VIRGIN DUCATI | 2011DUCATI 現行モデル一気乗り・ハイパーモタード トピックス

2011DUCATI 現行モデル一気乗り・ハイパーモタード

  • 掲載日/2011年12月20日【トピックス】
  • 写真/Takao ISOBE、Takeshi YAMASHITA  文/Ryuji TOMONO
    本記事は、 『DUCATI BIKES』 Vol.08 (2011年5月発行)にて掲載されたものです

HYPER MOTARDインプレッション

ハイパーモタードの画像

ロードスポーツの速さをそのままに、ドゥカティがモタードを作ったら――。モトクロッサーのスタイリングを活かしたドゥカティがあったら――。ハイパーモタードは、テルブランチの想像力が生んだ、ドゥカティにしか作れないモタードである。

ドゥカティらしいモタードの形

2005年のミラノショーで発表されたハイパーモタード。時代はまさにモタード全盛であり、オフロードマシンの車体にオンロードタイヤを履かせ、アスファルトとダートが混在するクローズドコースを豪快にスライドさせながら走る姿に各国のモーターサイクルファンが魅了されていた。特に圧巻なのはアスファルト路面のストレート部分で後輪を大きく振り出しカウンターをあてながら深いバンク角を保ったままコーナーへとアプローチする進入ドリフトだ! 1999年にボリス・シャンボン選手が来日し筑波サーキットで驚異の走りを披露した頃から国内でもモタード人気が高まり始めた。筆者も筑波に居合わせ、その時に受けた衝撃的感動は今でも忘れられない。

各メーカーからロードタイヤを装着したモタードモデルが次々とリリースされたが、オフロードモデルをラインナップに揃えていないドゥカティは独自の回答を導き出し、それまでの流儀に沿ったものではなく、空冷Lツインエンジンを伝統のトレリスフレームで抱え込むドゥカティイズムを貫き通したのだ。モタードというネーミングこそ与えられているがオンロードに特化したモデルとなっており、シートがフラットで着座位置が高い点は他のモタードと共通するデザインであるが、少ないサスペンションストロークによって従来のモタードマシンが不得手とした高速域での操安性を手に入れた。このような生い立ちから他に類を見ない孤高の存在として今日まで君臨し続けている。

ハイパーモタードの画像

HYPERMOTARD 1100 EVO SPは、同シリーズの最上位モデルだ。1100 EVOをベースとしながら前後サスペンションやホイールなどを変更して、よりダイナミックな走行フィールを獲得している。それはハイパーモタードが本来的に持っている「オフロードマシンの“縦”の動きをオンロードマシンで実現する愉しさ」をさらに推進するものだ。つまり、単純に上位パーツを奢っただけではなく、操る歓びを感じるための装備を持っているのがSPモデルなのだ。

後方へ向かって直線的に切れ上がるエッジの効いたスタイルは捕食動物が獲物を狙い身構えているかのような迫力と躍動感がある。販売戦略上、幅広いユーザーから支持を得るために仕方なく残すもの、装備するものを一切捨て去り、走りとデザインを優先させた姿である。実車を前にすると座面の高いシートによる足つき性の悪さに不安を覚え、それだけで敬遠してしまうライダーも多いかと思われる。しかい車体がとにかく軽いので走り出してしまえば抱く不安は拭い去られるのだが、そうは言ってもやはり敷居が高いのは否めない。そこで2010年に登場したのが 796 である。803cc のエンジンを搭載し、車両重量は 10kg 以上軽量化され、シート高は 20mm 下げられ 825mm とされるなど、扱いやすさを前面に押し出した。だが決して1100モデルの廉価版ではなくエンジンのみならずフレームも完全なる新設計となり、ハイパーモタードでしか味わえない愉しさを継承しながらも気負わずに扱えるようになった。

この年は 1100cc モデルも大幅なリファインを受け 1100EVO、1100EVO SP と車名を変えて登場した。もともと軽量な車体からさらに5kg(EVO SPでは6kg)もの軽量化を果たし、冷却効率も高められた。そして新型となったデスモ・デュエ・エボルツィオーネエンジンは 90HP → 95HP へと 5HP高められ、最高出力発生回転数は 7,750rpm → 7,500rpm へと 250rpm 引き下げられるなどブラッシュアップされた。このエンジンの素晴らしさはただ出力が向上しただけでなく低回転域での粘り強さが増した点も見逃せない。

