VIRGIN DUCATI | 2011DUCATI 現行モデル一気乗り・スーパーバイク1198SP / 1198 / 848 トピックス

2011DUCATI 現行モデル一気乗り・スーパーバイク1198SP / 1198 / 848

  • 掲載日/2011年11月29日【トピックス】
  • 写真/Takao ISOBE、Takeshi YAMASHITA  文/Ryuji TOMONO
    本記事は、 『DUCATI BIKES』 Vol.08 (2011年5月発行)にて掲載されたものです

SUPER BIKE -1198SP / 1198 / 848- インプレッション

スーパーバイクの画像

脈々と続くドゥカティのレース史。そしてスーパーバイクモデルは、WSBKで勝つために生まれた特別なバイクだ。最新が最良。その進化は留まることを知らない。

ドゥカティと切り離せないサーキット生まれ

ドゥカティ=スポーティというブランドイメージが築き上げられたのは同社がサーキットを車両開発の場とし、レース参戦することで様々なノウハウを得て、それらの技術を即座に市販車へとフィードバックしてきたからである。一例を挙げると、ワークスマシンでさえもキャブレターが全盛だった1980年代にマレリ社製の電子制御式フューエルインジェクションを実戦投入し1986年にはボルドール24時間耐久レースに出走した。そして1987年のデイトナBOTTでは851プロトタイプが見事優勝してみせたのだ。その翌年に発売された市販型851には早くもフューエルインジェクションが搭載され世間を驚かせた。

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機械的な精度の向上はもとより現在ではWSBKマシンを走らせる上で欠かせない様々な電子デバイスも著しい進化を遂げており、市販車へも転用可能なこれらの技術は一般ライダーにとっては安心して安全に走れるための頼もしいアイテムとなっている。サーキットというフィールドで完成度を高められた数々のテクノロジーはドゥカティのスーパーバイクシリーズにも随時フィードバックされており、最新の1198SPではそれまでのDTC(ドゥカティ・トラクション・コントロール)、DDA(ドゥカティ・データ・アナライザー)に加え、DQS(ドゥカティ・クイック・シフター)、オーリンズ製TTXリアサスペンション、スリッパークラッチ、アルミニウム製燃料タンクなどが新たに装備された。これらの装備は走りの質を高めるだけでなく、一般的な使用形態に於いてもその恩恵を感じられる実に心強いアイテムたちだ。1198SPを解明してゆく前にまずは現行モデルの誕生経緯から紐解いてみよう。

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2007年に登場した1098から続いている1198のスタイリング。ライト配置やシート下マフラーなどは、伝説のスーパーバイクモデル916のデザインを踏襲したと言っても良いだろう。その伝統を受け継ぐスタイリングの中身は、WSBKやMotoGPなど最新のレースシーンからフィードバックされたテクノロジーが凝縮されている。誰でも乗りこなせるわけではないが誰でも乗れるスーパーバイクだ。

レーサーレプリカの運命的進化

このモデルは2007年にデビューした1098から始まり、2009年には1198へと移行しながら4年目を迎えた。ピエール・テルブランチがデザインを担当し2003年にデビューした前作の999シリーズの縦目2灯のスタイリングに別れを告げ、1098ではマッシモ・タンブリーニがデザインを担当し1994年にデビューした横目2灯の916 / 996 / 998シリーズの面影を残しつつも洗練されたデザインを身に纏った。今なお名車との呼び声高い916シリーズを彷彿とさせるのは当時のアイデンティティでもあったシートカウルの下に納まる2本の楕円サイレンサーと片持ちスイングアームを復活させたことも一つの要因であろう。市販車をベースマシンとして戦いを繰り広げるWSBK。数あるドゥカティのラインアップの中で“スーパーバイク”カテゴリに属するモデルはいつの時代もレースに勝つことを宿命付けられ“戦うためのバイク”“ 勝つためのバイク”としてのDNAを色濃く受け継ぎながら劇的な進化を遂げてきた。

