ドゥカティ初代モンスターにインスパイアされた空冷モンスター797+
- 掲載日/2017年12月18日【試乗インプレッション】
- 取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/山家 健一 衣装協力/HYOD
モンスター797+ の試乗インプレッション
空冷Lツインの味わいと
ナチュラルな走りが楽しい
92年登場の初期型を思わせるムダを削ぎ落したベーシックなデザインが印象的。タンクにボリュームがありテールが絞り込まれたマッシブなシルエットは、まさにモンスターの原点を表現しているようだ。
従来型の796は2本出しのセンターアップマフラーや片持ち式スインアーム、2ピース式のフレームを採用していたが、新型の797になって車体構成はよりオーソドックスに、両持ち式のスイングアームなどはむしろ696に近くなった感じもする。ひと口に言うなら、今流行りのミニマライズ化と言ってもいいだろう。値ごろ感のあるプライスにもそれは反映されている。
ライディングポジションもかつてのモンスターのように極端なファイタースタイルではなく、ハンドルも比較的高く前傾も緩めでリラックスできる。シート高805mmも国産ネイキッド並みで、Lツイン特有のスリムな車体と相まって足着きも良好だ。
モンスター796がベースの空冷Lツインはパワー的には72psと従来型より15psダウンしているが、これはユーロ4対応ということで仕方ないところか。重量も8kgほど増えているためか、従来型のような弾ける加速感はやや影を潜めた感じもある。
ただ、工業製品というものは常に進化しているし、とりわけ電気系についてはそれが顕著に現れるものだ。「最新のドゥカティが最良のドゥカティ」と語った、かつてドゥカティで数々の名車を生み出した天才デザイナー、マッシモ・タンブリーニ氏の言葉を借りるまでもなく、新型モンスター797も出力特性はよりマイルドに扱いやすくなっている。
空冷Lツインはもはや少数派だが、まったりとした円やかな回転フィールと、一発一発のパルスを肌で感じられるメカニカルな味わい深さがある。回転数は4,000~7,000rpm辺りが美味しいところで、力強いトルクの厚みとスムーズな吹け上がりがバランスしているレンジ。さらに低い2,000~3,000rpmで流していてもドコドコと楽しいのが空冷Lツインの美点だ。
前後サスペンションは適度に減衰力が効いていて前後のバランスがいい。コーナーではピッチングを生かせるのでフロントに安心感があるし、ホイールベースも従来型より15mm短くなってよく曲がる。ハンドリングはとてもナチュラルで、基本に忠実なコーナリングがどこでも楽しめる感じ。ブレンボ製ブレーキも良く効いて扱いやすいしABS作動時もキックバックが少なめなので、きっちり握り込める。
加えて、サーボアシスト付きスリッパークラッチは操作も軽く、冬の下り坂でも躊躇なくシフトダウンをこなせる安心感がある。従来型より燃料タンク容量も増量されているし、特にメーターバイザータイプのミニカウルが装備された+(プラス)は高速道路でも距離を稼げるだろう。欲を言えば、ハンドル切れ角にもう少し余裕があるとUターンなどがやりやすいと思う。
装備はシンプルで見た目もオーソドックスになるなど原点回帰的なモデルではあるが、それだけに分かりやすく気軽に乗り回して楽しめるモデルだ。
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