VIRGIN DUCATI | ドゥカティ モンスター821 試乗インプレッション

モンスター 821の画像
DUCATI Monster 821

ドゥカティ モンスター821

  • 掲載日/2014年10月22日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/Ducati Japan  取材・文/友野 龍二  写真/山下 剛

第2世代の 821cc テスタストレッタ 11°エンジンが
これまでにない新たなモンスターを生み出した

シリーズのフラッグシップとなるモンスター1200/1200S の日本国内デリバリーが開始されたのはつい3カ月前のこと。そして今回、後を追うようにミッドサイズの水冷モンスターがその姿を現した。ハイパーモタード/ハイパーストラーダと共通の排気量 821cc テスタストレッタ 11°エンジンを搭載するモンスター821 のフレームもまた、軽量化と高剛性化を図るためにエンジン自体をストレスメンバーとする手法が用いられ、マッシブなイメージを醸し出す大容量燃料タンクなど、モンスター1200 との共通点は多岐にわたる。リアセクションに目を向けると形状の異なるパーツを装備し、オイルクーラーが省略されるなどの識別点も存在するが、注意して観察しなければ気付かぬほどこの2台は酷似している。

しかし単に排気量を変えただけのモデルでは矢継ぎ早に投入する意味がない。モンスター821 は紛れもなくモンスターであるが、モンスター1200 とは似て非なるもの。そこには明確なキャラクターの違いが存在し、共通の名称であってもモンスター1200 とは異なる世界へとライダーを導いてくれる。

モンスター821の特徴

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ビギナーに優しさと安心を与えながらも鋭い切れ味の
コーナリングを得意とするモンスターらしいモンスター

水冷モンスターシリーズの生い立ちとモンスター1200S の詳細については モンスター1200S 試乗インプレッション で書いているので、ここではモンスター821 のオリジナル部分を深く掘り下げてみたい。第2世代の 821cc テスタストレッタ 11°エンジンは、すでにハイパーモタード/ストラーダにも搭載されている信頼性の高いエンジンである。日本仕様のモンスター821 のエンジンは 101hp/8,000rpm、9.1kgm/7,750rpm を発揮する。イタリア本国仕様では 112hp/9,250rpm、9.1kgm/7,750rpm となっているが、数値を見てわかるようにトルクに関して変更はなく、馬力が 11hp 抑えられているものの、それに伴って発生回転数も 1,250rpm 下げられたため、実際に走らせても抑圧された感じはせず、フィーリングが自然である。

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外観上はスタンダードモデルのモンスター1200 と酷似した部分も多いが、10 本スポークデザインのリアホイール幅は 6.00 インチから 5.50 インチとされ、あわせてリアタイヤが 190 から 180 へとサイズ変更を受けた。カヤバ製のフロントフォークはフルアジャスタブルから調整機構を持たない固定式とされる。ほかにもハンドルバーがアルミからスチールへ、フロントブレーキマスターがラジアルポンプ式からアキシャル式へと変更されたが、さほど大きな識別点とはならない。判別できるポイントをいくつか挙げるとすれば、まずは2本のパイプを融合させたような形状の艶消しブラックサイレンサーである。このサイレンサーは、排気口が斜め上を向くようにカットされた斬新なデザインとされた。次に目立つのは片持ち式から両持ち式とされたスイングアームである。このスイングアームにより、ホイールベースが 1,511mm から 1,480mm へと 31mm 短縮され、軽快な運動性を手に入れた。そしてナンバープレートの装着位置は、スイングアームに固定されたリアフェンダーではなく、テールランプ下から伸ばされたリアフェンダーへと移行されたのである。この長いリアフェンダーとオイルクーラーの非装着によって生み出されるスッキリとしたフォルムは、過去の流れを知る者にとっては “よりモンスターらしい造形” と映るだろう。

モンスター821の試乗インプレッション

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専用のディメンションが生み出す高い運動性能は
リッターオーバーのマシンを凌駕することも可能にした

燃料タンクやフレームなど、多くのパーツをモンスター1200 と共有するモンスター821 だが、実車の前に立つとやはりひと回り小さく感じる。エンジン下部にボディ同色カバーで覆われたオイルクーラーを有しないという視覚的効果もあるが、31mm 短縮されたホイールベースの違いもライダーとして直観的に感じ取れたのかもしれない。

イグニッションをオンにすると、コンパクトなインストルメントパネルに各種情報が表示され、パネル内の左右に位置する長方形のウインドウではさまざまな情報を任意に表示させることができる。モンスター1200 のフルカラー TFT から白黒 LCD へと変更を受けたが、表示可能な情報量に差異はなく、天候に左右されず高い視認性を確保できる実用面にはむしろ好感が持てる。スターターボタンを押した瞬間に目覚める 821cc のテスタストレッタ 11°エンジンも、モンスター1200 同様に吸気ポート内での混合気を細密化するためにインジェクターの取付位置を変更し、完全燃焼を促すセカンダリーエア・システムを導入した第2世代と呼ばれるシルキーかつ、ストレスフリーなエンジンである。