それでは各モデルの特徴を紹介しながら1198SPへと辿り着こう。まずは同シリーズの先駆者となった1098からだ。Sモデルを例に挙げて比較すると1098Sは999Sに比べパワーでおよそ20HP(157HP/ 9,000rpm)向上し、車重は15kg(171kg)も軽くなった。車体デザインだけでなくこれ程までに大きな変化を遂げて登場したのだ。アクセルを開ければ伸びやかに高回転まで吹け上がるエンジンと強烈なストッピングパワーを発揮するブレンボ製ラジアルマウントキャリパーに支えられ、高いアベレージでの走行を可能とする。前作よりもハンドリングの癖が少なくなったこともあり、ユーザーフレンドリーになったとは言うものの、DTCを装備しない157HPはおいそれと気軽に扱えるシロモノではなくスリリングな思いをすることも多かった。次に紹介するのは2009年にラインナップに加わった848だ。このモデルのルーツにレーシングマシンは存在せず、縛りの多いレースレギュレーションから解き放たれ、ただ純粋に走りを楽しむためだけに生まれたモデルである。排気量がスケールダウンされたものの僅か168kgの車体を振り回すには十分すぎる129HP / 9,500rpmを発揮し、リミッターが作動する回転数が高く効きも穏やかなこともあり高回転まで回しきれる快感がある。ジャイロ効果を低減する10mm小さい320mmのフロントブレーキディスクと1サイズ細い5.5インチリアホイール&180タイヤの組み合わせは軽快な運動性を手に入れ、S字の切り返しなどでは抜群の鋭さをみせる。走りに対して真摯に取り組み、スキルアップを目指すライダーにとっては厳しい先生にも頼もしい相棒にもなり、ライダーを育てるバイクである。

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続いて848と同じく2009年にデビューした1198はWSBKでタイトルを獲得した1098Rと同一のギアレシオや真円直径63.9mmのスロットルボディのみならずボア106mm×ストローク67.9mmの数値までダイレクトに反映され1198.4ccの排気量を手に入れた。こちらもSモデルを例に挙げて紹介するが、まず注目すべきは8段階ものセッティングレベルがあり、それぞれにホイールスピン許容度を選択できるDTCの採用である。100ccの排気量アップに伴い1.2kg増大して13.4kg / 8,000rpmとなった強大なトルクを武器に鋭さが増した加速性能をDTCがバックアップし、常に最適なパワーを伝達する。排気量アップと新たな装備が追加され重量が増したにもかかわらず、真空ダイカスト製法のクランクケース、鍛造マシン仕上げアルミホイール、ヘッドライトユニットの見直しによって車両重量は169kgと2kgもの軽量化を達成し、コーナリング初期の回頭性や切り返しが一層軽くなるなど運動性も向上した。

現行フラッグシップモデル1198SPの買い得感

そして遂に2011年に登場した1198SPの出番となる。市販車にレース可能な装備を装着したモデルにだけ与えられた“SP”の称号は1995年の916SP以来(SPSは916以降も存在した)実に16年ぶりの復活であり、このネーミングを聞くだけでもワクワクせずにいられない。今回のグレードアップは“SP”の名に恥じないものであり、冒頭でも触れたDQS(ドゥカティ・クイック・シフター)はアクセルを開けたままクラッチに触れることなくシフトアップを可能にする。その完成度は高く、ドゥカティならではの心地よいシフトタッチは微塵もスポイルされていない。サーキットでコンマ1秒を削り取るのに有効なだけでなく、一般道に於いてもクラッチ操作を半減させ、尚且つシフトアップ時に発生する前後ピッチングモーションも抑えられるためツーリング時の疲労軽減にも繋がる。

