VIRGIN DUCATI | ドゥカティ スーパーバイク899パニガーレ 試乗インプレッション

スーパーバイク899 パニガーレの画像
DUCATI Superbike 899 Panigale

ドゥカティ スーパーバイク899パニガーレ

  • 掲載日/2014年03月12日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/Ducati Japan  取材・文/中村 友彦  写真/柴田 直行

エンジンとシャシーの構成を一新しても
親しみやすさを追求する姿勢は不変

1995年から展開が始まったドゥカティのミドルスーパーバイクシリーズは、基本設計を共有する兄貴分の 916/999/1098 系とは方向性が異なる “親しみやすさ” を前提に開発されている。もっとも、748(1995~2002年)/749(2003~2006年)の時代にはレースを意識したRモデルが存在したし、848(2009~2013年)の最終型となった848 EVO コルセスペシャルエディションは足まわりがハードな設定だったけれど、排気量を縮小すると同時にストリートを考慮した特性が与えられたミドルスーパーバイクは、排気量とパワーに勝る兄貴たちより、ドゥカティならではのライディングプレジャーを気軽に味わえる資質を備えていたのだ。

899 パニガーレはそんな系譜を受け継ぐモデルで、従来のミドルスーパーバイクが採用していた鋼管トレリスフレーム+テスタストレッタ・エボルツィオーネエンジンに替えて、アルミモノコックフレーム+スーパークワドロエンジンを採用。この変更は過去の 748/749/848 シリーズの手法に倣って、兄貴分の基本設計を転用した結果だが、1199 パニガーレと同じ装備を導入することで、ドゥカティのミドルスーパーバイクは新世代に突入したのである。

スーパーバイク899パニガーレの特徴

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基本設計は 1199 パニガーレと共通だが
足まわりを筆頭とする各部のパーツを専用開発

899 パニガーレを語るうえで欠かせない要素と言ったら、筆頭に挙がるのはアルミモノコックフレームや超ショートストローク指向のスーパークワドロエンジン、パワー、ABS やトラクションコントロールの設定、エンジンブレーキの利き方が変化する、3種のライディングモード(レイン/スポーツ/レース)だろう。もっとも、これらは 2012年にデビューした 1199 パニガーレから譲り受けた装備だが、ドゥカティ製ミドルスーパーバイクの変遷という視点で見るなら、899 は既存の 748/749/848 系と決別するかのような、革新的機構が満載なのである。

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とはいえ、ドゥカティマニアがそれ以上に注目しているのは、兄弟車である 1199 パニガーレ と 899 パニガーレの相違点かもしれない。1199 をベースに 899 を開発する際にドゥカティが行った最も大きな変更は、エンジンのボア×ストロークを縮小したこと(112×60.8 → 100×57.2mm)だが、1199 より格段にしなやかな設定になった前後サスペンションや、片持ち式→両支持式に刷新されたスイングアーム、リアの幅を 200 → 180mm にすると同時に銘柄をピレリ・ディアブロスーパーコルサ→同ロッソコルサに改めたタイヤ、0.5°立てられたキャスター角(24.5 → 24°)、11mm 短くなったホイールベース(1,437 → 1,426mm)なども、899 の乗り味を語るうえで欠かせない要素。これらのほとんどは 899 に “親しみやすさ” を与えるための変更で、相違点の多さから伺えるのは、ドゥカティの本気度の高さである。その背景には、1199 が難易度の高い乗り味だったという事情があるのかもしれないが、899 は歴代ミドルスーパーバイクの中で最も真摯に、親しみやすさを追求したモデルなのだ。

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なお親しみやすさと言えば、価格にもその姿勢は表れている。兄弟車である 1199 パニガーレのスタンダードが 215万円、先代モデルに当たる 848 EVO が 189万円であるのに対して、899 パニガーレの価格は 186万円。大バーゲンと言っては言いすぎかもしれないが、ドゥカティ製スーパーバイクの間口を大きく広げるこの設定に、惹かれるライダーは少なくないだろう。

スーパーバイク899パニガーレの試乗インプレッション

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乗り手が無理に頑張らなくても
安心材料となる接地感とトラクションが得られる

ここまでで述べたように、ドゥカティのミドルスーパーバイクは “親しみやすさ” を前提に開発されている。ただし親しみやすいと言っても、それは “ドゥカティのスーパーバイクとしては” という話で、例えば市場でライバルになる日本製 600cc スーパースポーツと比較すると、748/749/848 は決してイージーに扱えるモデルではなかった。そのうえ、今回試乗する 899 パニガーレの開発ベースは、生半可な腕では潜在能力をフルに発揮することができない 1199 パニガーレである。となれば、気持ちのいいインプレを書くのは難しそうだなと思ったのだが……。