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そしてシートに跨った瞬間、モンスター1200 との決定的な違いを実感する。『821』の型押しが施されたこのシートは、イタリア本国仕様と同じ 810mm のシート高となり、日本仕様のモンスター1200 に装着されている 770mm のシートと比較すると、車体への入力位置が 40mm も高くなるのだから、小さな入力でも車体を大きく動かせる。モンスター1200 の 209kg に対し、モンスター821 は 205.5kg と車両重量はわずか 3.5kg の差でしかないが、それ以上に軽く感じるのだ。足つき性に関しても、810mm という数値は空冷モンスター1100EVO と同一であり、決して高すぎることはないため、平均的な身長のライダーであれば何ら問題のないレベルだ。モンスター1200S のインプレッションでも触れたが、この高さのシートを日本仕様に採用してくれたことは称賛に値すると言っても過言ではないだろう。

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スリッパー機能やプログレッシブ・セルフサーボメカニズムはそのままに、油圧式からケーブル式へと変更されたクラッチを握り、ギアを1速に入れてクラッチをそっと放す。それだけでスルスルと加速を始めるほどフレキシブルなエンジンは、高回転まで淀みなく吹け上がり、その加速性能は 101hp と表記されるカタログスペックよりもパワフルに感じられる。『スポーツ』『ツーリング』『アーバン』の各モードによる出力特性の違いは明確で、『スポーツ』では身構えねば上半身が置いて行かれるほどの瞬発力を見せ、『アーバン』では初心者でも安心してスロットルを開けられる穏やかなキャラクターとなる。

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そしてモンスター1200 との決定的な違いを感じるのがワインディングである。31mm 短縮されたホイールベースと 40mm 高められたシート、そしてワンサイズ細くなった 180/60 タイヤによって生み出される運動性は、まさに “軽やか” のひと言。 軽さがもたらす正確性により、走行ラインを “帯” ではなく “線” で狙っていけるのだ。操縦ミスをしても DSP(ドゥカティ・セーフティ・パック)によるリアホイールのリフトアップ防止機能付き3レベル ABS および8レベル DTC(ドゥカティ・トラクション・コントロール)が即座に介入してくれる。ただし DTC の介入度合いは、ツーリングモードであってもウイリー走行が可能なモンスター1200 に対し、モンスター821 ではスポーツモードであっても許容しない。まるで 1199 スーパーレッジェーラに採用されたウイリーコントロールが装備されているのかと思えるほどの効力だが、この特性は刺激よりも安全性を重視した結果なのであろう。

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また、実走行上では何ら問題はないのだが、ある一定条件でのアクセルレスポンスが少々気になった。シフトダウンの際にエンジン回転数を合わせ、変速ショックを軽減するために行うブリッピング操作時である。高い回転数を維持するためにスロットルを大きく開ける場合は気にならないものの、低い回転数でスロットルを小さく(開度8分の1ほど)開けた際に、電子制御による RbW(ライド・バイ・ワイヤー)システムとスロットルボディの間にわずかなタイムラグを感じるのだ。電気信号の発生が遅いのか、信号を受けてからバタフライを開くまでの時間が遅いのか、指示する開度が少ないのかは謎だが、全体的な完成度が高いだけに小さなことが気になってしまった。とは言ってもモンスター1200 では味わえない鋭い切れ味のコーナリングが楽しめ、かつビギナーにも扱いやすくフレンドリーなモンスター821 は、モンスターシリーズの購入を検討するユーザーにとって、選択肢の広がりを歓迎しつつも大いに頭を悩ませることとなるだろう。

プロフェッショナル・コメント

日本上陸よりひと足早く
イタリアの World Ducati Week 2014 で試乗

World Ducati Week 2014 の見学を含むディーラー研修でイタリアに行った際に、日本発売前のモンスター821 に試乗することができました。モンスター821 は、モンスター1200 のスケールダウン版と考えられている方が多いと思いますが、実際は乗り味とフィーリングが大きく異なります。モンスター1200 は乗りやすく “ジェントルな” 怪物くん、モンスター821 は乗りやすく “やんちゃな” 怪物くんといったところでしょうか。

エンジンは、ストレスなく良く回り、パワーにも不満はなく、最新の電子デバイスのおかげで気持ち良く安心してスロットルを開けていけます。しかし、何よりも気持ち良いのは排気音で、アイドリングから加速、全開や減速すべてで心地の良い鼓動感とともにそれを味わえるのです。走りも、街乗りや峠道はもちろん、高速道路でも不満がありません。自分の思い描く通りにキビキビと走ることができるので、ベテランライダーだけでなく、バイクが初めての方や女性にも強い味方になってくれると思いますよ。

