VIRGIN DUCATI | ドゥカティ ムルティストラーダ1200S(2015) 試乗インプレッション

ムルティストラーダ1200S(2015)の画像
DUCATI Multistrada 1200 S(2015)

ドゥカティ ムルティストラーダ1200S(2015)

  • 掲載日/2015年08月17日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/Ducati Japan  取材・文/中村 友彦  写真/Ducati Japan

“4 bikes in 1”というコンセプトを実現するため
独創的な構成と最新の電子制御技術を導入

近年ずっと群雄割拠と言える状態が続いている大排気量マルチパーパス/アドベンチャーツアラー市場。そんな中で、他メーカーとは異なる独創的な手法を随所に投入し、世界中のライダーから支持を集めているのが、ドゥカティが2003年から販売を開始したムルティストラーダシリーズだ。もっとも、同じ車名を冠していても、エンジンが空冷2バルブだった初代/2代目と水冷4バルブエンジンを搭載する3代目以降では、ムルティストラーダのキャラクターは微妙に異なっている。

初代/2代目がオンロードスーパースポーツにマルチパーパスのエッセンスを投入した……と思える乗り味だったのに対して、3代目以降はドゥカティ自身がスポーツ/ツーリング/アーバン(市街地)/エンデューロという4つの要素を楽しめる“4 bikes in 1”のコンセプトを掲げているのだ。なお、3代目以降のムルティストラーダは電子制御技術の導入にも積極的で、2010年型でABSとDTC(ドゥカティ・トラクション・コントロール)に加えてエンジンと前後サスペンションの設定をボタン操作で簡単に一括変更できるライディングモード、2013年型からは路面状況に応じてダンパー特性が自動的に変化するDSS(ドゥカティ・スカイフック・サスペンション)を導入している。

ムルティストラーダ1200S(2015)の特徴

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5代目で注目すべき要素はDVTとIMUの導入
キメ細かな熟成はありとあらゆる部分に及んでいる

2015年8月から販売が始まった5代目ムルティストラーダの最大の特徴は、低中回転域での扱いやすさと高回転域での爽快感を両立するべく、スーパーバイクシリーズ用をベースとするテスタストレッタエンジンに連続的可変バルブタイミング機構=DVT(デスモドロミック・バリアブル・タイミング)を導入したことだろう。この種の可変システムは過去に例がなかったわけではないけれど、使用するカムシャフトの山を特定の回転数で切り替えるのではなく、走行状況に応じてバルブタイミングを連続的に変更していく構成は、ニ輪業界では世界初。だからこの機構に注目が集まるのは当然のことなのだが……。

ムルティストラーダ1200S(2015)の画像

実は5代目ムルティストラーダには、その他にも特徴と言うべき要素が満載なのである。DVTに次ぐトピックとして挙げられるのは、ロール/ヨー/ピッチの状況を検知する加速度測定ユニット=IMUで、この装置を導入したことでブレーキのロックを未然に防ぐABSや後輪の滑りを抑制するトラクションコントロール、セミアクティブサスペンションであるDSSは、従来型以上に緻密な制御を行えるようになった。上級仕様のムルティストラーダ1200Sが採用するDWC(ドゥカティ・ウイリー・コントロール)やDCL(ドゥカティ・コーナリング・ライト)も、IMUの恩恵と言うべき機能だ。そしてDVTとIMUに続く特徴としては、ねじれ剛性を高めたトレリスフレームや細かな変更が行われたディメンション、人間工学を徹底研究して再構築したライディングポジション、ウインドプロテクション効果を高めると同時に品質に磨きをかけた外装部品、快適性を高める装備として新たに採用されたクルーズコントロールとBluetoothモジュールなどが挙げられるものの、これらに順位を付けるのはなかなか難しいところである。逆に言うなら5代目ムルティストラーダは、ありとあらゆる部分が特徴と言って差し支えないほど、キメ細かな熟成と革新的機構の投入が行われたモデルなのだ。