実際の 899 パニガーレは、ちょっと拍子抜けするくらい乗りやすいモデルだった。これなら日本製 600cc からの乗り換えでも違和感はほとんどないだろうし、親しみやすさという点では完全に 1199 パニガーレを上回っている。そう感じる一番の理由は、常用域で存分に感じられる瑞々しい接地感とトラクションだ。1199 でそれを得るためには、限りなくオーバースピードに近い勢いでコーナーに突っ込んだり、短い直線でもアクセルをワイドオープンにしたりと、ある種の思い切りが必要だったのだが、899 は乗り手が無理に頑張らなくても、必要にして十分な接地感とトラクションが得られる。そしてその感触は乗り手にとっての安心材料となり、それがあるからこそ徐々にペースを上げていけるのだ。

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899 パニガーレがこの乗り味を獲得できた背景には、前述した足まわりを中心とした車体各部の見直しがあるのだけれど、個人的には座面がフラットかつ滑りにくくなったシートも 899 の美点のひとつだと思っている。もちろん、この変更は足着き性という面では少々不利だが(899 のシート高は 1199 より5mm 高い 830mm)、899 の乗りやすさを体感すると、1199 の前下がりで滑りやすいシートが、いかにライディングを阻害していたかが理解できるのだ。

車体の話が長くなってしまったが、エンジンに関しても 899 パニガーレはなかなかの好印象である。ここ最近のドゥカティ各車は低中回転域のマナーが着実によくなっていて、一昔前のLツインエンジンの特徴だった、ギクシャク感や荒っぽさを感じる機会は少なくなっているものの、899 の場合は少ないどころか皆無と思えるほどで、この点でも日本車と大差ない感覚で扱えてしまう。改めて振り返ると既存のドゥカティ製スーパーバイクは、ここぞという場面では必ずシフトダウンを行っていたはずなのに、低中回転域の特性がフレキシブルな 899 は、ギアを固定したままでも不具合を感じない。もちろん、本当の意味でドゥカティらしいスポーツ性を堪能したいなら、エンジン回転数は 5,000rpm 以上をキープしておきたいところだが、それ以下の回転数を使っていても、899 には外した感が一切ないのだ。もしかするとその背景には、日本仕様のパワーが本国仕様より 30HP 少ないという事情があるのかもしれないが、今回の試乗で日本仕様の 118HP を非力と感じた場面は、ただの一度もなかった。

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シャシーとエンジンの両方で、予想をはるかに上回る楽しさを味わわせてくれた 899 パニガーレだが、気になる点がなかったわけではない。ドゥカティらしからぬと思えるほどもっさりしたタッチのフロントブレーキや、装着位置が後ろすぎるステップ、内股周辺に感じる熱気などは、今後の熟成時に改善を行ってほしい要素だ。とはいえ、899 がドゥカティ製スーパーバイク史上で、最も親しみやすい特性を持っていたのは事実であり、このバイクが示した方向性は、もしかすると今後の 1199 パニガーレの進化にも影響を及ぼすのではないかと、僕は感じたのだった。

プロフェッショナル・コメント

同じパニガーレという名前でも
899 は 1199 とはまったく別のマシン

899 パニガーレの登場は 1199 パニガーレオーナーであり、ドゥカティ業界 18年の私にとってとても興味があり、慣らし運転を完了した当店の試乗車にさっそく乗ってみました。ポジションにはほとんど違いはありません。しかし、乗り始めてみるとちょっとした違いにすぐ気が付きました。

1199 に比べて車体の反応がいいのです。荷重を右へ左へと軽くかけていくと 899 は自分の想像よりもクイックに反応しました。これはタイヤサイズからくるもので、1199 が 200/55 サイズ、899 は 180/60 サイズをチョイス。パワーで走る 1199 に対し、899 は反応のいいコーナリングマシンという感じです。走り始めてすぐにこのワクワクを感じ、最初のコーナーで荷重をイン側にかけて体重をそっとずらしてみると、地面を這うかのように安定しながら旋回していきます。ショーワ製の BPF (ビッグ・ピストン・フォーク)がよく機能していると感じました。ダンパー性能を大幅に向上させたこの新しいタイプのフロントフォークはドゥカティの硬いイメージを払拭し、初めてのライダーにもなじみやすく仕上がっています。旋回性と安定感はここから生まれているのです。

不安なくコーナーを抜け、直線に入ったのでスロットルを開け、DQS(ドゥカティ・クイック・シフト)を使いながら加速してみると、低中速はまったりとした感じでしたが、タコメーターを見るとあっという間に回転が上がり、パワーの出るゾーンへ突入していました。スロットルを開けてからの回転の上がり方は 1199 に比べて格段によく、エンジンにもクイックさを感じます。

今まで「1199 と比べて……」という表現を使ってきましたが、試乗を終えたときには “同じパニガーレという名前でも 1199 と 899 はまったく別のバイク” だと確信しました。899 は 1199 のスケールダウンではありません。ドゥカティが「1199 とは違う側面で製作した 899 という新しいバイク、むしろマシンという言い方が似合う」と、その “ニューマシン” を見ながら思いました。(ドゥカティ鈴鹿 ストアマネージャー 中村 睦さん)

