアケースを主流で扱ってきましたが、ナイロンタイプは初めてで、ライディングの邪魔にならない軽量さには驚かされました。(ドゥカティ松戸 小川 哲郎さん)

取材協力
住所/千葉県松戸市小根本209-1
定休日/毎週月曜
営業時間/10:00~19:00
電話/047-330-0916

ハイパーストラーダの詳細写真

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プレキシガラスを採用したスクリーンは固定式。高さは十分で、ライダーのヘルメット上部を走行風が抜けていくようなデザイン。
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複雑な面構成を持つサイドパネルは、見る角度によってハイパーストラーダの表情を変える。足へのプロテクト効果も良好。
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日本仕様にはローシートが標準装備され、シート高 810mm を実現。身長が高い人はハイシートやミドルシートも試してみよう。
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パニアケースを外した状態でもステー類があまり目立たず、スタイリングを崩さない。トップケースステー兼用のグラブバーは使いやすい。
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排気量 821cc の水冷Lツインエンジン「テスタストレッタ11°」を搭載。クラッチは湿式で、APTC (アドラー製スリッパークラッチ)が標準装備される。
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冷却ファンを2個搭載するなどで高効率の冷却システムを確立。オイルクーラーを必要としない冷却能力を持っている。
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右側1本出しのサイレンサー。日本仕様はイタリア仕様と比較して 100mm 延長されているが、スタイリング、サウンドともに大満足。
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カヤバ製 43mm径の倒立フォークを採用。ストローク長は 130mm で、ハイパーモタードより 40mm 短い。減衰力調整機構はない。
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320mm径 セミフローティングローターに、ブレンボ製 M4-32 4ピストンラジアルマウントキャリパーをセット。
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ザックス製モノショックのストローク長 150mm はハイパーモタードより 17mm 短い。スプリングプリロード、ダンピングが調整可能。
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リアサスペンションのスプリングプリロードを調整するノブは、車体左側ドライブスプロケット上部に設置されている。
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モンスター1100 EVO の意匠と共通イメージの 10本スポークアルミ鋳造リム。ホイールサイズは 5.50×17 となっている。
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コンパクトで軽量なデジタルメーター。液晶画面は暗部で白く発光し、視認性は良好。各種インフォメーションも見やすい。
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ハイパーモタードよりも 20mm 高いハンドルポジションを実現するハンドルライザーが装備されている。
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フル・ライド・バイ・ワイヤとなったスロットル。これによりスポーツ、ツーリング、レインの3モードに燃調パターンを切り替え可能。
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クラッチはケーブル式を採用。実用性を重視するとともにコストパフォーマンスを高めた。APTC スリッパークラッチを装備する。
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視野が広く、また振動も拾わないため、後方視界の確認は非常にしやすい。デザイン的には先代ハイパーモタードのミラーがよかったが……。
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センタースタンドを標準装備しており、大きな荷物を積んだときやパッセンジャーが乗車する際などに活躍してくれる。
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脱着も容易なパニアケースは片側 25 リットルの容量を確保。タンデム時にはパッセンジャーの足を支える役目も持っている。
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容量は 25 リットルと十分で、2本の荷物落下防止ベルトや開き具合を調整可能な機構が装備されており、使い勝手は良好。
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パニアケースには防水インナーバッグが標準装備されているから、荷物の出し入れも楽だし、雨天時の走行も安心だ。
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12V 電源ソケット(ヘラータイプ)は車体の2カ所に装備される。ライダー用は車体左側のリアバンク付近に設置されている。
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パッセンジャー用の電源ソケットはリアサスペンションのリザーバータンク上部に設置される。ヒートウェアなどの使用に便利だ。

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