VIRGIN DUCATI | ドゥカティ マッハ1/S 歴史あるドゥカティを知る

ドゥカティ マッハ1/S

  • 掲載日/2009年10月22日【歴史あるドゥカティを知る】
  • 構成/VIRGIN DUCATI.com 編集部
マッハ1/Sの画像

保安部品付き「公道レース用市販レーサー」は
全く別物のエンジン&シャシーを持っている

タリオーニが初めてシングルレーサーを完成させたときから、ドゥカティがその持てる力を発揮していたのは、公道を使った長距離耐久レースであった。ところが、1957年に起きたミッレミリアでの大事故によって、イタリア国内での公道レースが全面的に中止となり活躍の場を見失ってしまった。

そこでスペインでドゥカティの販売を行っていたモトトランスが目を付けたのが、バルセロナの外れにあるモンジュイックの丘で開催される24時間耐久レースであった。ミラノ・ターラント用に用意していた125GSで、スパッジアーリ/グランドッシのペアは初参戦ながら見事に優勝。よく1958年は1~5位をドゥカティが独占するという快挙を成し遂げるのであった。その後も新たに開発された250ccマシンで参戦は続けられ、1964年に再びスパッジアーリ/マンドリーニによって優勝を手にしたのだった。そのバルセロナでの勝利を記念して、レプリカとも言える市販レーサーが1965年1月に発売されたのである。

マッハ1/Sの画像

発売されたのは250ccと350ccの2タイプ。公表された出力は250が34ps/8500rpmで350が39.5ps/8000rpmとなっている。バッテリー点火でミッションは5速であった。

マッハ1/Sと名付けられたそのマシンは、耐久レーサーならではの頑丈そうなダブルクレードルフレームが特徴的である。そこに詰まれたエンジンは量産車と共通に見えるが、砂型鋳造のクランクケースは、剛性を高めるためにマウントの幅を広くしたスペシャル品であった。後に登場するワイドケースの基本となったものである。また、レーサーなのに前後ライトが付いているのは耐久レーサーである証。エンジンには当然発電機が組み込まれている。1965~1966年に合計20台ほどが販売されたマッハ1/Sは、その多くがロングタンクに変えられスプリントレースで使われた。しかし、その重たいマシンはショートサーキットでの戦闘力を見出すことができず、残念ながらライダーたちには受け入れられなかった。

マッハ1/Sの詳細写真

マッハ1/Sの画像
トップブリッジに装着されているのは、ベリア製レーシングタコメーターのみ。さすがにスピードメーターは用意されない。トップブリッジの形状は量産車のものとは異なり、低く垂れ下がっている。
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マリアンナの時代からデザインが変わらない、公道レーサー用のヘッドライト。ウインカーと上部のスイッチは前オーナーが街乗り用に取り付けたもの。
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ストッパーの付いたシートはマッハ1と同じ形状である。当時は後輪の真上までお尻をずらすライディングスタイルだったので、この長さでもカタログなどではシングルシートと示されていた。
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上側にはカラーが入る幅の広いマウント。さすがのワイドケースもこれほど広くはない。量産モデルと違って前方を向いたオイル注入口は、1950年代レーサーからの名残である。
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ヘッドも量産車も同形状に見えるが、共通パーツは何もないまったくのスペシャル品。ベベルシャフトのハウジング横に2本目のプラグ(10mm)が取り付けられている。
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バルブスプリングシングルではおなじみの排気量が記されたカムシャフトホルダーも、量産モデルとはデザインが異なっている。カムへのオイルは上部から送り込まれる。
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クランクケース左側に打たれた刻印。排気量の後ろにはスポルト・コルサを表す「SC」が入り、その22台目だと分かる。発電計の配線がその後ろから出されている。
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デロルトSSI30Dが250ccマッハ1/Sの標準キャブレター。350cc版にはSSI32Bが装着される。1966年モデルの中にはアマル・モノブロックが装着された車両もあった。
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ワイドケースのベースであったことが理解できる後部マウント。手前の細いホースはチェーンへの給油のためのもの。タコドライブから垂れるオイルをチェーンに注いでいる。
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耐久レースにおいて効果を発揮していた230mmのグリメカ製4リーディングブレーキ。両面パネルはマグネシウム製だが、やはり重過ぎたようだ。
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フロントと同様のグリメカ製リアブレーキ。元々は、ホイールは前後19インチが標準である。
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マッハ1と比べるとかなり後退したステップ。すでに切られているが、本来は踏み返しがついていた。

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