軽くてコンパクトで乗りやすい車体と、十分なパワーがあって扱いやすいエンジンの組み合わせは、どんな方にも満足していただけます。迷っているあなた! すごく良いですよ! イチ押しです!(ドゥカティ高崎 ストアマネージャー 秋山 亮さん)

取材協力
住所/群馬県高崎市浜尻町462-1
Tel/027-365-5277
営業/10:00~19:00
定休/月曜

モンスター821の詳細写真

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モンスターらしさを醸し出す丸型ヘッドライトは、モンスター1200 と共通であり、ロービーム/ハイビームともにハロゲンバルブを採用。ライトケース内で左右に3灯ずつ振り分けてビルトインされる LED ポジション球も共通。
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フロントサスペンションには調整機構を持たないカヤバ製の 43mm 倒立フォークを採用。低速での走行(低荷重)時から柔らかくしなやかに動作するため、フロントタイヤの接地感を掴みやすく、ビギナーには安心できるだろう。
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マッシブなイメージを作る 17.5 リットル入りのスチール燃料タンクは、プラスチックよりも軽量で、形状もモンスター1200 と共通。大柄だが、ニーグリップ部分が大きく絞り込まれているため、乗車時には意外なほどスリムに感じる。
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モンスターの代名詞とも言えるトレリスフレームは、エンジンのアタッチメントポイントがシリンダーヘッドに移行したことにより、コンパクト化され、重量の軽減だけでなく先代モデル比で2倍のねじれ剛性を確保している。
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モンスター1200 では 770mm と低すぎる感のあったシートは、イタリア本国仕様と同じ 810mm へと変更されるとともに、形状の見直しが図られた。2段階の高さ調整ができ、785mm へと変更することも可能だ。
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モンスター1200 と同じくフル LED 仕様のテールランプ。両サイドにはシングルシートカウル(モンスター821ダークには装着されない)の形状とマッチしたグラブバーが設置されており、高い実用性とデザイン性が見事に両立されている。
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識別点のひとつとなるリアエンド・シルエット。モンスター1200 ではディアベル同様にスイングアームに固定されるナンバープレートホルダーだが、モンスター821 ではテールランプ下部から延長されるリアフェンダーに固定されている。
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水冷エンジンの証でもある大型ラジエーターもサイズ、デザインともにモンスター1200 と共通。これにより、夏場の渋滞路であってもオーバーヒートの心配をすることなく安心してライディングできる。
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モンスター1200 と同径の迫力あるエキゾーストパイプは 2-1-2 の排気システムで導かれる。操作が軽く、繋がりの感覚も掴みやすいスリッパー機能付き APTC ケーブル式クラッチはブロンズ色のケース内に収められている。
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ハイパーモタード/ハイパーストラーダにも搭載される第2世代の 821cc テスタストレッタ 11°エンジンは、ライド・バイ・ワイヤーによってコントロールされる。左サイドはウォーターホースの取り回しに、やや雑然とした感がある。
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サイレンサーもまた識別点のひとつであり、2本のパイプを融合させた形状のスリムなサイレンサーは艶消しブラックとされる。イタリア本国仕様より 10cm 延長されているが、排気口が上向きになるよう斜めにカットする手法に変更はない。
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ひと目でモンスターと認識できるフロントセクション。モンスター1200 に装着されているエンジン下部の大型オイルクーラーを省略したため、このアングルから見ると軽快感がとてもよく伝わってくる。
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Y字 10 本スポークの軽合金フロントホイールには 320mm 径ブレーキディスクとブレンボ製モノブロック M4-32 ラジアルマウントキャリパーが組み合わされる。信頼性の高いボッシュ製 9MP ABS システムも標準搭載。
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上部はシリンダーヘッドに、下部はスイングアームに固定されるカンチレバー式のザックス製モノショック・リアサスペンションは、モンスター1200 と共通(1200S はオーリンズ製)。スプリングのプリロードと伸び側減衰力の調整が可能である。
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両持ち式へと変更されたアルミダイカストのスイングアームは、モンスター1200 よりも 31mm 短縮され、ホイールベースが 1,480mm となった。この効果は絶大であり、シート高の変更とあわせて軽快な運動性能を手に入れた。
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リアホイールの幅はモンスター1200 の 6.00 インチから 5.50 インチへ、タイヤサイズも 190/55ZR17 から 180/60ZR17 へと変更された。リアブレーキは 245mm ディスクにブレンボ製キャリパーを採用。
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インストルメントパネルには新設計の白黒 LCD ディスプレイを採用。ウインカースイッチの上下に備わるボタンを操作することによって、視認性の高いこのウインドウにさまざまな情報を任意に表示させることができる。
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シート下は車載工具と車検証が収まる以外の荷物積載スペースは存在しない。ETC や HID などを装着する際はユニットの大きさと固定位置を正確に採寸し、工夫して設置しなくてはならないだろう。

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