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なお日本仕様に限っては、3代目/4代目ではかなり控えめな102hp/105hpに設定されていた最高出力が、本国仕様と同等の150hpにまで高められたことも大きなトピックだろう。この数値を実現できた背景には、日本の排出ガス&騒音規制が近年になって見直されたこともあったようだが、DVTの採用によって燃焼効率を大幅に高めた5代目ムルティストラーダのパワーユニットは、2016年から欧州で施行されるユーロ4規制もすでにクリアしているのである。

ムルティストラーダ1200S(2015)の試乗インプレッション

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最先端の電子制御技術を各部に投入することで
守備範囲を大幅に拡大した驚異の万能車

ムルティストラーダを含めた近年のドゥカティ各車のインプレッションで、僕は何度も“乗りやすくなった”、“フレンドリーになった”という言葉を使っている。もちろん、それはまったくウソではないのだけれど、2015年型ムルティストラーダ1200Sを体感した今、そういった誉め言葉はこのモデルのために取っておくべきだったような気がしている。誤解を恐れずに言うなら、5代目ムルティストラーダの乗りやすさとフレンドリーさは、既存のドゥカティ各車とはレベルが違ったのだ。そしてその一方で、ドゥカティならではのスポーツ性と高揚感は、きちんと維持されていた。なんだか夢みたいな話だが、5代目の守備範囲の広さに驚いた僕は、3代目以降のコンセプトである“4 bikes in 1”がついに完成形に至ったのだなあと、しみじみ感じたのである。

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という抽象的な感想はさておき、実際に5代目ムルティストラーダを走らせて、僕が最初に感心したのはパワーユニットの柔軟性だった。ドゥカティ各車のエンジンは、年を経るごとに扱いやすくなっているものの、DVTを導入した5代目ムルティストラーダの場合は、扱いやすいを通り越して、パワーユニットと乗り手の意識が直結しているかのような印象なのである。ツーリング好きの僕が興味をそそられたのは、市街地の交差点や峠道のタイトコーナーでギアの選択に迷った際に、十中八九以上の確率でシフトダウンをする必要がなかったことと、低中回転域を使ってのまったり巡航が予想以上に心地よかったことだが、スポーツ志向のライダーにとっては「ここぞ!」という場面でスロットルをワイドオープンした際の吹け上がりの鋭さ、オフロード好きのライダーにとってはあらゆる回転域で感じるレスポンスの忠実さが大きな魅力になるだろう。いずれにしても5代目ムルティストラーダのパワーユニットは、一般公道を楽しむには最上級と言いたくなる出来栄えで、僕としてはこの構成と資質をモンスターやディアベルなどにも転用してほしいと思ったのである。

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一方のシャシーに関しては、快適性に磨きがかけられたライディングポジション(シート周辺のスリム化によって足つき性も向上している)や、潤沢な接地感を供給してくれるピレリの新作タイヤ、ディスクとキャリパーの刷新で制動力を高めたリアブレーキなど、5代目には新しい魅力が数多く存在するのだが、僕自身が4代目からの進化を最も強く感じたのは、エボリューション仕様として各部の構成を刷新したセミアクティブサスペンションのDSSだった。この機構は、ドゥカティ初採用となった4代目では、ときとしてダンパーの自動補正に違和感を覚えることがあったのだけれど、5代目のDSSエボリューションはセミアクティブであることを乗り手に意識させない、実に自然な作動性を獲得しているのだ。もちろん、テストライダーとしての視点で見れば、ハードブレーキング時のフロントまわりのしっかり感や、路面の凹凸を通過した後の車体姿勢の落ち着きなどに一般的なサスペンションとは異なる印象を感じるものの、それはあくまでもメリットであって、デメリットと思える要素は皆無。あらためて考えると、動き出しのしなやかさとストローク後半での踏ん張りをここまで高いレベルで両立した市販車のサスペンションは、世界広しと言えどもほかにないような気がする。

