VIRGIN DUCATI | ドゥカティ ムルティストラーダ1260エンデューロの海外試乗インプレッション 試乗インプレッション

ドゥカティ ムルティストラーダ1260エンデューロの海外試乗インプレッション

  • 掲載日/2018年11月06日【試乗インプレッション】
  • 写真:DUCATI 取材協力:DUCATI JAPAN 取材・文/河野 正士
ドゥカティ ムルティストラーダ1260エンデューロの海外試乗インプレッションの画像
DUCATI Multistrada 1260 enduro

オフロードでの性能を高めつつ
扱いやすさも高め、進化した「1260エンデューロ」

インターモトやEICMAミラノショーなど大きなモーターサイクルショーが開催される前の初秋になって、ドゥカティはショーとは別にいくつかの2019年モデルの新型車を発表した。そのひとつが10月にイタリア・トスカーナで国際試乗会が開催された「ムルティストラーダ1260エンデューロ」だ。

ムルティストラーダ1260エンデューロの画像
ムルティストラーダ・ファミリーに「1200エンデューロ」が加わったのは2016年。電子制御を含む最新のテクノロジーがいち早く投入されるこのファミリーにとって、2年という月日は長い。2019年モデルに加わったこの「ムルティストラーダ1260エンデューロ」は、排気量を拡大するとともに出力特性も変更。電子制御サスペンションのセッティングも大幅に進化させた。この車両はアルミビレット製のメッシュラジエーターカバーとオイルクーラーカバーを装着。オフロード走行のためミラーを取外し、ハンドルバーを回転させグリップ位置を少し高くしている。タイヤもオプションのピレリ製スコーピオンラリーを装着。オプションのショートスクリーンも装着している。

先に発売された「ムルティストラーダ1260/1260S/1260パイクスピーク」同様、排気量を64cc拡大した1262ccのテスタストレッタDVT(ドゥカティ・バリアブル・タイミング)エンジンを搭載。あわせて出力特性をアップデートし、最大トルクの85%を3500回転以下で発生し、また前モデルが搭載した1198ccエンジンに比べ5500回転での出力トルクを17%アップさせるなど、低中回転域での出力トルクを大幅に増大させた。

ムルティストラーダ1260エンデューロの画像

ムルティストラーダ1260エンデューロの画像

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前モデルに比べ、前後サスペンションのストロークが15mm短くなり、ストローク量は185mmとなった。それにあわせ電子制御サスペンションシステム/DSS(ドゥカティ・スカイフック・サスペンション)のセッティングを変更。少ないストローク量でも、オフロードでのパフォーマンスを損なわないよう徹底的にセッティングが煮詰められた。その結果、その名称もDSS EVOへと変更されている。

そもそもテスタストレッタDVT1262エンジンは、先代の1198ccエンジンから、ボアはそのままに、クランクシャフトやコンロッド、シリンダーを新調し、ストロークを延長することで排気量を拡大。最高出力や最大トルクではなく、低中回転域でのトルクの増大を目的に、そのミッションが遂行されたのである。今回試乗した「1260エンデューロ」も、その分厚くなった低中回転域を活かし、アグレッシブさに磨きを掛けると同時に、より幅広いライダーに対し門戸を開く、扱いやすさを求めたのである。

ムルティストラーダ1260エンデューロの画像
先に紹介したドゥカティ・レッドのボディカラーに加え、サンドのボディカラーもラインナップ。このサンドのボディパーツは、一般的なマットカラーよりも粒子が大きいマット塗装で、土壁のような独特の風合いを持っている。この車両はアルミ・サイドパニアのアクセサリーを装着している。タイヤは標準装備のピレリ製スコーピオントレール2。

その扱いやすさの拡大は、足周りのセッティングにも施されている。「1260エンデューロ」は、前モデル/1200エンデューロに比べ、前後サスペンションストロークを15mm減らし、185mmとした。このセッティングの変更により、シート高も10mm低い860mmを実現している(標準シート装着時) 。そして走行中にサスペンションセッティングを路面状況に合わせ変化させ続ける電子制御サスペンションシステム/DSS(ドウカティ・スカイフック・サスペンション)のセッティングをさらに進化させ、短くなったサスペンションストロークを、オンロードでもオフロードでも活用しきるためにDSS EVOへと発展させた。

