VIRGIN DUCATI | 【ドゥカティ 新型ハイパーモタードV2 海外試乗記】 新次元の自由を解き放つ“超過激”マシン 試乗インプレッション

【ドゥカティ 新型ハイパーモタードV2 海外試乗記】 新次元の自由を解き放つ“超過激”マシン

  • 掲載日/2026年05月08日【試乗インプレッション】
  • 取材協力・写真/ドゥカティ ジャパン  取材・文/佐川 健太郎
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DUCATI Hypermotard V2
新型「ハイパーモタードV2」国際メディア試乗会がドゥカティ本社のあるボローニャで開催。モデナ・サーキットでの試乗を通して見えてきた新型マシンの本質をケニー佐川が紐解く。

ハイパーモタードV2 特徴

なぜ「スーパー」ではなく
「ハイパー」なのか?

かつて90年代に「スーパーモタード」レースが世界的なブームになった時期があった。軽量で機敏なモトクロッサーに前後17インチのオンロードタイヤを履かせたマシンが、スライドしながらコーナーに進入し、ウィリーしながら立ち上がっていく豪快な走りに若者達が熱狂した。

日本でも一時期、海外の有名ライダーを招いて国内トップライダーと対戦させるなど熱い時期があり、その人気を受けて国内外メーカーでも一斉にモタードの名が付いた公道モデルを発売。競技としても新たなカテゴリーとして、全日本スーパーモト選手権へとつながっていった。

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前置きが長くなったが、ドゥカティの場合は「ハイパーモタード」の名が付く。実はそのネーミングにこのマシンを読み解くカギがある。ハイパー(Hyper)とは「通常をはるかに超えた」という意味で、スーパーより上のいわば“超過激”を表す語感。通常のモタード系マシンは単気筒のオフ車ベースであるのに対し、ハイパーモタードは2007年に登場した初代から、ドゥカティ十八番のデスモドロミックLツインを搭載。世代を重ねて空冷2バルブから水冷4バルブの最新エンジンへと進化してきた。

一見するとクチバシや足長のモタード風スタイルが与えられているが、その実は「モンスター」や「ストリートファイター」の近縁。つまり、アスファルトで思い切り走りを楽しむための、生粋のスポーツバイクなのだ。

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驚異の軽量化と、
新世代V2エンジンの咆哮

初代コンセプトモデルの発表から20年の節目となる今年、ドゥカティの「ハイパーモタード」シリーズは大きな転換点を迎えた。新たに登場した「ハイパーモタードV2」は、これまでの伝統を打ち破り、最新の設計思想を注入した野心作である。

新型V2の進化は主に3つ。まずエンジンが完全新設計となった。パニガーレV2にも採用された新型の890cc 90°V型2気筒エンジンを搭載。これはドゥカティの代名詞であったデスモドロミックを排し、耐久性に勝るバルブスプリング方式を採用したもので、ドゥカティに詳しい人ならお気付きかと思うが、エンジンユニット自体は新型モンスターと同じだ。これにより、エンジン単体で先代950の937ccテスタストレッタから約9kgもの軽量化を達成。最高出力はハイパーモタード史上最強の120ps / 10,750rpmを誇り、IVT(可変吸気バルブ)により幅広い回転域で洗練された出力特性を発揮する。

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二つめは車体構成の劇的な進化だ。鋼管トレリスフレームに代わり、パニガーレシリーズの流れを汲むアルミ製モノコックフレームを採用。スイングアームも新設計のアルミ製両持ちタイプ(従来は片持ち)となり、剛性バランスの最適化と軽量化を徹底。車重も先代と比較して約13kg(上級仕様のSPはさらにマイナス3kg)もの軽量化を実現している。結果として、SPの車重はわずか177kgという、400ccクラスに匹敵する軽さを手に入れた。

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三つめが先進の電子制御パッケージだ。「6軸IMU」を核とした電子制御による車体コントロールは一段と深化し、4種類のライディングモードの他、注目の「スライド・バイ・ブレーキ」が採用された。これは2024年に投入されたドゥカティ初の単気筒モタード「ハイパーモタード698モノ」に初搭載された機能で、コーナー進入でのリアのドリフトを許容・制御するモタード専用ABS機能である。これ以外にコーナリングABSやトラコン、ウィリーコントロールやEBC、クイックシフターなど一連の電制パッケージを標準装備する。

