【ドゥカティ Xディアベル V4 試乗記】 美しきスポーツクルーザーは、 異次元的加速を極める!!
- 掲載日/2026年06月08日【試乗インプレッション】
- 取材・文・写真/小松 男


ディアベルから派生した
超高性能スポーツクルーザー
今から15年前の2011年に、ドゥカティ・ディアベルの国内デリバリーが始まった。
当時ドゥカティ専門誌を手掛けていたこともあり、その頃のことをよく覚えているのだが、世の中的には「ドゥカティがクルーザータイプのモデルを出す? そんな馬鹿な」というような反応も少なくなかった。しかしふたを開けてみると、それはまさしくドゥカティの名に恥じることのないスーパースポーツモデルそのもの。圧倒的な加速力、しっかりと仕事をする足まわり、極太リアタイヤでありながら、どこまでも寝かせたくなる車体。それまで地球上に無かったものが突如として生み出された。そう思わざるを得なかった。
実際のところ、ディアベルはクルーザーのように見えて、スポーツネイキッド的なキャラクターで纏められていた。それは現行モデルにあたるディアベルV4まで続いている。

2016年にディアベルとはあえて分けた格好で登場したXディアベルこそが、ドゥカティのクルーザーモデルと言って違いはない。
ディアベルの開発によって実現していたロー&ロングスタイルを、さらに助長するようなスタイリング構成、ステップ位置をフォワードコントロールとすることで、より一層リラックスしたライディングポジションをもたらすなど、本格的なクルーザーモデルへと昇華したのである。
ただ、その根底にあるのはドゥカティイズムである。もちろん高い運動性能を誇り、エキサイティングな走りをもたらす。

そして2025年、そのXディアベルは大きな転換点を迎える。
従来のLツインに代わり、1158ccのV4 Granturismoエンジンを搭載。最高出力168ps、最大トルク126Nmを発生し、0-100km/h加速はわずか3秒未満(!!)という驚異的なパフォーマンスを獲得した。
美しく伸びやかなスタイリングと快適なクルージング性能。そしてドゥカティらしい圧倒的なパフォーマンス。その相反する要素を、新型XディアベルV4はどのようにまとめ上げたのだろうか。

Xディアベル V4 特徴
ドゥカティの魅力を損なわず
スポーツクルーザーを生み出した手腕
先述したように初代ディアベルはクルーザーのようなスタイリングを持ちながらも、その中身を探ってゆくとスポーツネイキッド的な本質が秘められている一台だった。
そのような中ドゥカティは「本当にクルーザーとして成立するモデルを生み出すことはできないだろうか」という開発テーマに挑戦することになり、そして2016に誕生したのがXディアベルである。
開発時にデザインセンターへ与えられた条件は非常に明確だった。
・ロー&ロングシルエット
・フォワードコントロール
・クルーザーの世界観
・しかし100%ドゥカティ
というものだった。
デザイン責任者アンドレア・フェラレージは、このモデルを「Technocruiser(テクノクルーザー)」と表現している。
つまりアメリカンクルーザーの文法を取り入れながら、ドゥカティらしい先進技術とスーパーバイクの性能を融合することが目標だったのである。

ドゥカティ史上初となるフォワードコントロールは、足を前に投げ出すポジションでありながらも、シート形状などとのバランスを高めコントロール性を確保。そしてディアベルから受け継いだ240/45ZR17という大迫力のリアタイヤを組み合わせる。
ディアベルとXディアベルは一見すると近しい存在に見える。しかし実際には、その成り立ちも乗り味も大きく異なるモデルである。スポーツネイキッド的な性格を色濃く残すディアベルに対し、Xディアベルはよりクルーザーとしての世界観を追求。その結果、それぞれに熱心なファンを獲得することとなった。

