VIRGIN DUCATI | ドゥカティがカムシャフトの駆動にベルトを採用しているのはナゼですか? ドゥカティQ&A

ドゥカティがカムシャフトの駆動にベルトを採用しているのはナゼですか?

  • 掲載日/2008年11月28日【ドゥカティQ&A】
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軽量化や作動の正確さ、コストなど
さまざまなメリットがあるからです。

正確なバルブ駆動にこだわってきた
タリオーニ技師とドゥカティの歴史

ドゥカティの重役兼主任設計者であったファビオ・タリオーニが1950年代に設計したエンジンは、ベベルギア(傘歯車)によってカムシャフトを駆動する斬新なアイデアが採用されていました。以降、ドゥカティは長年に渡ってこのメカニズムを採用したエンジンを生産。これらがいわゆる「ベベル系」と呼ばれるモデルたちに搭載されたエンジンです。そして、同じタリオーニ技師がこのベベル系の後継として1974年頃から開発に着手したのが「パンタ系」と呼ばれる次世代エンジンで、これには時代を先取りしたアイデアやベベル系エンジンからの改良点が盛り込まれていました。そのひとつがカムシャフトの駆動にコグドベルト(歯付きベルト)を採用するというもので、1979年に発表された500SLパンタに搭載されて以降、ドゥカティは積極的にこの方式を採用するようになったのです。

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ベベルギアでカムシャフトを駆動する「ベベル系」。タリオーニの技術者としてのこだわりがうかがえます。

コグドベルトによって
カムシャフトを駆動するメリット

ベベルギアによるカムシャフトの駆動は、正確なバルブ作動に寄与する大変優れたアイデアでしたが、その生産には大変高い加工技術が要求され、コストも高額でした。カムシャフトを駆動するタイミングベルトにコグドベルトを採用するメリットは、シリンダーヘッドやクランクケースの加工も含めて、バルブを駆動するメカニズムの生産コストをベベル系よりも大幅に圧縮することが可能であったことだと言われています。また、当時のドゥカティは、騒音規制が厳しくなることを見越して、ベルト駆動であればその面でも優位に立てると考えていたようです。さらに、ベルトはチェーンなどと比較すると軽量で慣性力も小さく、バルブタイミングのズレも少ないという性能面での利点もありました。コストと性能の両面を考慮して、タリオーニ技師はこの技術をドゥカティエンジンに投入したのです。

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500SLパンタ以降、積極的に採用されるようになったコグドベルトによるカムシャフトの駆動方式。

さまざまなメリットを持つコグドベルト
しかし、定期的な点検・交換が必須

ドゥカティオーナーの中でもメカニズムにあまり興味のない人は、このタイミングベルトがゴム製のコグドベルトで、しかも定期的な交換が必要であることを聞いて驚く場合もあるようです。しかし、このメンテナンスを怠ると、突然ベルトが切断してバルブとピストンが接触、エンジンに深刻なダメージを与えるという事態も考えられます。現在では、特殊なモデルを除き、タイミングベルトの交換はおおむね2万キロごとに交換するよう指定されています。頻繁に行う作業ではありませんが、オーナーはこの指示を必ず守るようにしましょう。また、中古車の場合はいつベルトが交換されたのか正確には分からないので、たとえ2万キロに満たなくても交換しておいた方が安心です。

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走行距離が2万キロに近づいたらタイミングベルトの点検・交換は必須。テンションの調整は超重要です。

ベルトを交換したら
テンショナー・ベアリングもチェック

新車で購入した車両の場合でも、点検のタイミングで走行距離が1万5000kmに達していた場合は、保険の意味も込めてベルトを早めに交換してしまうのが無難です。また、走行距離に関わりなく車検時には交換するのが理想と言えるでしょう。この時に是非とも一緒にチェックしておきたいのが、ベルトの張り具合を調節するベルトテンショナーです。この部分にはベアリングが内蔵されており、これがグリス切れを起こすと回転する際の抵抗となり、大切なタイミングベルトを痛める原因となります。コストパフォーマンス、性能、耐久性、整備性に優れるコグドベルト製のタイミングベルトですが、定期的なメンテナンスは欠かせません。

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ベルトのテンションを調整したら、テンショナーのベアリングの状態もチェックするようにしましょう。

ベルトの張り具合は超重要!

ドゥカティ・エンジンのタイミングベルト調整はとても微妙な作業だということをご存知でしょうか? ドゥカティのディーラーでは、光学的に計測するSST(特殊工具)を使用してベルトのテンション(張り具合)を計測・調整しています。タイミングベルト調整はこうした数値的な基準に加え、さらに経験や高度な技術が必要となるとても高度な作業なのです。(資料提供:ドゥカティ横浜)

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これがDDS(DUCATI DIAGNOSIS SYSTEM)と呼ばれる光学式テスター。測定値はDDSの液晶画面に表示され、ベルトのテンションを規定値に調整後、バルブタイミングを調整します。

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