VIRGIN DUCATI | ドゥカティ スーパーバイク959パニガーレ 試乗インプレッション

スーパーバイク959パニガーレの画像
DUCATI Superbike 959 Panigale

ドゥカティ スーパーバイク959パニガーレ

  • 掲載日/2016年04月20日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/Ducati Japan  取材・文/中村 友彦  写真/Ducati Japan、VIRGIN DUCATI.com 編集部

世界中のドゥカティスタの要望に応える
ミドルスーパーバイクシリーズの最新作

正確なデータを取ったわけではないけれど、おそらく現在のドゥカティは、世界で最も勢いのあるオートバイメーカーだろう。何と言っても、2016年に同社が世に送り出すニューモデルは11台。近年の世相を考えると、1年の間にこんなにも多くのモデルを発売できるメーカーは他に存在しない。もちろんドゥカティの歴史の中で、ここまで大規模なラインアップの拡充が行われるのは初めてのことである。

2016年に発売される新しいドゥカティの大半は、他メーカーからの乗り換え、新規ユーザーの獲得を念頭に置いていると思えるものの、一方で同社は世界中に存在する熱心なドゥカティスタの要望に応えるべく、既存のスポーツモデルの熟成にも力を注いでいる。その代表格と言えるのだが、ミドルスーパーバイクの最新作となる959パニガーレだ。2009年に先々代に当たる848を発売した時点で、すでにレースレギュレーションを重視しないスポーツバイク作りに着手していたドゥカティだが、2014~2015年型899パニガーレを経て生まれた959パニガーレは、兄貴分とは方向性が異なる、ミドルスーパーバイクならではの魅力を徹底追及。もっとも、かつてのフラッグシップだった916~998シリーズと同等の排気量を得た959パニガーレは、もはやミドルと呼べる排気量ではなくなったため、ドゥカティ自身はこのモデルを“スーパーミッド”と呼んでいる。

スーパーバイク959パニガーレの特徴

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EURO4規制を考慮して開発した結果
日本仕様も本国と同等の最高出力を獲得

899パニガーレの後継として開発された959パニガーレの最大の特徴は、スーパークアドロエンジンが899→955ccに拡大されたことだが、興味深いのはその手法だ。1199パニガーレを1299に進化させる際は、ボアアップ(112×60.8→116×60.8mm)という手法を選択したドゥカティだったものの、959パニガーレではボアアップよりはるかに手間がかかる、ストロークアップ(100×57.2→100×60.8mm)で排気量の拡大を実現している。この件に関して、ドゥカティは正式な見解は発表していないけれど、極端なショートストローク化に背を向けた背景には、燃料効率の向上や扱いやすさの追求という意識があったに違いない。なお排気量の拡大に伴い、959パニガーレは吸排気系関連部品も全面刷新。さらには、扱いやすさに配慮したアシスト機能付きスリッパークラッチや、メカノイズを低減する新作カムチェーン/テンショナーやリブ付きシリンダーヘッド/クランクケースカバーを採用するなど、エンジンに関するキメ細かな改良は多岐に渡っている。

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ルックスに関しては、パッと見では899の意匠をそのまま引き継いでいるように見える959パニガーレだが、1299で得たノウハウを転用した外装部品はすべて新作で、空力性能を重視して設計されたフェアリングは左右幅を拡大(バックミラーはステーを短縮)。また、車体寸法に注目すると、スイングアームピボットを4mm下げると同時にホイールベースを1426→1431mmに延長し、さらにはステップバーの素材と製法を変更してグリップ力を高めるなど、扱いやすさを重視した仕様変更が行われている。とはいえ、日本のライダーにとってこのモデルで最も喜ぶべき要素は、本国仕様とほとんど同じスペックのマシンが手に入るようになったことかもしれない。