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なお、スポーツ/ツーリング/アーバン/エンデューロの4種が準備されるライディングモードについては、従来型では各モードのサスペンション設定を明確に分けすぎた感があって、僕の場合はツーリングとエンデューロ以外に必然性を感じなかったのだけれど、5代目ではスポーツとアーバンにフレキシブルさが生まれ(ツーリング寄りになったと言うべきかもしれない)、その結果として4種のすべてに“立つ瀬”があるように感じられた。と言っても、今回の試乗で僕が最も多用したモードは、従来型と同じくツーリングだったのだが、お気に入りの峠道を走るときはスポーツを使いたくなるだろうし、日常の足として使う場合や長距離を走って身体が疲れたときは、しなやかで優しい特性のアーバンが有効な武器になるだろう。

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さて、あまりに誉めてばかりでは信憑性に欠けるので、最後にちょっとくらいは異論を述べたいところだが、5代目ムルティストラーダで僕が感じた不満は従来型ではカウル内にあった小物入れが廃止されたことと、装備重量が従来型+8kgの232kgになったことくらいで、それだってあえて言えばというレベルである。ドゥカティが行った見事な熟成を心から賞賛したい僕としては、既存のLツインエンジンモデルユーザーや大排気量マルチパーパス/アドベンチャーツアラー好きだけではなく、あらゆるライダーにこの性能を体感してほしいと感じているのだ。

プロフェッショナル・コメント

機能だけでなくデザインも追求した
ライダーにやさしい&ときめくバイク

新しくなったムルティストラーダを見て「オーッ!」と思わず感嘆の声を上げてしまいました。まず外装を留めているボルトが見当たりません。こういったカテゴリーのバイクは武骨で機能重視のものが多いですが、細かい部分にまで美を追求したイタリアのデザインには本当にドキドキします。

そして走りや機能もまたすごいんです。DVTエンジンは、低速時のギクシャク感がなく、高回転までスムーズかつパワフルに吹け上がります。楽しくなりすぎて少々ヤンチャになる私をムルティストラーダは守ってくれます。昔、オフロードのレースをしていたので、ちょっと無理なブレーキングなどもたまにあるのですが、IMUによって制御されるABS、DWC、DSSエボリューションは、違和感なく安心安全なスポーツ走行を可能にし、景色と季節の匂いを楽しむ余裕も生み出しました。

また、乗って思ったのは「体にやさしいバイクだな!」ということ。スクリーンの高さが良く、長時間走っても首が疲れません。いつでも見やすいTFTフルカラー液晶のメーターは、年齢とともに見えにくくなってきた目にとてもやさしく、コーナリングの進行方向を照らすDCLも目が疲れませんよ。

スーパーバイクシリーズが好きで「今まで峠道やサーキットを走っていたけど、これからはツーリングも楽しみたいね」という方にもオススメしたいです。私が所有しているのもスーパーバイクで、妻とタンデムで長距離を走ると必ずケンカになります。快適性の高い新型ムルティストラーダなら、どこまでも仲良く楽しく走れそう。「気になるけど、シート高が……」と、あきらめていた方もいると思います。足つきが本当に良いので、女性にもどんどん乗っていただきたいですね。

人生は“トキメキ”が大事だなと、最近よく思うのですが、新しいムルティストラーダは乗っていてときめくバイクです。ぜひそんなムルティストラーダで北海道へ“旅”しに来てください。(ドゥカティ札幌 ストアマネージャー 砂田 剣一さん)