オーリンズ製TTXリアサスペンションは圧側と伸び側の調整機構が完全に独立した構造になっており、片側の調整を行うと少なからずもう片側にも影響を与えてしまう従来の製品とは異なり、きめ細やかなセッティングを可能にする優れモノである。スリッパークラッチはコーナーへとアプローチする際にシフトダウン直後のエンジン回転数が高すぎた場合、自動的に半クラッチ状態を作り強大なバックトルクを逃がしてくれる。シフトダウンが苦手なライダーにとってはホッピングの恐怖から解放されるありがたい装置となる。

質感の高いアルミニウム製燃料タンクは僅か1kgの軽量化であるが重心位置から離れた場所なので効果は大きく低重心化に貢献する。さらにタンク容量が2.5リットル増し18リットルへと増量されたのでツーリング時には助かるだろう。

DDAとDTCについては周知のことと思われるので説明は割愛させていただくが、とにかく1198SPはスロットル操作に対する反応がリニアでありながらも車体の動きは驚くほど穏やかに感じられる。1198の登場から2年が経過し、ECUのマッピングがさらに煮詰められたからなのだろう。デビュー当初の車体で感じたやや荒削りな部分はすっかり影を潜め、力量を感じさせつつも洗練されたLツイン独特の上品なパルス感はまさに熟成の域に到達したことを感じさせる。

168kgにまで軽量化された車体のコーナリング性能はさらに向上し、バンキングがとにかく軽くなった。それもただ軽いのではなく前後のタイヤが路面を掴んで離さない安心感を伴っての軽さなのだ。この働きは前後に装着されたオーリンズ製TTXサスペンションによるところが大きく、しなやかな動きで確実に路面を捉え続けながらライダーに対してグリップ状況を的確に伝えてくれる。サーキット走行で有効なのは勿論のこと一般道でも安全な走行に役立つ機能や装備が満載の“SP”は『買い』の1台だ!

詳細写真

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ブレンボ製4ピストンモノブロックキャリパーは、2パッドタイプでラジアルマウントでセットされている。セミフローティングのブレーキローターとの相乗効果で、強力なストッピングパワーを発揮する。
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DUCATI史上最強の水冷L型ツインエンジンである、テスタストレッタ・エボルツィオーネを搭載。WSBKを走るレーサーと同じく、106mmのボア径と67.9mmのストローク長で、1198.4ccの排気量となる。
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豪腕を想像させる力強い片持ちタイプのスイングアーム。ピボットポイント、エキセントリックハブ、サスペンションリンクなど、強い力がかかる部分には強度確保のため、それぞれアルミ鋳造部品を採用している。
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1198SPにはオーリンズ社のTTXショックユニットが採用されている。レースシーンにて活躍するこのサスペンションは、圧側、伸び側の減衰力をそれぞれ独立した形で調整でき、セッティングの幅がとても広い。
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触媒コンバーターとラムダセンターを装備するエキゾーストシステムは、0.8mm厚の極薄素材を使用し超軽量なものとなっている。シート下から奏でられるLツインのレーシングサウンドは、惚れ惚れする音色だ。
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SPグレードにだけ採用されるマルケジーニ製アルミニウム鍛造ホイール。軽量かつ高剛性を誇る。190/55ZR17サイズのリアタイヤを履き、しっかりと路面を捉えつつパワースライドはDTCで制御する。
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大型の液晶ディスプレイ上に、全てを表示する高性能メーター。回転数、スピードの基本メーターに加え、DTCレベル、時間、外気温、水温、電圧、トリップメーター、ガソリン残量などを表示する。
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レーシーなスタイリングを損ねないために、テールランプはかなり小型なタイプとなっている。タンデムシートも小さく、実際に長時間乗車は辛い。エマージェンシー用と言ってもいいだろう。
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タンブリーニがデザインした916の直系と言えるスタイリングになった1198。WSBKで活躍するDUCATIの顔となっている。なおライトケースは旧型となる1098と比べ0.4kg軽量化されている。
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弟分と侮れない存在 848

