ドゥカティのディアベルV4を試乗インプレッション! スマートマッチョなセクシーゴリラに魅かれる
- 掲載日/2023年09月01日【試乗インプレッション】
- 取材・文・写真/小松 男
これはクルーザーにあらず、
さらなる高みを目指しV4へ
イタリアを代表するスポーツモーターサイクルブランドの一つであるドゥカティ。近年のMotoGP、WSBKでの向かうところ敵無し的な活躍ぶりは、もはや説明不要といったところである。そのドゥカティの中でも異端視されてきたスーパークルーザーモデルがディアベルだ。
ホイールベースの長いローアンドロングなボディラインに240サイズの超ワイドなリアタイヤ、深く腰を下ろせるリラックスしたライディングポジションなどで、クルーザーライクなモデルに思われがちではあるが、そこはドゥカティである。スーパーバイク直系のエンジンを搭載し、入念に仕立て上げられた足まわりにより、ダイナミックな走りを楽しめるスーパークルーザーとして愛されてきた。
初代ディアベルが登場したのは2010年(発売は2011年)のことなので、もう10年以上となるロングセラーモデルでもある。これまでにディアベルカーボンやXディアベルなど派生モデルを輩出しながら進化を続け、この度完全フルモデルチェンジが図られたのだ。ついにV4エンジンが採用されただけでなく、トラスフレームも撤廃。内容的に別物として生まれ変わった新ディアベルV4をテストする。
ドゥカティ ディアベルV4の特徴
登場から10年以上を経たいま
大革命的なモデルチェンジを受ける
2011年春。当時私はドゥカティ専門誌である『ドゥカティ・バイクス』を手掛けており、その後編集部を離れる前の最後に登場したニューカマーがディアベルだった。日本に上陸したばかりの車両をお借りし、初めて触れた時の興奮を今でも鮮明に覚えている。今と同じく厚木にあるドゥカティのファクトリーから都内の編集部までの道のりだけでも、強烈なパワーと驚くほどのスポーティな仕上がりに感動し、これぞドゥカティ、唯一無二の存在が生まれた! と心が躍ったものだ。そしてこの初代ディアベルは世界中のモーターサイクリストに受け入れられた。
クルーザー志向を高めた派生モデル的な存在となったXディアベルや、エンジンの排気量を引き上げつつ全体的なモデルチェンジが行われ2世代目とされるディアベル1260と、より一層洗練されて今日までその系譜を繋げてきたディアベルが、ついにすべてが刷新された次世代モデル、ディアベルV4のデビューを果たしたのだ。
これまでアイデンティティの一つとなっていたトレリスフレームをやめモノコックフレームを採用。ドゥカティのラインアップではパニガーレ、ストリートファイター、ムルティストラーダと年々V4エンジンモデルが増加中であり、ディアベルのV4モデル化も必然的なものだったと捉えてはいる。しかもムルティストラーダV4で好評を博したV4グランツーリスモエンジンなのでなおさらである。それと付け加えておきたいのは、従来モデルよりも13kgもの軽量化に成功しているところだ。エンジン、フレームが変更されたうえに10kg以上も軽い。私はワクワクしながらテスト車両を引き上げに向かった。
ドゥカティ ディアベルV4の試乗インプレッション
これ一台ですべてを賄うか
ストリート用のセカンドとするか
生まれて初めてディアベルに乗った2011年と同じく、厚木のファクトリーでディアベルV4と対面をした。東京・虎ノ門ヒルズで行われたローンチイベントに参加した際に実車を見ていたし、もっと言えばJAIA(輸入車協会)の合同試乗会で小一時間程走らせたこともあった。見るたびに筋肉質でありながらセクシーなボディラインにノックアウトされるし、四本出しのマフラーエンドやシートカウル下にインサートされたブレーキランプにも心を奪われる。さらに今回新鮮に目に映ったのは、ドゥカティV4のイメージモデルがブラックカラーの方で、今回借用したのがレッドカラーだったからということもある。やはりドゥカティはレッドが良く似合うのだ。
エンジンを始動し走り出す。ドゥカティは早くからクイックシフター機能を取り入れており、その一日の長もあって、シフトアップダウンともにスムーズに決まる。ファクトリーから数キロのところにある東名厚木インターチェンジから高速道路に乗り都内を目指す。このルートを走ったことがある方ならイメージできると思うが、まずインターチェンジに入る手前と、ゲートをくぐってからの2か所に、ほぼ一周の大きなカーブが待ち受けている。走り出したばかりでタイヤが温まっていないので、慎重にコーナーをパスするのだが、相変わらず240サイズのリアタイヤを履いているとは思えないほど良く曲がることに驚かされる。気を付けないとステップの先を擦りそうなほど、安心感を受けながらバンクさせることができる。
メインレーンに入ったらディアベルV4ワールド全開である。特に海老名サービスエリアから先の4車線区間では、追い越し車線を使って怒涛の加速感を味わえる。以前のLツインエンジンのはち切れるようなフィーリングも好きだったが、V4特有の濃密かつ恐怖さえ覚えるようなトルクも素晴らしい。168馬力のフルパワーを発生させるスポーツモードでうっかり気を抜いてスロットルを開くと、腕が抜けて振り落とされそうになる。それほど強烈なエンジン特性なのである。
ストリートに持ち込むと気難しさも見え隠れした。それは猛烈とも言えるほど気温の高い日が続いた今年の夏だったからかもしれないが、渋滞中の市街地でクルマの速度に合わせて走らせていると、水温計は105度以上を指し、スロットルワークに対して若干ナーバスな面も感じられたのだ。極太リアタイヤは当たり前のように轍の影響を受けるため、のろのろ走行では神経を使う。もちろん操っているライダーの方も熱にやられているために、その影響もあるのだが。なお4つ備わるシリンダーの内、アイドリング時や低負荷走行時にはリアバンクを休止させて2気筒モードとなっているのだが、知らなければそのようなことは分からない程切り替わりがスムーズである。
ワインディングでの走りは素晴らしく気持ちが良い。ホイールベースの長さやリアタイヤの太さを時折思い出させる場面はあるものの、それを凌駕する快感を得ることができる。特に軽量化が効いており、従来モデルよりもライダーに近づけられたハンドルに逆ステアを入力すると瞬時にバンキングをする。ライディングモードはミッドパワーのツーリングでもフルパワーのスポーツでもバランスが良い。4000~5000回転の太いトルクを味わうと、どこまでもこの道を走っていきたいと思わせてくれる。
ディアベルV4は扱いやすいパッケージングではあるが、ドゥカティ社は名門レーシングブランドであるがゆえ、根っこの部分の過激さはしっかりと残っている。だからなめてかかると痛い目にあう。これは間違いない。ある程度の経験、そしてライディングスキルはあるに越したことはないし、もしビギナーライダーであれば、徐々にでもよいので諦めずに乗りこなす練習をして欲しい。
一台で何役もこなすスポーツバイクとして所有することをお薦めすることはもちろんのこと、サーキット専用ドゥカティを持っている方がストリート用のセカンドバイクとして手に入れても良いだろう。ディアベルV4は他には無い唯一のスポーツバイクとして正常進化を遂げたのだ。
ドゥカティ ディアベルV4の詳細写真
関連する記事
-
ドゥカティ人物辞典
Carl Fogarty (カール・フォガティ)
-
試乗インプレッション
ドゥカティ ディアベルカーボン
-
試乗インプレッション
ドゥカティの新型パニガーレV4Sを最速インプレッション
-
試乗インプレッション
ドゥカティ ディアベルストラーダ