ムルティストラーダ1260エンデューロの画像

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サスペンションストロークを縮めたメリットはオンロード、とくに4つのライディングモードのなかでもっともスポーティな「スポーツ」モードを選択したときに強く感じる。「ツーリング」モードではDSS EVOの設定でサスペンションが大きく、そしてゆっくりストロークする。対して「スポーツ」モードでは減衰圧がキュッと引き締まり、車体の動きが制限される。その感覚は、フロントに19インチホールを装着していながら「1260/1260S」のフィーリングに近い。

さらには、ハンドル形状やハンドルポストの変更、また左右ペダルに装着されていた防振ラバーの厚さを変更することで、オンロードとオフロードの狭間にある、バランスの取れたライディングポジションを再構築している。

1260エンデューロの詳細写真

ムルティストラーダ1260エンデューロの画像

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新採用されたドゥカティ・テスタストレッタDVT1262エンジン。ボア106mm/ストローク71.5mmの排気量1262cc。エンジンの回転数に合わせてカムシャフトのタイミングを個別に、そしてシームレスに変化する可変バルブタイミング機構/DVT(ドゥカティ・バリアブル・タイミング)はさらに進化し、スムーズさと力強さを増している。今回のバージョンアップは、排気量アップとDVTの組み合わせで低中回転域での出力トルクとその特性を高め、スポーツ走行領域でのパフォーマンスを向上させると同時に、扱いやすさを高めることが目標とされた。
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サイレンサーは前モデルと同形状ながら、その内部構造やエンドキャップの素材とデザインを変更。エンジン性能を損なうことなく、環境性能を高めることが目標であり、そのためサイレンサー単体での重量は若干増えている。

ムルティストラーダ1260エンデューロの画像

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前後サスペンションはザックス製。走行中の車体の状況を正確に読み取る、新しいボッシュ製6軸慣性測定ユニット/IMUからのデータを管理するため電子制御サスペンション/DSSのソフトウエアを更新。DSS EVOへと進化した。またホイールハブのデザインも一新されている。両持ちスイングアームのデザインに変更はないが、素材の肉厚を薄くすることで軽量化を実現している。
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ハンドルバーの形状を変更し、それに合わせてタンク上部のデザインを変更した。ハンドル位置は30mm低くなったが、高さはもちろん、絞り角や垂れ角も変更されている。またハンドルとトップブリッジを繋ぐハンドルクランプも変更されている。

ムルティストラーダ1260エンデューロの画像

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シート形状に変更はないが、前後サスペンションストロークを短くしたことでシート高は10mm低くなった。また分厚かった防振用のステップラバーは、その厚さが10mm薄くなり、その結果ライディング時の膝の曲がりが緩くなった。

ムルティストラーダ1260エンデューロの画像

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6インチのTFTカラー液晶ディスプレイ、スマートKeyシステム、両グリップ周りのスイッチ類は「1260/1260S」と同タイプを使用。またドゥカティ・オリジナルのライディングApp「ドゥカティ・リンク」ともリンク可能で、スマートフォンとの連携や走行ログの管理などができるのはもちろん、スマートフォン上で造ったライディングモードの細かなパラメーターを、車体とのリンク後に車体にダウンロードすることもできる。
ムルティストラーダ1260エンデューロの画像
フロントスクリーンは片手で操作できるアジャスター付きで、約6cmの範囲で上下させることができる。

ムルティストラーダ1260エンデューロの画像

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ムルティストラーダ1260エンデューロの画像
ライダーは身長170cm/体重70kg。エンジンOFF状態での足つき確認のため、電子制御サスがロックした状態で撮影したものだ。標準シート(シート高860mm)では両足が何とか地面に着く程度。少し腰をずらせば、接地した足の安定感が増し、停車時の不安も大幅に軽減される。

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