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ダイネーゼがエアバッグで目指すバイクの安全性 D-Air® Street
取材協力/Dainese Japan  構成/VIRGIN DUCATI.com 編集部
※この記事は、DUCATI専門誌『VIRGIN DUCATI』Vol.06 P94-95の内容を再編集・掲載したものです。
掲載日/2015年6月26日


万がいちのアクシデントの際、頭部と同様にライダーの致命傷になりうるのが胸部など上半身への衝撃だ。それを軽減するのが二輪用エアバッグ。ダイネーゼはセーフティギアのトップブランドとして高度なシステムを完成させた。

開発にかけた
10年以上の歳月

イタリアに本拠を構えるダイネーゼ。ライディングギアの老舗として知られる同社は、今世紀に入ってからバイク用のエアバッグシステムの開発に心血を注いできた。それがD-Air®である。レーシング、ストリート問わず、ライダーの生命を脅かすのは転倒や、様々な物体への衝突に伴う上半身や頭部へのダメージ。それを軽減させる答えがエアバッグなのだ。開発にあたり、同社は専門チームを発足させ、研究に10年以上の月日を費やしてきた。

 

ダイネーゼが何よりこだわっているのは作動時間だ。まず同社は、これまで公道で起きた膨大な件数の交通事故データを分析。その結果、衝突から約0.080秒以内でエアバッグが完全に膨らまなければ、ライダーの安全性は確保できないという事実に着目した。そこで生み出されたのが、衝突から約0.045秒でエアバッグが完全に動作を完了する『D-Air® Street』である。ここでは車体とウエアの相互通信で作動するシステムの概要を見ていただこう。

 

D-Air® Street

D-Air® Streetに装備されるエアバッグシステムの作動条件とは?

【作動条件1:障害物との衝突】

フロントまたはリアホイールのグリップを失ってから、障害物に衝突した場合。

作動時間=0.025秒

【作動条件2:転倒もしくはスリップ】

走行中、スライドした後に転倒した場合。

作動時間=0.03~0.26秒

作動時間に幅があるのは、転倒のスピード次第で作動時間が変わるため。ちなみに時速7km以下の衝突では作動しない。

0.080秒以下の作動完了が重要な理由とは

後述する車体側のセンサーが衝突の兆候を感知すると、エアバッグの作動が開始する。衝突後0.010秒でエアバッグはすでに大きく膨らんでおり、衝突後0.030秒の時点ではほぼ完全に開ききっている。この時、バイクは自動車に大きくめりこんでいる。

 

ライダーが自動車に向けて投げ出される直前。すでに身体はバイクのハンドル周りに衝突している。これを見れば、0.080秒以内にエアバッグが作動完了しなければならない理由がわかるはずだ。

安全性を担保する
アルゴリズム

D-Air® Streetのシステムは、車体側の<M-Kit>とウエア側の<J-Kit>で構成される。車体側で異常を感知すると、その情報はワイヤレスでウエアに送られてCPUが状況を把握する。その挙動が「対物への衝突」なのか「転倒」なのかは、レースや事故研究などこれまで蓄積された膨大なデータを元にCPUが判断を下し、エアバッグを作動させる。この計算式=アルゴリズムがシステムの肝であり、業界的に安全装置の起動完了目安とされている0.080秒を大幅に上回る0.045秒での完全作動を実現させている。

 

また、ライダーがバックパックを背負った場合や、タンデムで両者がエアバッグを装着した場合での動作確認、誤作動時に危険性がないかなど、あらゆる状況下での安全性も第三者機関で確認済みだ。長年に渡って研究開発を行ってきたダイネーゼだからこそできる高度で緻密なシステム、それがD-Air® Streetなのだ。

DAINESE×DUCATI

車体とウエアの相互通信で
ストリートでの安全性を確保
欧州で実用化が進むD-Air® Streetシステム

ドイツ・第三者機関でも
証明された安全性と信頼性

ダイネーゼがエアバッグで目指すバイクの安全性 D-Air® Street

ドイツに本拠を置くTUV(テュフーズド)は、各分野の専門家が多数在籍し、各種認証・試験・コンサルティング等を行う世界的な第三者試験認証機関である。プロテクターにまつわる明確な技術規格がない今、ダイネーゼはTUVにシステムの認証を独自に依頼。800もの厳しいテストをクリアし、安全性と信頼性を証明した。

車体側でのD-Air®システム:M-Kit

ダイネーゼがエアバッグで目指すバイクの安全性 D-Air® Street

ダイネーゼがエアバッグで目指すバイクの安全性 D-Air® Street

D-Air® Streetは、バイクに搭載するユニット<M-Kit>とジャケットのユニット<J-Kit>が相互通信を行う。センサー搭載位置のイラスト。車体に搭載するユニット。真ん中がハンドル周りにマウントされるディスプレイ。左右のセンサーはフロントフォークに、残る一つのセンサーはシート下でライダーの腰の動きや浮き上がりを感知する。

ダイネーゼがエアバッグで目指すバイクの安全性 D-Air® Street

専用ディスプレイ

コクピットに取り付けるシステム情報を表示するディスプレイ。システムはSIMカードによるユーザー認証を経て車体とジャケットのペアリングを行うので、他者との混信もない。またD-Air® Streetシステムは、ライダーとパッセンジャーそれぞれがD-Air®搭載のダイネーゼ製ジャケットを着用しても、正しくエアバッグが作動するよう設計されている。

ダイネーゼがエアバッグで目指すバイクの安全性 D-Air® Street

ダイネーゼがエアバッグで目指すバイクの安全性 D-Air® Street

フロントフォークセンサー

フロントフォーク左右に取り付けられるのは3軸(X・Y・Z)の加速度をモニタリングするセンサーだ。このセンサーと、シート下でライダーの動きを監視するスライドセンサーで、総合的にライダーと車体の状況を判断する。

ウェア側でのD-Air®システム:J-Kit

ダイネーゼがエアバッグで目指すバイクの安全性 D-Air® Street

ダイネーゼがエアバッグで目指すバイクの安全性 D-Air® Street

2本の高圧縮ガスタンクを備えるエアバッグ装置。前後2つのエアバッグは合わせて12リットルの容量。胸部・背中・肩甲骨をカバーし、頭部(首)の動きも抑制する。欧州標準の衝突試験では、一般的な胸部プロテクターに比べて、ライダーへの衝撃を87%以上低減させると実証された。

ダイネーゼがエアバッグで目指すバイクの安全性 D-Air® Street

ダイネーゼがエアバッグで目指すバイクの安全性 D-Air® Street

欧州市場ではすでに商品化されたD-Air® Street搭載のジャケット。現在、ジャケットのほかにベストタイプも用意されている。通信関連の国内認証が取れれば日本へも導入されるだろう。

イタリアの警察にも正式採用済み

ダイネーゼがエアバッグで目指すバイクの安全性 D-Air® Street

D-Air® Streetの実用化がひと足先に始まった欧州。イタリア国家警察のバイク部隊に正式採用され、警官達の安全にも貢献している。欧州モーターショーのダイネーゼブースで警官達と。

ダイネーゼがエアバッグで目指すバイクの安全性 D-Air® Street

イタリア警察で行われた、D-Air® Street採用セレモニーでのデモの様子。エアバッグが膨らんでいる。車両はポリス仕様のムルティストラーダ。