VIRGIN DUCATI | ドゥカティ ディアベルカーボン 試乗インプレッション

ディアベルカーボンの画像
DUCATI Diavel Carbon

ドゥカティ ディアベルカーボン

  • 掲載日/2011年04月13日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/Ducati Japan  取材・文・写真/山下剛

低く、長く、カッコいいヤツ

車名であるDIAVEL(ディアベル)とは、悪魔を意味するイタリア語である「Diablo(ディアブロ)」のボローニャ訛りだ。それだけでなく「魅惑」や「蠱惑」といったニュアンスも含まれるのだという。人間の心の隙に入り込み、快楽へと誘惑するオートバイ――ディアベルにはそんなテーマが込められている。なお、国内発売開始は2011年6月4日となっている。

ディアベルカーボンの特徴

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ドゥカティ史上初のクルーザータイプ

ディアベルに搭載されるエンジンはムルティストラーダ1200と同じ水冷Lツイン「テスタストレッタ11°」だ。これは吸気バルブと排気バルブが同時に開いている間隔(角度)を示すもので、数値が小さいほど燃焼効率がよくなり、燃費向上や排気ガスをクリーンにする効果がある。ちなみにスーパーバイク1198の場合は高出力特性を得るために41°に設定されている。これまではハイパワースポーツモデル向けとされていた水冷Lツインだが、ムルティストラーダ1200からは「低回転時も安定した出力特性」を特徴としたセッティングが施されているというわけだ。

また、ムルティストラーダ同様、ライド・バイ・ワイヤを採用しているため、ライディングモードを選択して、好みのエンジン特性を選んで走ることが可能だ。モードの種類は「SPORT」「TOURING」「URBAN」の3種で、SPORTとTOURINGは112ps、URBANは100psを発生。それぞれパワーカーブも異なる設定となっている。ムルティストラーダ同様のシステムとして、キーレスエントリーも採用された。メーターは2種類の液晶パネルを採用し、ハンドル中央には速度と回転などを表示するLCD液晶、燃料タンク上にはTFT液晶パネルが設けられ、ギアポジションや走行モード、燃費などを表示する。

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スタイリングの特徴といえば、「ロー&ロング」な車体と、240サイズを採用したリアタイヤが織り成すマッシブさだ。ピレリが専用開発したディアブロコルサ2は極太ながらもコーナリングを意図したラウンド形状を持ち、ストレートをブッ飛ばすだけのオートバイではないことを、黙ったまま雄弁に語るのだ。

ディアベルカーボンの試乗インプレッション

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こんなカタチでもやっぱりドゥカティなのだ

アイドリングからドゥカティらしく鼓動感あふれる音。日本仕様は国内規制に合致しているが、それでも十分に迫力あるLツインサウンドを奏でる。まがってみるとハンドル幅は広く、やや遠い。ハンドルを据えきりしてフルロックしてみると、アウト側の腕が伸びきってしまう。足つきは良好で、身長175cmの筆者はひざにゆとりがある。重心も低いし、大きさの割に車重は軽いので取り回しは楽だ。

SPORTモードで走り出す。クラッチは湿式を採用しており、なおかつ防音プレートを装着しているのでニュートラル時も静かだし、つながりも滑らかだ。乾式クラッチをドゥカティらしさと感じているファンも多いと思うが、湿式のメリットは素直にありがたい。

3000~4000rpmあたりの回転域でもギクシャクすることはなく、十分に常用できる力強さとスムーズさがある。扱いやすさを重点にチューンされた水冷Lツインは快適だ。歩行者が多い裏路地などではノイズの少ない低回転域で走らせても、ライダーに負荷がこない。余計な気を使わず済むから疲れも少ない。

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SPORTモード時に気になるのは、シフトチェンジ後にスロットルをオンにしたときの唐突さだ。パワーがドン!と発生するのでどうしてもギクシャクする。しかしそこを超えると怒涛のトルクが溢れ出し、240サイズの極太タイヤがアスファルトを削りながら加速していくような錯覚すら味わえる。国内規制のためイタリア仕様よりもパワーダウンされてはいるものの、テスタストレッタ11°が発生する112psは1590mmものホイールベースを持つ車体にもかかわらず、フルスロットルをくれてやるだけでフロントタイヤを浮かすことができる。そこはドゥカティの血統なのだ。

TOURINGモードの最高出力は112psながらも加速曲線が穏やかになり、扱いやすさが増す。URBANモードは100psになるが、スロットルオン時のスムーズさはその名の通りストップ&ゴーの多い市街地でおおいに助けになる。このあたりはドゥカティが標榜するとおり、ライディングモードを走行シーンに適合させれば3台のオートバイを所有している気分になれるほど、その恩恵は大きい。