そして2025年、そのXディアベルは大きな進化を遂げる。
従来の1262ccテスタストレッタDVT Lツインに代わり、1158cc V4 Granturismoエンジンを搭載。最高出力は168psへと向上し、キャラクターも大きく変化した。低回転域での扱いやすさを維持しながら、高回転域ではスーパーバイクを思わせる鋭い吹け上がりを実現している。
さらに新型アルミモノコックフレームや新設計スイングアームを採用するなど、車体各部も全面刷新。快適なクルージング性能とハイパフォーマンスをこれまで以上に高い次元で融合させた、まさに新時代のスポーツクルーザーへと進化を遂げたのである。
それでは実際に走らせながら、XディアベルV4の感触を探っていこう。
Xディアベル V4 試乗インプレッション
唯一無二。普段は涼しい顔を見せつつ
中身は獰猛そのもの、そこに真意がある
昨年の発表時に開催されたプレスローンチで見たXディアベルV4は、実を言うとインドア会場であったこともあり、サイズ感がピンとこなかったことを覚えている。今回改めてインプレション記事制作のためにXディアベルV4をストリートに持ち出すと、際立って低く、長い独特なプロポーションが目の前に映し出された。
様々なメーカーのクルーザーに接する機会があるが、その中でも一層輪をかけてロー&ロングを意識したデザインであることが伝わってくる。
跨る前に実車を起こして取り廻してみたのだが、これがかなり軽く感じられた。あとからスペックシートを見てみると、旧型より大幅な軽量化が図られていることが分かった。
これは大柄な車格を持つクルーザーとしては大きなメリットとなっており、770mmと低く抑えられ足つき性も良好なシートと共に、誰でも気負うことなく接することができるポイントとなっている。

セルスターターボタンを押しエンジンに火を入れ、ギアを1速に落として走り出す。アメリカンクルーザータイプのモデルを初めて操縦する際、この発進時に気を遣うことが多いのだが、クラッチレバーをスッとつなぐと、瞬く間にシャキッと立ち上がって走り出す。扱いやすくスポーティ、こういった点にドゥカティらしさを感じるのは、私だけではないだろう。
前方に足を投げ出すフォワードコントロールステップとライダー側に大きく引き寄せられたハンドルによって、ライディングポジションは安楽そのもの。しかも今回見直されたシート形状も秀逸であり、腰をしっかりと落ち着かせて走らせることができる。
ハンドリングに関しては、クルーザーモデルのそれであり、旋回中にスロットルを開けると穏やかに外側へ膨らもうとするが、しっかりとステップ加重を行い、積極的にハンドル入力も行うことで、ワインディングロードでも驚くほどスポーティに走らせることができてしまう。
扱いなれてくるとフルロックでのUターンなども怖くなくできるようになってくるので、そうするとコーナーをパスする感覚が楽しくて仕方ない。つい、ワインディングロードを何往復もしてしまったことはここだけの話である。

そして核心ともいえるMotoGP由来の技術を投入したV4 Granturismoエンジンは、強力そのものであり、アイドリング回転数+αで事足りるトルクが持たされている。それにV2エンジン時代と比べても、格段にスムーズに感じられ、こういっては何だが、小手先で、快適に交通をリードすることができてしまう。
ストリートであれば5000rpmも使えば十分だ。豊かなトルクによって、信号発進から追い越しまで何一つ不足を感じない。高速道路に持ち込んでも、6000〜7000rpmまで回せば一般的なライダーであれば思わずアクセルを戻したくなるほどの加速を味わえる。

しかし、それはまだXディアベルV4の序章に過ぎない。
真価が姿を現すのは9000rpmを超えてからだ。
そこから先はクルーザーというカテゴリーでは説明できない世界。速度の上昇とともに景色が圧縮され、それまで余裕を持っていた景色が一気に迫ってくる。
伸びやかなV4サウンドとともにマシンはさらに前へ前へと加速を続ける。
そしてライダーを置き去りにしかねないほど獰猛でありながら、不思議なほど破綻する気配はない。

そして無意識のうちに恩恵を受けているのが、MotoGPマシン譲りとなるカウンター・ローテーティング・クランクシャフトだ。理屈としてはホイールのジャイロ効果を打ち消す技術なのだが、ライダーが感じるのは数字ではない。これだけロー&ロングな車体でありながら、思いのほか素直に向きを変え、強烈な加速を見せながらも安心感がある。その自然な乗り味の裏側には、こうした最新技術がしっかりと息づいているのである。
純粋に走らせるだけで楽しいものだから、ついつい走行面の話ばかり書いてしまうが(それもドゥカティの魅力だが)、XディアベルV4はそこにおいてあるだけで、見る者の心を惹きつけ、ストリートを流せば皆が振り返る。ただ単に美しいという言葉だけで表現することができない吸引力があるのだ。

これだけ刺激的な走りを見せながら、街中では扱いやすく、取り回しも想像以上に軽快。タンデム性能も十分に高く、ファッションを選ばず付き合える懐の深さも持っている。
クルーザーとして乗ってもいい。ワインディングを楽しんでもいい。ただ眺めているだけでも満足できる。
XディアベルV4は、スポーツバイクでもクルーザーでもない。そのどちらでもあり、そのどちらでもない唯一無二の存在なのである。
Xディアベル V4 詳細写真












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