取材協力
住所/札幌市清田区美しが丘1条4-1-1
Tel/011-883-8000
営業/10:00-19:00
定休/水曜

ムルティストラーダ1200S(2015)の詳細写真

ムルティストラーダ1200S(2015)の画像
外装部品は全面新設計。空力特性とデザインのダイナミックさを考慮して、フェアリングの幅は40mm拡大されている。スクリーンは従来型と同様のピンチ&スライド式で、最大で60mm上方に移動することが可能。上級仕様のムルティストラーダ1200Sは、フルLED式ヘッドライトとバンク角に応じて点灯するコーナリングライトを標準装備する。
ムルティストラーダ1200S(2015)の画像
メーターパネルはデザインを一新。スタンダードのムルティストラーダ1200が従来型と同様のLCD液晶モニターを採用するのに対して、ムルティストラーダ1200Sは選択したモードによって表示内容が変化するTFTカラーディスプレイを導入している。ライディングモードに関する情報はすべてメーターパネルに表示され、モード切り替えは走行中に行うことも可能だ。
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意匠を改めたスイッチボックスは、夜間の操作性を考慮してバックライトを採用。左側にはウインカーやホーン、ヘッドライトのハイ/ロー切り替えに加えて、ライディングモードの選択やクルーズコントロールのオン/オフで使うスイッチが備わっている。なお、クルーズコントロールの作動条件は、2~6速で50km/h以上。
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フロント:3.50×17インチ、リア:6.00×17インチのY字3本スポークホイールは、5代目ムルティストラーダのために開発された専用設計品。ABSユニットはボッシュの最新作である9.1MEで、ムルティストラーダ1200Sのフロントブレーキにはスタンダードモデルより制動力とコントロール性に優れるブレンボの330mm径ディスク+M50キャリパーが導入されている。
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前後タイヤはピレリが新たに開発したスコーピオンレイルII。従来型では245mm径ディスク+対向2ピストンキャリパーだったリアブレーキは、5代目では265mm径ディスク+片押し2ピストンキャリパーに刷新。また、構造の見直しは行われているものの、スイングアームは従来と同様の片持ち式を採用している。
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独特の輝きを放つテールランプは3D LED式で、視認性はいたって良好。尾灯として機能するのは外周部で、中央にはブレーキランプが配置されている。スリムなテールカウルやタンデムライダーの握りやすさを考慮したグラブバーも新作パーツだ。タンデムシート下部には収納スペースを設置。
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ショックユニットは前後ともザックスの製品。フロントフォークのインナーチューブ径は48mmで、リアショックはリンク機構を持たないカンチレバー式。セミアクティブサスペンションのDSSエボリューションを導入するムルティストラーダ1200Sに対して、スタンダードモデルにはオーソドックスな手動調整式の前後ショックユニットを採用している。
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スーパーバイクシリーズ用エンジンを転用したテスタストレッタユニットには、革新的なバルブタイミング可変機構であるDVTが採用されているものの、シリンダーから下のパーツは従来型の基本構成を継承。イタリア本国などで販売されるフルパワー仕様は従来型を10hp上回る160hpをマークする。
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シリンダーヘッドカバーやタイミングベルトカバーは専用設計。フレームの刷新によってエンジン搭載位置が高められた結果、最低地上高は従来型より20mm高い180mmとなった。2-1-2式のエグゾーストシステムは、内部構造とサイレンサーのデザインを変更している。
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ラバーを取り外せばオフロード仕様となるステップは、既存のムルティストラーダシリーズから引き継いだ装備。トレリスフレームやアルミピボットプレートのスリム化によって、足つき性は従来型より良好になっている。
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従来型で固定式だったシートは、2015年型では2段階調整式に進化。イタリア本国仕様の825/845mmに対して、日本仕様は800/820mmというシート高を採用している。単純に考えれば、日本仕様は肉厚が少なくなっているわけだが、5代目のシートは快適性を重視した構造になっているためだろうか、今回の試乗で不快な印象はまったく抱かなかった。
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オプション設定のパニアケースもデザインを一新。このほかに利便性を高める道具としては、トップケースやタンクバッグ、グリップヒーター、センタースタンドなどがあり、それらをあらかじめ組み合わせたパッケージオプション(ツーリング/アーバン/スポーツ/エンデューロの4種類)も用意されている。