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ここまではそのスタイルを裏切らない性格を見せてくれるディアベルだが、それをいい意味で裏切ってくれるのがコーナリング性能だ。ロー&ロング、キャスター角28°のディメンションは曲がりにくさを想像させるが、交差点などのゆっくりとしたコーナーも走らせやすい。極太リアタイヤの作用でややオーバーステア気味なものの、バンク時のハンドルの切れ方が自然で、十分にバランスされたハンドリングだ。扱いにくさは感じない。

ブレンボ製モノブロックキャリパーをラジアルマウントする手法は、ドゥカティの常套手段。信頼できる強烈なブレーキング性能は、パワフルなエンジンに必須だ。さらにうれしいのはボッシュ製ABSが標準装備されている点で、GPで鍛えられて磨かれたブレンボ製ブレーキの性能を誰でも最大限に活かすことができる。

ドラッグスタイルでありながら、コーナリングとブレーキにも抜かりない性能を込められたディアベルは、やはりドゥカティらしさを随所に見られ、感じられるオートバイだ。古くからのドゥカティファンにこそ、一度は試乗してもらいたい新世代ドゥカティでもある。

ディアベルカーボンの詳細写真

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前後17インチホイールを採用しながらも、ロング&ロースタイルを実現したディアベル。ホイールベースは1590mmとなっている。
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迫力あるエキゾーストパイプは58mm径の極太ぶり。エンジンは水冷テスタストレッタ1,198cc、もちろんLツイン。112ps(日本仕様)を発生する。
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マッシブなスタイルと走行性能を両立させるため、ラジエーターは左右それぞれのボディサイドに装着される。
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スリッパークラッチ内蔵の湿式クラッチ。騒音を低減するプレートが挟み込まれて全体的に厚みが増し、マッシブフォルムにも貢献。
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エンジン下部にはオイルクーラーを装備。そこから続くアンダーカウルは樹脂製だ。
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ヘッドライトはモンスター同様に上下二分割され、上がロービーム、ハイビーム/パッシング時には下部分も点灯する。
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シャープなシルエットのバックミラー。形状や大きさもあいまって視認性は良好。
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ディアベル・カーボンのフロントフォークインナーチューブはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングされ、低摩擦係数と耐久性を向上。
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ラジエーターカバー部に内蔵されるフロントウィンカー。スタイリッシュなシルエットを作り出している。
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アルミ鍛造の9本スポークホイールはマルケジーニ製(カーボン仕様)。ブレーキインナーローターはホイールスポークとシンクロしている。
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クラッチ&ブレーキのフルードタンクはこだわりを感じさせる作りになっている。
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スピード&タコメーターはLCD液晶、タンク上部に設置されるマルチメーターはTFT液晶で、走行モードやギアポジションなど様々な情報を表示する。
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サイドカバーは樹脂製だがヘアライン加工されたアルミパネル風となっており、高い質感を誇る。
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左右のステップには滑り止めのラバーが装着される。取り外すことも可能だ。
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タンデムステップはアーム付け根が可動する格納式。格納時でも使用時でもスタイリッシュさを崩さない。
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鋭い加速時にライダーを支える形状のシート。日本仕様のシート高は750mm(ローシート)。シートスポンジは余裕のある厚みを持っている。
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グラブバーは格納式となっており、使用時にはこのような状態となる。シートと同じ高さに設定され、握りやすい形状となっている。
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シート下の様子。中央やや右にある丸いノブはグラブバーのロック機構。前部にはETCを設置できそうなスペースもある。
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シート高を低く抑えるため、リンク式のリアサスペンションユニットはスイングアーム下部にほぼ水平に装着される。
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リアサスペンションのイニシャルを変更するダイヤルは、車体左側のメインフレーム後端部に取り付けられている。
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迫力あるフォルムのサイレンサー。騒音規制をクリアするため、イタリア仕様よりも10cm長くなっているのが日本仕様の特徴。
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カーボン仕様はリアホイールもマルケジーニ製9本スポーク、アルミ鍛造。シルバーとブラックのツートーン仕様が男性的な高級感を演出する。
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リアウィンカーもボディにビルドインされる。テール&ストップランプも左右分割式となっている。中央は格納式グラブバーに装着されるリフレクター。
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ナンバープレートステーは、ドゥカティらしさ溢れるトレリスフレーム。粋なデザインだ。
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240サイズのリアタイヤは、ピレリが専用開発したディアブロロッソ2。コーナリングを意識したラウンド形状が、ディアベルの性格を物語る。

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