VIRGIN DUCATI | ドゥカティ スーパースポーツ S 試乗インプレッション

スーパースポーツ Sの画像
DUCATI SuperSport S

ドゥカティ スーパースポーツ S

  • 掲載日/2017年06月26日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/Ducati Japan  取材・文/佐川 健太郎  写真・動画/山家 健一  衣装協力/HYOD

スーパースポーツ Sの試乗インプレッション

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かつてのSSを思わせる軽快な扱いやすさ
パッション溢れるワイドレンジな走りが魅力

ドゥカティとしては10年ぶりにスーパースポーツ=SSの名を冠したモデルとして登場したのが「スーパースポーツ」とその上級バージョンの「S」である。

ドゥカティにおけるスーパースポーツとは、先代の900SSに続くSS1000DSがそうであったように、ストリートにおいて最高のスポーツライディング体験を味わえるモデルであり、最新モデルでもその立ち位置が貫かれている。

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一見しただけでドゥカティ一族と分かる外観はパニガーレにも似ているが、よく見ると同じパーツはひとつもないほどディテールは異なっている。デザインもより丸みがあり有機的で、フルカウルの車体もひとまわり大柄な感じだ。

跨ってみるとシートは低めで、前後サスの初期の沈み込み量も多めのためか、足着きはとても良い。そして、このモデルの性格を如実に表しているのがハンドルの位置。クリップオンタイプではあるが、トップブリッジの上にクランプされていてかなり高めだ。スーパースポーツというネーミングから想像していた以上に上体が起きた楽なライディングポジションである。座面が広いフラットなシートとも相まって街乗りや長距離移動でもだいぶ快適だ。

パイパーモタード系の水冷Lツインをベースに最適化されたエンジンもまたキャラが立っていて面白い。ひと口に言えば中速トルク型。3000~9,000rpmがパワーバンドと言えるほどワイドレンジの出力特性で、回さなくても加速するし緩く走っていても速い。回すほどにパワーが漲るパニガーレとは対照的だ。

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エンジンの鼓動もよりワイルドで一発一発の爆発感が明確に感じられる。パニガーレの極めて洗練されたスムーズな回転フィールとは趣を異にするものだ。鋼管トレリスフレームのしなやかな乗り味や、カンチレバー式リアショックのダイレクトな接地感なども含め、ある意味、空油冷エンジンを搭載したかつての名車、90年代の「900SS」を彷彿させるパッション溢れる乗り味だ。おそらく開発陣はそこも意識したのだと思う。

「S」は前後フルアジャスタブルのオーリンズ製を装備しているが、感心したのは乗り心地の良さ。元々が初期作動性に優れるソフトなセッティングだが、フロント130mm、リヤ144mmという豊富なストローク長を生かして路面の凹凸をきれいにいなしてくれる。

ハンドリングも軽快かつ素直で分かりやすい。およそドゥカティらしからぬと言っては失礼だが、畏れ多い感じがないのだ。かつてのドゥカティ、特にスーパーバイク系は「ピンポイント」と揶揄されるほどシャープで、素人がうかつに手を出せない気難しさがあったが、それも昔の話。最近ではパニガーレでさえ街中で普通に扱えるほどだ。

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話が脱線したが、スーパースポーツなら国産モデルから乗り換えてもすんなり馴染めると思う。重心位置が比較的低くフラットな車体姿勢ということもあり、倒し込みから深くリーンしていくまでのバンク角のつき方やステアリング舵角の当たり方が、とても自然な感じで安心できる。また、フルカウルモデルとしてはハンドル切れ角も豊富で、極低速でも粘るエンジンとも相まってタイトターンもやりやすい。一方で高速コーナーでのライントレースの正確さはドゥカティならでは。豊富なフロントの接地感とともに、狙ったところにフロントタイヤを通していける感覚はパニガーレにも通ずるものがある。

また、ブレンボ製のラジアルキャリパーは強力だがタッチはおだやかで、握り込むほどにジワッと効いてくるタイプ。「S」は同じ倒立フォークでもインナーパイプ径がひと回り太いこともあり、ブレーキングにおけるフロントまわりの剛性感もしっかりしている。ABS作動時のキックバックも少なめで車体の挙動も安定していた。

ライディングモードも試してみたが、手元のスイッチで簡単に切り替えられるし操作性も良い。「スポーツ」モードはかなりパワフルでレスポンスも俊敏になり、場所を問わずキビキビと走れる。逆に「アーバン」モードにすると穏やかで扱いやすく、スロットル操作に気を遣わずに済むので楽に乗れるし、トラコンの介入も早いので滑りやすい路面などでは安心。「ツーリング」モードはその中間といった感じだ。欲を言えば、モード切り替えでスイッチを「長押し」する時間をもう少し短縮してくれるとさらに嬉しいのだが。

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「S」にはクイックシフターが装備されているが、シフトアップだけでなくダウンも有効なため、発進時以外はほとんどクラッチを使わずに済む。本来はサーキットでのタイム短縮のための機構だが、街乗りレベルでもその便利さに慣れると元に戻れなくなるほどだ。特にコーナー手前で忙しくシフトダウンが求められる場合などは最高に楽できる。一点気になるとしたら、渋滞時に内ももに感じるエキパイの熱ぐらいか。

どこから見ても美しいイタリアンデザインの魅力はもちろん、サーキット性能に加え、街乗りやロングツーリングでの使い勝手や快適性を底上げすることで、多用途性を高めている点が素晴らしい。パニガーレでは敷居が高いと思う人でも、スーパースポーツであれば性能やパワー的にも丁度いいかも。ドゥカティ本来のスポーツマインドを犠牲にすることなく、より幅広い使い方をしたい人にはおすすめの一台だ。

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