第1回「10,000kmの中で知った1098Sの信頼性」
- 掲載日/2011年02月09日【1098Sエンジン完全分解】
- 文/Keita Kasai 写真/Yasushi Takakura 取材協力/パワーハウスモータークラブ
まさに納車の瞬間。スチール製の枠に納められたこんな姿でドゥカティ川崎に到着。データログ機能を持つDDAの設定にはやや手間取った。
パーツも無交換で10,000km走行
このたび分解するエンジンは、二輪専門誌『クラブマン』誌上にてかつて連載していた「10,000kmテスト」の題材、DUCATI 1098S(07年モデル)に搭載されていた水冷Lツイン(テスタストレッタエボルツィオーネ)だ。このテストにおいては市街地走行からサーキット走行まであらゆるステージを駆け抜け、半年ほどの期間で10,000kmを走り切った。そのエンジンの耐久性がどうなっているのかを探るのが、この企画のテーマだ。
エンジン分解に入る前に、まずはどのような条件の下に10,000kmテストを行ったかを簡単に説明しよう。
このテストでは消耗パーツまでを含めての耐久性も実証するため、限界に達していないと思われるパーツはメーカーの規定する交換時期までは換えない、という方針で行った(もちろん定期点検は行う)。
トップグレードであり、常に最良のパフォーマンスを発生させたい、と考えるオーナーが多いスーパーバイクだけに、これは一般的な1098Sの置かれた条件よりも厳しいはずだ。具体的に記すと、プラグやエアフィルター、さらにはタイヤまでも交換しないまま10,000kmを走ったのだ。
ドゥカティの最新スーパーバイクは想像した以上に乗りやすく、長距離も走れる一面と、逆にパフォーマンスが高すぎるためその実力を引き出す難しさもあった。当初は硬く感じた足まわりは、最初はかなりソフトにセッティングした。
オイルとフィルターは交換した
ただし例外はオイルとオイルフィルターで、慣らし終了後の1,000km時に交換し、ストレーナーを清掃した後はそれぞれ3,000kmで交換している。メーカーの交換推奨時期は12ヶ月、または10,000kmと指定されているパーツだが、この国においてはどこに行くにも街中の渋滞からスタートし、また短距離での走行も多かったため、ドゥカティ川崎のアドバイスに従って3,000km毎の交換としたのだ。使用したオイルは純正指定のシェルアドバンス・ウルトラ4。粘度は2種類あるが、テスト時期が夏に重なったため、粘度の高い15W-50を選んだ。
オイルに関しては交換毎に昭和シェルの研究所で使用後のオイルの分析を行ったが、3,000kmでは問題になるような結果は見られなかった。
最終的に交換したのは転倒時に折れたレバーや曲がったハンドルなど、イレギュラーなパーツだけ。それ以外は半年の間、数回受けた点検でも異常箇所は見つからなかった。しかも体感できるようなパワーダウンや性能の低下は、ひとことで言って皆無。レーサー並みのメンテナンスをしないと性能を維持できない……といった昔のスーパーバイクのイメージは完全に消し飛んでしまった。
岡山国際サーキットで開催されたドゥカティ・カップで併催されたタイムアタックのイベント『ドゥカティ・チャレンジ』には、東京から往復1,422kmを走って参加。やはりサーキットでこそ1098Sの真価が発揮された。
そして証明された信頼性
もちろん、だからといってこのテストのように「乗りっぱなし」は勧められない。使用距離が10,000kmを過ぎるとクラッチフルードは黒ずみ、クラッチのフリクションディスクやエアフィルターも限界に近い。現状では良くても、本来の設計上の性能を発揮できる状態にはないし、エンジン内部など、他の、もっと重要なパートにしわ寄せが行ってしまうはず。
さらにタイヤにいたっては、標準装備のブリヂストン・バトラックス002ストリートがサーキット走行を経たこともあって、完全に使用限界を超えていたのだから。
けれど、このタフネスさは見上げたもの。ドゥカティの本気を見た、という感想につきる。真夏にライダーは暑くてもオーバーヒートを起こさなかったのも驚きだ。スーパーバイク=神経質、という図式はもう過去のものなのだ。イージーに乗るべき車種ではないが、耐久性に不安を抱えるようなモデルでもないのだ。
ということで、まずは分解前のエンジンがどのように動いていたかをダイジェストでお伝えした。次回では、古くから日本のドゥカティスタたちから厚い信頼を得ているショップ『パワーハウスモータークラブ』代表・中野鉄雄さんから聞いた「ドゥカティの整備のツボ」をお届けしよう。
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