【”イタリア”を代表するもの】――外務省がドゥカティを国家ブランドとして世界へ発信
- 掲載日/2026年07月18日【トピックス】
- 写真/ドゥカティ 文/小松 男

外務省がドゥカティを招いた理由
それは「国家ブランド」の象徴だから
2026年7月14日、イタリア外務・国際協力省で「Moto d’Italia – Culture Beyond the Track」が開催された。モーターサイクル産業やモータースポーツを、イタリアが世界に誇る文化・産業として発信することを目的とした国家プロジェクトであり、ドゥカティはその中心的存在として招かれた。
会場にはイタリア副首相兼外務・国際協力大臣アントニオ・タヤーニ氏をはじめ、ドゥカティCEOクラウディオ・ドメニカーリ氏、MotoGPライダーのフランチェスコ・”ペッコ”・バニャイアらが出席。MotoGPを運営するドルナグループのカルメロ・エスペレータCEOや、ミラノショー(EICMA)、二論工業会(ANCMA)、イタリア二輪連盟(FMI)など、イタリア二輪業界のオールスターが外交の場に集結する異例の光景だった。

注目すべきは、このイベントの主催者が国の外交機関だという点だ。通常であれば産業省やスポーツ関連機関が主催しそうな内容だが、今回は外交を担う政府機関が前面に立っているのだ。
つまりイタリア政府は、ドゥカティのモーターサイクルを単なる工業製品ではなく、イタリア文化を世界へ伝える外交資産と位置付け、国家ブランディングに取り入れるということだ。
ドゥカティは現在90か国以上で事業を展開し、売上の8割以上を海外市場で生み出している。MotoGPで5度のライダーズタイトル、6年連続のコンストラクターズタイトルを獲得するなど、競技面・ビジネス面ともにイタリアを代表する企業へと成長したからこそ、今回の舞台が用意されたのである。

バニャイアが”国の顔”に
スポーツ外交大使就任の意味
イベント終盤では、フランチェスコ・バニャイアに「スポーツ外交大使」の記念盾が授与された。
この表彰は、競技成績だけを評価するものではない。スポーツを通じてイタリアのイメージ向上に貢献した人物へ贈られるものであり、国家が公式に「イタリアを代表する存在」と認めたことを意味している。

MotoGPチャンピオンという肩書だけなら過去にも数多く存在した。しかし近年のバニャイアは、ドゥカティとともにMotoGP黄金時代を築き上げた象徴的存在となり、世界中のファンへイタリアブランドの魅力を発信し続けてきた。
ドメニカーリCEOも「才能、プロフェッショナリズム、そしてあらゆる挑戦に誠実に向き合う姿勢は、ドゥカティとイタリアスポーツの価値観そのもの」と高く評価している。

ライダー個人への表彰でありながら、その背景にはMotoGPという世界最高峰カテゴリーで積み重ねてきたドゥカティの成功がある。企業とライダーが一体となってイタリアブランドを世界へ広めてきたことが、今回の表彰につながったと言えるだろう。
100周年はあくまで通過点
ドゥカティが目指す次の100年
会場にはMotoGPマシン「Desmosedici GP26」、スーパーバイク世界選手権で戦う「Panigale V4 R」、そして1986年のデイトナ「Battle of the Twins」でマルコ・ルッキネリが優勝した750 F1のカラーリングをモチーフとした100周年記念モデル「Superleggera V4 Centenario Tricolore」も展示された。

いずれも現在のドゥカティを象徴する存在だが、その役割は単なる展示車両ではない。レースで培った技術力、量産車へ還元される開発思想、そしてイタリアンデザインの美しさを一度に体現するショーケースでもあった。
100周年という節目は、ドゥカティにとって過去を振り返るためだけのものではない。国家プロジェクトの一員として世界市場へ挑み続ける姿勢を示す、新たなスタートラインでもある。

ドゥカティはこれからもMotoGPで勝つメーカーであり続けるだろう。しかし今回のイベントが示したのは、それだけではない。イタリア政府が世界へ向けて発信したかったのは、「ドゥカティはイタリアそのものを象徴するブランドである」という明確なメッセージだった。100年という歴史を経た今、その存在価値は一企業の枠を超え、国家ブランドとして新たなステージへ歩み始めている。