ハイパーモタードの画像

完成度の高いホットバージョン

そして今回試乗した 1100EVO SP はエクストリーマーたちの声と市場からの要望に応えるかたちで登場した特別なモデルである。スタンダードモデルとなる 1100EVO に対し30万円高の設定だが、オーリンズ製リアサスペンション・マルケジーニ製鍛造アルミホイール・ブレンボ製モノブロックキャリパーが奢られ、DDA(ドゥカティ・データ・アナライザー)も標準装備となっているので実は買い得モデルである。1100EVO と比較し 30mm、対796 では 50mm もの車高アップとなり、着座するだけでも高い跳び箱を跨ぐような気分だが、20mm 高められたハンドルとの相乗効果でアイポイントが高まり路面状況の把握がしやすく、走行中は安心感を得られる。そしてこのシート高は深いバンク角でイン側の足を前方へ突き出す時には丁度よく感じるのだ。リーンアウト気味なライディングスタイルでコーナーへ進入するとフロントタイヤの上に直接跨っているかのような感覚になる。小さな入力でも車体が機敏に反応するダイレクトな操縦性はハイパーモタード全車に共通するものだが EVO SP では着座位置が高いこともあり、まさに一瞬で大気を切り裂くかのような鋭いバンキングをみせ、S字の切り返しなどでは気を抜いていたらライダーの上半身が置き去りにされてしまうほどだ。

決して誤魔化しの効かないハンドリングだが、EVO SP だけに奢られた装備類が確実な操作を後押ししてくれる。モノブロックキャリパーが確実に速度を落とし、軽量ホイールが狙ったラインを外さず、リアサスペンションが確実に路面を捉え続ける。これほどまでにライダーに忠実なマシンはそう多くない。

詳細写真

ハイパーモタードの画像
17インチの前ホイールは、SPモデルではアルミ鍛造ホイールとなり、バネ下重量を軽減。タイヤもピレリ・ディアブロスーパーコルサSPとなる。ブレーキはブレンボ製モノブロックキャリパーをラジアルマウントする。
ハイパーモタードの画像
デスモデュエボルツィオーネエンジンは、1078ccの空冷Lツイン。クラッチ及びオルタネーターカバーがゴールドなのは SP の証。クラッチは乾式を採用し、切れのいいスタートとシフトチェンジを継承する。
ハイパーモタードの画像
モタードマシンとしては貴重なシングルサイドスイングアーム。ドゥカティとしては定番の手法だが、もちろんハイパーモタード専用設計で、高い剛性を持つスイングアームが装着されている。
ハイパーモタードの画像
リアサスペンションユニットはオーリンズ製フルアジャスタブルモノショックが装着される。796 と 1100EVO にはザックス製アジャスタブル。ストローク量は EVO の 141mm に対し、SP は 156mm となっている。
ハイパーモタードの画像
センターアップ2本出しとなるサイレンサーは、国内規制に対応するためエンドがやや長めなのが特徴。テールランプ上に装着されるテールエンドはグラブバーを兼ねており、意外だが使い勝手はなかなか良好だ。
ハイパーモタードの画像
コンパクトにまとまったデジタルメーター。そのため数字や文字表示はやや小さいが、視認性は良い。速度とタコメーターはもちろん時計や油温計や電圧計も備える。バックライトはホワイトに点灯する。
ハイパーモタードの画像
リアホイール径は 17インチで EVO、SP ともにデザインはともにY字10本スポークだが、SPモデルはアルミ鍛造ホイールとなる。またリムテープによる赤いラインが描かれるのも SP モデルの特徴のひとつだ。
ハイパーモタードの画像
テール周辺の保安部品はひとまとめになっていないにも関わらず、かといってバラけた印象も受けない、かなり計算されたデザイン。テルブランチがいかにこだわりを持ってデザインしたかを感じられる部分だ。
ハイパーモタードの画像
ハイパーモタードの顔つきは、ひと言でいうとムルティストラーダ同様に鳥系だ。とくにフロントフェンダーが醸す短めのクチバシ状のデザインが、このモデルのスタイルを特徴づけている。
ハイパーモタードの画像