ハイパーモタードV2 試乗インプレッション

スムーズだからこそ
存分にパワーを使い切れる

サイドスタンドを払ったその瞬間から、“軽さ”の虜になる。170kg台まで削ぎ落とされた体躯は大型バイクのそれではない。跨れば880mmという高い視界が広がるが、スリムに絞り込まれたシートが不安を即座に打ち消してくれる。

新型ハイパーモタードV2。それは、ドゥカティが伝統という名の装束――デスモドロミックやトレリスフレーム――を脱ぎ捨て、たった一つの純粋な目的のために研ぎ澄ませた、鋭利な刃(やいば)である。ハイパーモタード史上、最も強力で軽いLツインを得たV2。かつてのデスモ特有の荒々しさは、極めて緻密な回転フィーリングへと昇華された。しかし、スロットルを開ければ、そこには紛れもない「ボローニャの血」が流れていることに気づく。

4,000rpmという低回転域から最大トルクの8割を解き放つ設定は、コーナーの立ち上がりでアスファルトを力強く蹴り出し、フロントを軽々と宙へと誘う。高回転域まで淀みなく突き抜ける吹け上がりと、弾けるような排気音。振動を抑え込み、快感だけを抽出した新型エンジンだ。従来の950のような荒々しい鼓動ではなくなったが、一方でスムーズすぎるほどの回転フィールのおかげでパワーを存分に使い切れる。変な話、速さをあまり感じないが、実際には速い。テクニカルなモデナの短いストレートでもメーター読みで200km/hを軽く超えていた。

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視線を向けただけで
イン側へと吸い込まれる

特に今回試乗車した、オーリンズ製サスペンションと鍛造ホイールを備えたSP仕様は、非常にニュートラルかつ正確なハンドリングで、路面の微細な表情をまるで指先でなぞるかのようにクリアに伝えてくる。そして、倒し込みではイン側に切れ込みすぎるほど俊敏だ。前後150mm/160mmのストロークを持つ、強靭で長い足を沈めて溜めたエネルギーをディアブロ・ロッソⅣコルサが確実に路面に伝えてくれる。

さらにドゥカティ・パフォーマンスのアクラポビッチ製マフラーでさらに軽くパワフルに。今回はサーキット試乗だけだったが、これなら、ワインディングでもライバルを圧倒する運動性能を見せつけるはずだ。

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また、アルミ製モノコックフレームへの転換は単なるスペックアップにとどまらない、異次元のハンドリングをもたらしている。視線を向けただけで、フロントからインへ吸い込まれる感覚。ワイドなハンドルバーも奏功して、軽く入力を加えるだけで900cc近いとは思えない俊敏さで深いバンクへと移行する。まるで400ccクラスのような軽快な手応えだ。

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自分の腕が上がったと
錯覚する至福の時間

そして、ライダーの感情を揺さぶるのは電子制御の傑作ともいえる「スライド・バイ・ブレーキ」だ。かつては選ばれしプロ級のテクを要した「進入スライド」が一般ライダーの手にも届くところまで降りてきたのだ。

進入時にブレーキペダルを蹴り込めば、ABSが滑り加減を緻密にコントロールしつつ、滑らかなテールスライドに導いてくれる。ただし、相応の進入速度とともに、車体を大胆に寝かせていける度胸が必要だ。残念ながら自分にはそこまでの技量も肝っ玉もなく、コーナー入口で少しだけ後輪がヌルヌルする程度だったが、その先には悦楽に満ちた世界が広がる感覚は残った。

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ちなみに5インチTFTディスプレイも直感的に操作しやすく、慣れればライドモードを切り替えながら走ることも難しくなかった。それと、自分でも意外なほど疲れなかったこと。15分×5本のテスト走行に加え、撮影も含めて丸一日サーキットを全力走行したが、まだまだ走れる感じだった。軽さと扱いやすさによって体力が温存でき、結果として楽しめる時間が増えるということだ。一点だけ気になったのはステップ位置がやや低めで、SP仕様でサーキットを攻め込んでいくと、もう少しバンク角が欲しいと思った。