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899パニガーレの日本仕様が、世界一厳しい排出ガス・騒音規制に対応するために、専用設計のテルミニョーニ製マフラーを装着し、最高出力を本国仕様より30hp少ない118hpに抑えていたのに対して、959パニガーレは本国仕様と同等の150hpを発揮(カタログスペックでは本国仕様より7hp低いものの、これは計測方法の違いが原因で、実際の最高出力に違いはないようだ)。なお右側2本出しのマフラーは、もともとは日本仕様の1299パニガーレ用として開発されたものだが、EURO4規制への対応を前提とする959パニガーレは、日本仕様も本国仕様も、日本仕様の1299用をベースに最適化を図った新作マフラーを採用している。

スーパーバイク959パニガーレの試乗インプレッション

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排気量の拡大で大幅なパワーアップを実現しながらも
扱いやすさは先代に当たる899パニガーレ以上

2014年春に記した899パニガーレのインプレで、僕は“ドゥカティ製スーパーバイク史上、最も親しみやすい”という言葉を使っている。しかし2年後にこのモデルが登場するなら、その言葉は取っておくべきだったか……。いや、あの時点での899パニガーレは、兄貴分の1199と比較すると格段に親しみやすくて、僕としては日本製SSから乗り換えても違和感がほとんどないと思ったのだ。でも今回乗った959パニガーレは、さらにその上を行く仕上がりだった。その証拠に僕は試乗会場となった袖ヶ浦フォレストレースウェイを走り始めて、2周目で早くもヒザが擦れた。ライテクが万年中級で根がビビリの僕にとって、これは異例のことである。

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もっとも、日本仕様としての話をするなら、959パニガーレの最高出力は899+32hpになっているから、当初の僕はちょっと身構える気分で試乗を開始した。だがエンジンの調教が進んで低中速域のマナーがよくなったうえに、スイングアームピボット位置の変更やホイールベースの延長が功を奏しているのだろう、959パニガーレはどんな状況でも躊躇することなく、思い切ってスロットルを開けて行ける。逆に言うなら各部の配慮が行き届いた結果として、2気筒ならではのガッツ感やトルク感は少々薄まったのだけれど、最高出力発生回転数の10500rpmまでエンジンを回し切ったときの爽快感は、何物にも替え難いものがあるし、そうやって高回転を維持して走れば、959パニガーレは間違いなく899を上回る速さを発揮してくれる。この感触なら僕を含めた一般的なライダーは、圧倒的なパワーを誇る1199/1299よりも、959パニガーレのほうが、速く、気持ちよく、サーキットや峠道を走れそうな気がする。

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前後ショック/タイヤ/ブレーキに関しては、899の構成を引き継ぐ959パニガーレだが、前後輪から得られる接地感は依然として潤沢だし(エキスパートライダーが乗ると、コーナーの立ち上がりでリヤが頼りなく感じることがあるようだが、この問題は前後ショックのセッティングで解決できると思う)、ABSのフィーリングは899より自然になっている。そんな959パニガーレにあえて異論を述べるとすれば、レース/スポーツ/レインという3種が存在するライディングモードの中で、相変わらずウェットの設定がいまひとつだったことや、クイックシフターが1299パニガーレのようなダウン対応型にならなかったことが挙げられるものの、このあたりは本当にあえてと言うレベル。僕としてはそういった細かい点を指摘するより、“ドゥカティ製スーパーバイク史上、最も親しみやすい”のレベルをさらに引き上げた、959パニガーレの資質を高く評価したいのだ。

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改めて考えてみると、959パニガーレは2輪雑誌/ウェブサイト編集者泣かせの存在である。このモデルを軸にして比較試乗を行いたくても、ライバルと呼べる車両が存在しないのだから。となれば、我々としては他社の600/675cc車と条件が揃う、750ccのパニガーレに登場して欲しいところだが(FIMやMFJが主催するSSレースの排気量上限は、4気筒:600cc、3気筒:675cc、2気筒:750cc)、おそらく、現在のドゥカティがそういうモデルを作ることはないはずだ。1995年からミドルスーパーバイクの発売を開始したドゥカティは、ミドルならではの美点を長きに渡って真摯に追求して来た結果として、959パニガーレを生み出したのだから。もちろん、パニガーレの750cc仕様を作るのは、同社にとっては造作もないことだが、保守的なレースレギュレーションにこだわらなかったからこそ、959パニガーレは唯一無二の資質を獲得できたのだと思う。