取材協力
住所/三重県鈴鹿市住吉3-30-20

Tel/059-370-5528

営業/10:00~20:00

定休/月曜、第2・4火曜

スーパーバイク899パニガーレの詳細写真

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特徴的なフロントマスクも含めて、外装部品の構成は 1199 と共通。ヘッドライトバルブは一般的なハロゲン式だが、ウインカーとポジションランプには LED を採用。既存のドゥカティ製スーパーバイクと同様、ハンドルを切った際のガソリンタンク/カウルとのクリアランスは少なめ。
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生産性と販売価格を考慮した結果なのだろう、1199 ではアルミだったガソリンタンクは、899 ではスチールに変更。ただし形状と容量はまったく同じで、このガソリンタンクの底面はエアボックスのフタとしても機能している。
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1199 の操安性を難しく感じる一因だったシートは、座面をフラットに近づけるべく、ウレタンの厚さを変更。1199 と比較すると、前端部で+10mm、着座点で+5mm の設定になった。同時に表皮も滑りづらい素材に変更されているが、現状でもグリップが最高!……というわけではない。
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センターアップマフラーの廃止によって、すっきりした印象となったテールまわりの造形は 899 と 1199 に共通で、テールランプ/ウインカー/ナンバー灯は LED を採用している。なお 1199 では車両に付属していたシングルシートカバーは、899 では別売りとなった。
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899 に転用するにあたって、スーパークアドロエンジンはボア×ストロークを 112×60.8 → 100×57.2mm に変更。バルブサイズは IN:46.8/EX:38.2 → IN:38.2/EX:34mm に、スロットルボアは 67.5 → 62mm 相当に小径化された。シリンダーヘッドにはニ次エア導入機構を装備。
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1199/899 本来のマフラーは、リアタイヤ前部に2つの排気口を設けるショートタイプだが、厳しい排出ガス・騒音規制に対応するため、日本仕様はサードマフラーを採用。エンジン右側に見える騒音対策用の樹脂製カバーも、日本仕様独自の装備だ。
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フロントブレーキディスクは 1199 より 10mm 小さい 320mm で、キャリパーはブレンボ M4.32 を採用(1199 は M50)。ボッシュ製 ABS の介入度合いは任意で変更することが可能で、このシステムには後輪の浮き上がりを抑制するアンチリフト機能も備わっている。
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トップキャップに2つのダンパーアジャスターを装備する 43mm 倒立式フロントフォークは、ショーワが独自に開発した BPF(ビッグ・ピストン・フォーク)。すでに日本車やハーレーでは実績のあるパーツだが、ドゥカティが BPF を採用するのは 899 が初めて。
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トップブリッジ前部に横置きされるステアリングダンパーは、ドゥカティのベーシックモデルで採用例が多いザックス製(非調整式)。1199 のスタンダードも同じザックスだが、上級モデルのSやRではアジャスタブル式のオーリンズ製が標準装備となる。
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899 で良好なトラクションが得られる背景には、専用設計された両支持式スイングアームがある……ような気がするけれど、プレスリリースによると剛性バランスは、片持ち式の 1199 と同等のようだ。なお 899 のスイングアームは、1199 より軸間距離が 6mm 短い設定となっている。
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10本スポークのアルミ鋳造ホイールはニューデザイン。フロントの 3.50×17 というサイズは 1199 と同じだが、リアは1サイズダウンとなる 5.50×17 を採用している。リアブレーキはブレンボ2ピストン+245mm ディスク。
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プリロードと圧/伸び側ダンパーが調整できるリアショックはザックス製。1199 では走行状況に応じて、プログレッシブとフラットという2つの特性から選べたリアサスペンションのリンクは、899 ではプログレッシブのみの設定となっている。
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フロントブレーキ/クラッチのマスターシリンダーは、近年のドゥカティ製スーパーバイクシリーズで定番となっているブレンボラジアル。トップブリッジ下部にクランプされるセパレートハンドルは、外側をヒンジ構造としたクイックリリース式だ。
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1199 の構成を踏襲する左右ステップは、市販車では珍しいラジアルマウント式。左側のシフトロッドはスイングアームピボットプレートの内側を通る構成で、そのロッドの途中にはクイックシフター用のセンサーユニットが設置されている。
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1199 では TFT カラー液晶だったメーターは、899 ではシンプルなモノクロ液晶に変更。レイン/スポーツ/レースという3種のライディングモードが準備される点と、選択したモードでエンジン特性や ABS/トラクションコントロールの設定、エンジンブレーキの利きが変化する点は 1199 と同様。
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右側のスイッチボックスに設置されるのは、セルスターターボタンとキルスイッチのみ。キルスイッチは一般的なシーソー型ではなく、セルスターターボタンを覆い隠すようにして使用する。スロットルは電子制御式のライドバイワイヤ。
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パニガーレのメーターには、現在使用しているライディングモードに加えて、オド×2、トリップ、ラップタイム、水温、外気温、瞬間/平均燃費など、さまざまな情報が表示できるが、それらの設定や切り替えはすべて左側のスイッチボックスで行う。
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シートカウルは 899 と 1199 に共通だが、1199 でアルミダイキャストだったシートレールは、899 ではスチールパイプに変更されている。タンデムシート下部の収納スペースは必要最低限といった雰囲気で、赤い袋に収まる車載工具の点数も少なめ。

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