以前DUCATIは、WSBKのダウンサイズクラスWSSのホモロゲ車両として、748や749という排気量を下げたモデルを用意しており、たびたび年間チャンピオンとなっていた。しかし現行モデルで用意されている848は、WSSのレギュレーションに沿っておらず、独自カテゴリーのスーパーバイクといえる。スタイリングはそのままに、湿式クラッチとしたことや、リアタイヤサイズを180にしたことなど、細部にわたり専用設計が施され、純粋にスポーツライディングを楽しむセッティングとなっている。

編集部コメント

ドゥカティの本当の姿

ドゥカティの頂点。アップハンドルのマシンばかり増えたが、1198に乗ると、やっぱりLツインの本当の姿はこれだなと思う。驚く程軽量でスリムな車体。突き抜けるように加速していくテスタストレッタエンジン。圧倒的なコーナーリングパフォーマンスを誇るだけでなく、思い切って攻めていった時、ライダーと一体になったかのような感動を与えてくれる。スポーツバイクの快感が、すべて集約されている感じがする。(フリーライター 後藤 武)

DUCATI OF DUCATI

個人的にはスーパーバイクモデルが一番好き。1098に初めて乗った時に感じた“乗りやすくて速いけど、ちょっと心配”といった部分が、熟成によって無くなり安心感すら備わってしまった。しかし、レーサーレプリカモデルには昔からつき物の、一般公道で楽しめるペースで走ると、免許や命が心配と考えることもやはりある。だからこそ848の存在が際立つと思う。それにしても足回りもエンジンマネジメントも最高ですな。(DUCATI BIKES 元編集長 小松 男)

乗りやすいけど速すぎる

これぞDUCATI!といったスポーティなオーラをガンガン撒き散らしているバイク。とてもパワフルで、エンジンのレスポンスも他のバイクよりシャープ。こんなの乗れるのかなぁ…と見た目で躊躇してしまうけど、乗ってみるとエンジンもハンドリングも素直。意外にもすぐに慣れてしまった。それでもいざとなると扱いきれないバイク、という威圧感みたいなものがつきまとう。わたしには「乗れるけど乗りこなせないバイク」だなぁ。(フリーライター TOMO)

向上心を刺激する一台

レース経験もサーキット走行体験もほぼないツーリングライダーとしては、スーパーバイクは手強すぎる。とくにSPときたらさらに高速寄りのセッティングになっているから手に負えない。私にとっては動かすので精いっぱいだ。ただしそうした難しさを前にして「いいや、乗らないもんね」と思わせず、乗りこなしたいという野心が首をもたげてくる。スポーツの原点であり、ライダーの向上心を刺激してくれる点は全モデルで一番だ。(DUCATI BIKES 元編集部員 山下 剛)

喜びを感じるためのレプリカマシン

ライダーに夢を見せてくれるバイク。そもそもこんなレーシングマシンをどう楽しめって言うんだ?と思ってはいても、ちょっと乗るだけで正しくスポーツライディングの楽しさを教えてくれる。走る、曲がる、停まる、の基本動作がしっかり出来ていないと面白くもなんともないが、それが綺麗に整った瞬間、車体との一体感に極上の悦びが感じられる。レースシーンから生まれたプロダクツだということを強く感じる、真っ当なレーサーだ。(VIRGIN DUCATI.com 編集部 田中 善介)

TOMOのタンデムインプレッション

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ライダーとフラットに繋がるシートは密着度が高い。重心も低めに抑えられるから、タンデムビギナーの不安も半減。そのかわり前方はちょっと見にくいから信頼度でカバーを。グラブバーはやや持ちにくいけど、座り心地が良くて身体を支えやすいからまずまず。加速時のバックプレッシャーを強く感じるから、そこは注意かな。

プロフィール
友野 龍二
薄くて小さなシート、そしてしゃがんでいるとも言えそうなくらい窮屈なステップ位置、掴まるところはシートのグラブベルトだけ…。1198はやっぱソロで楽しんでナンボのバイクなのでしょう。タンデムでツーリング? ドMなパッセンジャーならありかも。もし後ろに人を乗せるときは優しくソフトに短時間ね。

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