ドゥカティ スクランブラーSixty2
- 掲載日/2016年03月30日【試乗インプレッション】
- 取材協力/Ducati Japan 取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/山家 健一 衣装協力/HYOD
初代モデルのスピリットを受け継ぐ
普通2輪免許で乗れるドゥカティ
Sixty2というネーミングは、ドゥカティが米国向けに初代スクランブラーの発売を開始した1962年に由来している。当時はスケートボード、サーフィン、ポップミュージックなどの若者文化が生まれた時代であり、こうした米国発のサブカルチャーからインスピレーションを得たポップなデザインが特徴となっている。スクランブラーとは元々はオフロード専用モデルがなかった当時、オンロードモデルをベースにアップマフラーやブロックタイヤを装備して荒地を走れるようにした改造モデルのこと。初代スクランブラーも若者向けの小排気量モデルだったが、その意味で今回のSixty2もそのスピリットを強く受け継ぐモデルとなっている。排気量も400ccということで、日本ではモンスター400以来の普通2輪免許でも乗れるドゥカティとして、最もポピュラーなモデルとしての広がりを期待できそうだ。
スクランブラーSixty2の特徴
400ccLツインを専用シャーシに搭載し
排気量に合わせて足回りを最適化
ドゥカティのスタイルとクオリティを犠牲にすることなく、よりユーザーフレンドリーで手頃な価格を実現したのがスクランブラーSixty2である。エンジンはスクランブラーアイコンがベースの空冷2バルブのLツインだが、ボア&ストロークともに縮小し399ccに設定。800ccシリーズ同様のφ50mm径スロットルボディに2インジェクターを搭載し、最高出力は40hp/8,750rpmを得ている。フレームは新設計のツインアッパースパーを備える高剛性スチール製トレリスタイプを採用。ホイールベースは800ccシリーズより15㎜長い1,460mmとし高速安定性を高めている。なお、スイングアームも新設計のスチール製とし、新しいデザインのティアドロップ型燃料タンクと同じ素材が使われるなど、独自のモデルとしてのこだわりも主張している。
足回りも専用設計で、フロントフォークは倒立タイプからショーワ製41mm正立タイプへ。リアサスにはプリロード調整式のカヤバ製モノショックが採用される。ホイールトラベル前後150mmの豊富なストローク量と専用ブロックタイヤを生かし、ストリートからちょっとしたオフロードまで幅広いシチュエーションでの走破性能を実現しているのも特徴だ。なお、タイヤはリア側を160サイズ(800cc版は180サイズ)とし、軽快なハンドリングを実現。ブレーキも同じブレンボ製だがコンベンショナルな2ポットタイプとなるなど、排気量に合わせて最適化。ABSが標準装備されている点はシリーズ共通だ。
また、専用ロゴステッカーや独自のパイプレイアウトを持つユーロ4対応の新型エグゾーストシステム、丸型バックミラー、ハイマウントプレートホルダーを採用するなど、800cc版とはディテールも異なる部分が多い。
スクランブラーSixty2の試乗インプレッション
小気味よい鼓動と伸び切り感
ハンドリングにも個性が光る
目の前に佇むマシンは見慣れたドゥカティレッドとはやや趣の異なるオレンジカラー。あえてレトロ風としたロゴとグラフィックが今の時代には新鮮に見える。
さっそく跨ってみるとけっこう大柄で、車体のサイズ感としては800cc版と同じ感じ。幅広なアップハンドルと20㎜低い770㎜のシート高により、上体が起きた楽なライポジで足着きもすこぶる良い。ハンドル切れ角も35度と十分で、パルスの細かい低速で粘るエンジン特性によりUターンもしやすい。
そう、エンジンのフィーリングが800cc版とはちょっと違う感じなのだ。まず排気量が半分なのでパワー、トルクともに大人しめなのは分かるが、低回転域が安定していて発進やノロノロ運転も意外と得意。その意味でも街乗りに向いている。それでいて800cc以上に高回転まで伸びるし、パルスが細かいので振動も少なく疲れにくいなど、Sixty2独自のキャラクターを持っている。これは新しい発見だ。
400ccということでハンドリングもさぞ俊敏かと思いきや、意外と安定志向である。専用設計のスチール製スイングアームによるしなり感、そしてホイールベースが15㎜伸びたこともあってか、高速道路のレーンチェンジなども割とねっちりしている。もちろん、スリムなLツインに専用160サイズの細めのリアタイヤならではの軽快さはあるのだが、いい意味で安心できる落ち着きのある乗り味と言っていい。
コーナリングでもエンジンのキャラは光っている。800cc版の弾ける鼓動感は楽しいし実際に速い。ただ、それなりにトルクも大きいのでコーナリングのスロットルワークにも気遣いが必要だが、Sixty2はあまり細かいことは考えずとも開けていける。控えめだが小気味よい鼓動と伸び切り感が楽しめる。そして、思いのままにラインを描けるハンドリングの正確さはドゥカティの血筋だ。
足回りが正立フォークになっていたり、ブレーキキャリパーがラジアルタイプではなく標準的な2ポットになっていたりと排気量サイズなりに最適化されているが、不便を感じることはないはず。それは価格にも反映されているし、そもそもハイパフォーマンスを求めるモデルではないので気になることもないだろう。むしろ、足回りが勝ちすぎていないため全体のバランスは良く、乗りやすいとも言える。
ドゥカティでもポピュラーなスクランブラーブランドの中にあって、Sixty2はさらに敷居の低いモデルであることは間違いないが、それがすなわちビギナー向けとは限らない。大型2輪免許を持っているライダーならもちろん800cc版を選ぶだろうが、あらためて400ccという排気量の良さも分かった気がする。明確なキャラの違いもあるし、その意味でもしっかりと個性を持った、手軽にドゥカティの魅力に触れられるモデルである。
スクランブラーSixty2の詳細写真
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