“黒=Nera”という完成形── ドゥカティ新型ハイパーモタード698モノ ネラ登場!!
- 掲載日/2026年05月20日【トピックス】
- 取材協力/ドゥカティジャパン 取材・文・写真/小松 男


“Nera”に与えられた、
より攻撃的な存在感
新たに登場した『ハイパーモタード698モノ ネラ』最大の特徴は、やはり専用のトータルブラックカラーだろう。これまでの698モノが持っていた軽快でアグレッシブなキャラクターに対し、“ネラ”はよりダークで硬派な雰囲気をまとっている。
ブラックを基調としたボディに対し、ドゥカティレッドのフレームとホイールを組み合わせることで、単なるモノトーンには終わらない強烈なコントラストを演出。いかにもボルゴ・パニガーレ発のスポーツブランドらしい色使いだ。さらにブラック仕上げのテルミニョーニ製サイレンサーが組み合わされることで、リアビューにはレーシーな迫力が宿る。
近年のドゥカティは、“美しさ”と“機能”を極めて高いレベルで融合させているメーカーだが、このネラにもその哲学が色濃く反映されている。モタードというカテゴリーは本来、豪快さや荒々しさが魅力だ。しかしドゥカティはそこへイタリアンデザインの洗練性を持ち込み、“美しく過激”という独自の立ち位置を築き上げてきた。
興味深いのは、今回のネラが“特別仕様車”的な位置づけのモデルとして、見た目だけの演出に留まっていない点だ。ドゥカティ・クイックシフト(DQS)を標準装備し、ライディングプレジャーそのものを底上げしている。シングルエンジン特有のダイレクト感と、クラッチ操作なしで繋がる鋭いシフトチェンジは、ワインディングで極めて刺激的な体験をもたらすはずだ。
かつてスーパーモタードは、どこか“玄人向け”のジャンルでもあった。しかし近年は電子制御の進化によって間口が広がり、扱いやすさと刺激を両立する方向へ進化している。ハイパーモタード698モノ ネラは、その流れを象徴する存在と言えるだろう。

パニガーレ由来の単気筒、
その異端的メカニズム
ハイパーモタード698モノ最大のポイントは、やはり“スーパークアドロ・モノ”エンジンに尽きる。
この単気筒ユニット、開発のベースとなっていたのは、かつてスーパーバイク界を席巻した『1299 パニガーレ』系エンジンである。つまり、ドゥカティは自社のハイエンドスポーツで培った技術を、あえて単気筒へ凝縮したのだ。
116mmという超ビッグボア、デスモドロミック機構、チタン吸気バルブ、MotoGP由来の技術思想──。普通に考えれば、ここまで本気で単気筒を作るメーカーは極めて少ない。
最高出力は77.5ps、最高回転数は10,250rpm。数字だけを見ると“本当にシングルか?”と疑いたくなるレベルであり、市販単気筒としてもトップクラスのスペックを誇る。
しかも、このエンジンは単に高出力なだけではない。ドゥカティが狙ったのは、“回す楽しさ”そのものだ。
一般的な単気筒エンジンは低中速トルク重視になりやすい。しかしスーパークアドロ・モノは、むしろ高回転域へ向かって鋭く吹け上がる。その感覚は従来のビッグシングル像を覆すものと言っていい。
これは近年のドゥカティが重視している「ライダーを興奮させる内燃機関」というテーマにも繋がっている。電動化や効率化が叫ばれる時代だからこそ、“感情を揺さぶるエンジン”をあえて作る。その姿勢には、100周年を迎えたブランドの矜持すら感じさせる。
さらに151kgという軽量な車体も見逃せない。可変断面・可変肉厚のトレリスフレームや、軽量ホイール、ミニマルなスイングアームなど、徹底した軽量化によって実現された数値だ。
軽さは、すべての運動性能を向上させる。
ブレーキング、切り返し、加速、そしてライダーの疲労軽減。その恩恵は極めて大きい。特にモタードというジャンルでは、“軽快感”そのものが車両価値になるため、この151kgという数字には大きな意味がある。

徹底的な“楽しさ”をもたらす、
最新ドゥカティ電子制御パック
かつてスーパーモタードは、“乗り手を選ぶバイク”だった。
フロントアップ、リアスライド、強烈な荷重移動──。それらを自在に扱うには高いスキルが必要だったが、ハイパーモタード698モノは、その楽しさを電子制御によって再定義している。
特に象徴的なのが、“スライド・バイ・ブレーキ”機能を備えたコーナリングABSだ。これはブレーキング時のリアスライドを制御しながら許容するシステムで、いわば「安全にドリフトを楽しめる」方向へ電子制御を進化させたもの。
従来の電子制御は、“危険を抑える”方向が主流だった。しかしドゥカティはそこからさらに一歩進み、「楽しさを最大化するための制御」へ踏み込んでいる。
トラクションコントロール、ウイリーコントロール、エンジンブレーキコントロールなども、単なる安全装備ではない。ライダーが積極的に遊べる領域を広げるためのデバイスとして機能しているのだ。
さらに、レーシング用テルミニョーニエキゾースト装着時には、ウイリー・アシスト機能も有効化される。これはトルク制御によってウイリー角を維持するという、極めて尖った機能だ。
普通のメーカーなら「危ないからやめましょう」となりそうな領域へ、ドゥカティは真正面から踏み込む。
だが、それこそがドゥカティらしさでもある。
近年のドゥカティはMotoGPやスーパーバイクで培った電子制御技術を積極的に市販車へ落とし込み、“誰でも速く、そして楽しく走れる”方向へ進化を続けてきた。ハイパーモタード698モノは、その技術を単気筒モタードへ持ち込んだ意欲作であり、ネラはその世界観をさらに濃密にしたモデルと言える。
100周年という節目を迎えた今もなお、ドゥカティは単なるスペック競争ではなく、「感情を刺激する乗り物」を作り続けている。
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