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まとめると、進化した電制と大幅に軽量化された車体にトルクフルで扱いやすい最新V2エンジンが、ライダーに「自分の腕が上がった」という至福の錯覚を与えてくれる。そこにあるのは、足つき性や積載性といった実用的な価値観ではなく、「バイクはもっと自由でカッコ良く、感動的であるべきだ」という思想。新時代のハイパーモタードに対しドゥカティの出した回答はあまりに明快だった。

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ロングツーリング向きのモデルではないかもしれないが、たった1時間のスポーツライドでどれだけ魂を震わせ、全身で高揚感を味わえるか……。新型ハイパーモタードV2がもたらすのは、あらゆるコーナーを歓喜へと変える魔法。それは単なる進化ではない。私たちがバイクを愛する理由そのものの「再定義」なのである。

ハイパーモタードV2 詳細写真

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モタードスタイルを象徴するビーク(クチバシ)を持つシャープな顔立ち。ヘッドライトを含む灯火類はフルLEDで、両サイドに埋め込まれたDRLとともに一体型のピースとして構成されている。
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パニガーレV2譲りの水冷LツインDOHC4バルブ889ccエンジンを搭載。ドゥカティ史上最軽量の2気筒エンジン(54.5kg)は、ハイパーモタード史上最強の120ps/10,750rpm、最大トルク94Nm/8,250rpmを発生。IVT(可変吸気バルブ)を搭載し4,000rpm~11,000rpmのワイドレンジで最大トルクの80%を発揮する。
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表からは見えないメインフレームはパニガーレV2譲りのアルミ製モノコック構造。シートレールを兼ねた赤いサブフレームは初代を思わせるドゥカティ伝統のトレリスタイプに戻った。サイドパネルからシート側面へと続くテクスチャーは滑り止め効果を狙ったデザイン。
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写真はSP用のシートで、高級感とホールド性に優れるスポーティな作りだ。シート高は880mmで従来型と同じだが、形状がよりスリムになり、跨りでの足つき性は向上している。オプションのローシートで865mm、さらにローサスペンションで850mmまで下げられる。
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初代ハイパーモタードを思わせる2本出しアップタイプサイレンサーを採用。先代950よりも左右の間隔を広げ、サイレンサー形状も迫力ある多角形デザインへ。テールランプも刷新され、急制動時に点滅して後方へ危険を知らせるEVOタイプのブレーキライト機能へ進化。
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標準仕様のサスペンションは前後KYB製、写真のSPは前後オーリンズ製でフロントにφ48NIX30倒立フォークを装備。ブレーキも標準はφ320mmダブルディスク+ブレンボ製M4.32に対し、SPは専用マスター付きM50キャリパーで強化する。ステアリングダンパーはザックス製。
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写真のSPはリア側にもオーリンズ製STX46を採用。軽量アルミダイキャスト製の両持ち式スイングアームの左側にリンクレスでマウントする方式は、パニガーレV2や新型モンスター同様。軽量化とサスセッティングの自由度向上を両立している。
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新世代パニガーレV4から採用され始めた両持ち式スイングアームは、軽量かつ剛性バランスとトラクション性能に優れる利点があると言われる。リアブレーキもブレンボ製。ホイールは写真のSPはアルミ鍛造製でノーマルに比べて前後1.56kg軽量化。
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ドゥカティ・クイック・シフト2.0を標準装備。シフトリンケージのスイッチを廃止しECU側で制御することで、より正確でスムーズに電光石火のシフトチェンジを可能にしている。
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独特の形状をした調整機能付きのブレーキレバーとブレンボ製ラジアルマスターシリンダーがリニアで繊細なブレーキタッチを実現。オプションでグリップヒーターやクルーズコントロールなどの快適装備も追加できる。
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新型の5インチTFTディスプレイを採用。4種類のライディングモード(レース、スポーツ、ロード、ウェット)を通じて、コーナリングABS、トラクションコントロール、ウィリーコントロール、EBCなどの設定が可能だ。
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表示モードを切り替えることでリアルタイムに電制の介入度を確認、変更もできる。モードの切り替えや決定はハンドルバー左側に統合されたジョイスティックによって操作可能。慣れればサーキット走行中でも直感的に操作できた。

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