ちょうどいいパワーの弟 796

今回試乗した 1100 EVO SP の他に、ハイパーモタードには 1100EVO と 796 がラインナップされる。とくに 796 はシャシーを 1100EVO と同一としながらも扱いやすい 803cc 空冷Lツインを搭載しており、街乗りやちょっとしたツーリングにはちょうどいいパワー&トルクを発生する。もうひとつの大きな違いが湿式クラッチの採用で、APTC製スリッパークラッチも装備する。とくに国産メーカー製バイクに慣れたライダーにとっては親しみやすい特徴となっており、エンジン特性とあいまってビギナーにも気兼ねなく乗れるモデルとなっている。そのためある意味ではドゥカティらしさが薄まってはいるが、空冷Lツインの鼓動感と躍動感はしっかりと継承し、ドゥカティの間口を広げる役割を担っている。

HYPER MOTARD 編集部コメント

テクニックが必要かな

アップハンだからといってノホホンと乗ったりすると慌てることになる。ロードスポーツとは違った意味で乗りこなすにはテクニックが必要なのだ。シートが高く、突っ立った姿勢の独特のポジションだから、加速するとき上体を意識的に前傾にする。バンクさせる時は大きなハンドルに不必要な力を入れないよう丁寧な操作が必要。それができればこのマシンは面白いのだが、できないとオッカナビックリ走ることになってしまう。(フリーライター 後藤 武)

走っていると振り向きます

そこにあるだけで満足してしまうカッコよさ。乗ってみると「これで大丈夫?」と、人に訊ねたくなるオッタチポジション。このギャップがたまらない一台。街中でガンガン走りたくなるけど、そういった使い方なら 796 の方がパワー的にあっているかも。足を前に出して、ふかーいバンク角でカッコよく交差点をパスすれば「ヒューヒューだよ」って可愛い女の子が言ってくれるかどうかは分かりませんが、私は間違いなく振り向きます。(DUCATI BIKES 元編集長 小松 男)

癖がわかれば病みつき

軽量軽快な「モタード車」のイメージを抱いて乗ってしまうと、何か違うぞ? と思ってしまう。重量感があるというか、フワフワしていないというか。ちゃんとしたロードスポーツバイク。それは扱いにくさではなくて、挙動がわかりやすくておもしろい。でもちょっと油断するとすぐ拗ねる子供のよう、でもある。素直で純真なのかなぁ。癖がわかれば結構楽しめるかも。でもわたしはやじろべえみたいなミラーを替えたいな。(フリーライター TOMO)

ドリフトできたらなあ

年ごとに扱いやすくなってるところがチャーミング(かといってヤワになってない)。リアタイヤをスライドさせて走れるくらいのテクニックがあったらもっと楽しいんだろうけど、そんなことできなくてもトガッたところを感じられるし、空冷エンジンのキレのいい爆発感も心地いい。これは 796 よりも排気量のある 1100 のほうがより強く感じられる。カッコいいけどスリ抜け厳禁なミラーはやっぱりアレだなあ。電動格納機能がほしい。(DUCATI BIKES 元編集部員 山下 剛)

大型モタードマシン完成

“モタード風”ロードバイクから大型モタードマシンになった、という印象を受けた。跨った際のハンドル、シート、ステップ位置がよりオフロードバイクに近く、ロングストロークのサスペンションに小径ホイールを装着したアンバランスな感じ、やっぱコレがいい。スタイリングの格好良さに加えて余裕の大排気量、その気になればショートトラックでスポーツを楽しめる。個人的に今回の試乗モデルの中ではベストモデルだ。(VIRGIN DUCATI.com 編集部 田中 善介)

TOMOのタンデムインプレッション

ハイパーモタードの画像

ライダーとフラットに繋がるシートは密着度が高い。重心も低めに抑えられるから、タンデムビギナーの不安も半減。そのかわり前方はちょっと見にくいから信頼度でカバーを。グラブバーはやや持ちにくいけど、座り心地が良くて身体を支えやすいからまずまず。加速時のバックプレッシャーを強く感じるから、そこは注意かな。

プロフィール
友野 龍二
空冷モンスターやスーパーバイクなどを操り、イベントレースで常勝を誇ったドゥカティ・マスター。各地のサーキットで獲得した様々なタイトルと塗り替えた数々のコースレコードを認められ、2009年に国際A級に特別昇格。MFJ公認インストラクターであり 『DUCATI BIKES』 誌メイン・インプレッション・ライダーでもある。

注目のアイテムはコチラ