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スーパーバイク959パニガーレの詳細写真

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フェアリングの左右幅を拡大すると同時にエアダクトを拡大したフロントマスクは、兄貴分に当たる1299パニガーレと同様。ヘッドライトはオーソドックスなマルチリフレクター式で、前後ウインカー/テールランプ/ナンバープレート灯はLEDを採用する。
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複雑な曲面で構成されるガソリンタンク(裏面はエアクリーナーボックスのフタとしても機能)の容量は、パニガーレシリーズ全モデルに共通する17L。ただし、1199/1299のアルミ製に対して、生産性と販売価格を重視するミドルは一般的なスチール製だ。
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一見しただけでは先代の899と同じ構成に見えるものの、テールカウルも1299パニガーレと共通のデザインに変更。なおシングルシートカウルを装着した状態が標準になる兄貴分とは異なり、ミドルパニガーレのシングルシートカウルはオプション設定。
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ごくわずかではあるけれど、タンデムシートの下には収納スペースが設置されている。日本のパニガーレユーザーの間では、ここにETCユニットを設置するのが一般的になっているようだが、その場合はもちろん、車載工具を撤去しなくてはならない。
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先代を超える最高出力を獲得する一方で、欧州のEURO4規制をクリアすることを前提に開発されたスーパークアドロエンジンは、排気量を899→955ccに拡大。なお近年のドゥカティが車名に用いる数字と排気量は、微妙に一致しないケースが増えている。
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排出ガス・騒音規制を考慮して開発された右側2本出しマフラーは、もともと日本仕様の1299用だったものの、959パニガーレでは日本仕様に加えて、イタリア本国を含めた欧州仕様にも導入されている。ただし北米仕様は、従来と同じショートマフラーを採用。
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両支持式スイングアームは先代から引き継いだ装備だが、959パニガーレではピボット位置が4mm下げられている。なおスプロケットのサイズが15/45→15/43に変更されたことに伴い、959パニガーレのホイールベースは先代+5mmの1431mmになった。
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F:3.50×17/R:5.50×17の10本スポークホイールや、F:φ320mmディスク+ラジアルマウント式4P/R:φ245mmディスク+対向式2Pのブレンボ製ブレーキは、先代と共通の装備。任意で解除できるボッシュのABSには、後輪のアンチリフト機能も備わる。
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φ43mm倒立式フォークはショーワが開発したBPFで、トップキャップには2つのダンパーアジャスター、ボトム部にはプリロードアジャスターが備わっている。パニガーレ全モデルに共通するセパレートハンドルは、量産車では珍しいクイックリリース式。
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エンジン後部左側に水平マウントされるフルアジャスタブル式リアショックは、899パニガーレと同様のザックス製。現代のスーパースポーツの基準で考えると、ストローク量はやや多めの130mm。なおフロントフォークのストローク量は、一般的な120mmだ。
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日本製スーパースポーツと比較すると、パニガーレシリーズのハンドルは開き気味の設定。ブレーキ/クラッチのマスターシリンダーは、近年のドゥカティ製スーパーバイクで定番になっているブレンボ・セミラジアル。メーターは先代と同様のモノクロ液晶式。
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細かいローレットが刻まれた削り出しのステップバーは、1299で好評を得たパーツの転用で、グリップ力とホールド感は抜群。もっとも個人的には、近年のドゥカティ製スーパーバイクのステップは、どのモデルもバーの位置が後ろすぎるような気がしている。

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