VIRGIN DUCATI | 【ドゥカティ デスモ450 MX 試乗記】MotoGPの遺伝子が土煙を上げる、異次元の高回転型モトクロッサードゥカティDESMO450 MX 試乗インプレッション

【ドゥカティ デスモ450 MX 試乗記】MotoGPの遺伝子が土煙を上げる、異次元の高回転型モトクロッサードゥカティDESMO450 MX

  • 掲載日/2026年01月19日【試乗インプレッション】
  • 取材協力/ドゥカティ ジャパン  写真・文/稲垣 正倫
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DUCATI Desmo450 MX
アスファルトの上で世界最速の称号を欲しいままにしてきたドゥカティが、ついに未踏の地「オフロード」へと足を踏み入れた。同社初となる量産モトクロッサー「Desmo450 MX」の登場だ。

サーキットの技術をオフロードへ

MotoGPやスーパーバイク世界選手権で培った技術を惜しみなく投入し、開発にはレジェンドライダー、アントニオ・カイローリも参画。ドゥカティの代名詞である「デスモドロミック」機構を搭載した450cc単気筒エンジンは、オフロードの常識を覆すほどの“美しさ”と“速さ”を秘めている。

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今回は、元全日本モトクロスIAライダーであり、現在は全日本エンデューロ選手権でトップランカーとして活躍する太田幸仁選手による試乗インプレッションを通じて、このイタリアン・モンスターの実像に迫る。

これまでのモトクロス界において、450ccクラスのマシンといえば、強靭なフィジカルを持つトッププロだけが扱える「猛獣」のような存在だった。アクセルをひとひねりすれば身体が置いていかれるほどの暴力的なトルクが発揮される――それが450ccの常識だったからだ。

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しかし、Desmo450 MXはその定説を覆すキャラクターを持っていると太田は言う。圧倒的なパワーを持ちながら、ライダーを恐怖させないスムーズさと、高回転まで突き抜ける伸びやかさ。それはまさに、アスファルトの王者ドゥカティが提示する、新しいオフロードバイクの回答なのかもしれない。

常識を覆すデスモドロミック採用

そもそも「モトクロッサー」とは、公道を走るための保安部品を一切持たず、土の上を速く走るためだけに特化した純粋なレーシングマシンだ。その最高峰クラスである450ccは、四輪レースで言えばF1に相当するカテゴリー。各メーカーが威信をかけて技術を競い合う激戦区である。

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そこにドゥカティが持ち込んだ最大の武器が、独自のバルブ駆動システム「デスモドロミック」だ。一般的なエンジンが金属バネ(スプリング)の力でバルブを閉じるのに対し、デスモドロミックはカムとロッカーアームを使って機械的に強制開閉を行う。これにより、バネのサージング(共振)限界を超えた高回転化が可能になるだけでなく、バルブスプリングの抵抗(フリクション)を極限まで減らすことができる。

Desmo450 MXのエンジンは、単気筒ながら11,900rpmという驚異的なレブリミットを実現。最高出力はカタログ値で63.5psを叩き出す。低回転域のフリクションロス低減は、スムーズな回転上昇と繊細なトラクションコントロールにも寄与しているだろう。

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車体構成も抜かりはない。アルミ製のペリメーターフレームは溶接箇所を最小限に抑え、剛性と軽量化を両立(燃料抜き装備重量104.8kg)。足回りには日本のSHOWA製サスペンション、ブレーキにはブレンボ製キャリパーを採用するなど、信頼性の高い一級品で固められている。さらに、MotoGP譲りの電子制御技術も搭載。トラクションコントロール(DTC)、クイックシフター(DQS)、パワーローンチといった機能が、フィジカルを重要視するモトクロスにインテリジェンスをもたらしている。

450ccの恐怖感がない? 回せる快感

長年様々なメーカーのモトクロッサーやエンデューロマシンを乗り継いできた太田幸仁も、Desmo450 MXの乗り味には驚きを隠せない様子だった。

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実車を前にすると、イタリアンブランドらしい洗練されたデザインと、アルミフレームの独特な質感が目を引く。鋳造パーツを多用し溶接ビードが少ないフレームは、既存の日本車やオーストリアのKTMなどを代表とするこれまでの欧州車とはひと味違った美しさだ。

エンジンを始動しコースインすると、まず感じるのはその「異質な扱いやすさ」だという。通常、450ccモトクロッサーは低速からドンッ! と暴力的なトルクが発生し、ライダーを緊張させるものだが、Desmo450 MXは違う。

「パワフルなんですが、開け始めの角が取れていてすごくスムーズなんです。低速からいきなり来るのではなく、中高速に向けて綺麗にパワーが湧き上がってくる。スロットル操作に対してエンジンがリニアに、忠実に反応してくれる感覚があります」

特筆すべきは高回転域のフィーリングだ。デスモドロミック機構の恩恵か、振動が少なく、どこまでも回したくなるような伸びやかさがある。

「450cc特有の重ったるさや怖さがなくて、まるで250ccのマシンを全開にして乗っているような軽快感があります。レブリミットに当たっても失速感がなく、高回転域が一番気持ちいい。これはMotoGPマシンのエンジニアが作ったエンジンなんだなと実感させられますね」

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既存の450ccが「鉄槌」のようなトルクで路面を掻きむしるタイプだとすれば、Desmo450 MXは「剃刀」のように鋭く、高回転でパワーを紡ぎ出すタイプと言えるかもしれない。

このマシンには、電子制御デバイスにより高度なセッティングが可能というもうひとつの顔がある。ハンドルスイッチで切り替えられるライディングモードには、制御が介入する「マップ1(マイルド)」と、フルパワーの「マップ2(レーシング)」がある。

「マップ1なら、アマチュアライダーやエンデューロ愛好者でも十分に楽しんで乗れる懐の深さがあります。逆にマップ2にすると、一気にファクトリーマシンのような激しい加速に豹変する。この変化幅は凄まじいですね」

欧州車に近い剛性バランス

車体に関しては、KTMなどの欧州車に近い剛性感があるという。新車ゆえの硬さはあるものの、コーナリングは素直で、狙ったラインにスッと入っていけるハンドリングを持つ。SHOWA製サスペンションの作動性も良く、ギャップの走破性も高い。

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「車体のどこかが突出して硬いというわけではなく、全体で剛性を出している印象。スピード域が上がれば上がるほど安定感が増していく、レーシングマシンらしい車体です」

価格は税込で170万円台(取材時)と、国産モトクロッサーに比べれば高価だ。しかし、太田は「その価値は十分にある」と断言する。

「通常ならプロショップで高額なチューニングを施さないと手に入らないような、高回転まで淀みなく回るエンジン特性が吊るしの状態で手に入る。さらにブレンボやショーワといった最高級パーツが標準装備されていることを考えれば、決して高くはないと思います」

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「450ccはパワーがありすぎて扱えない」と敬遠していたベテランライダーや、「最新のテクノロジーで土の上を走ってみたい」というファンにとって、Desmo450 MXはこれまでの常識を覆す、最高の選択肢になることだろう。

デスモ450MX 詳細写真

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水冷4ストローク単気筒449.6ccエンジンは、ドゥカティのアイデンティティである「デスモドロミック」機構を搭載。バルブスプリングを持たず機械的にバルブを開閉することでフリクションロスを極限まで低減し、11,900rpmという高回転までスムーズに吹け上がる。最高出力63.5psを9,400rpmで発生させる、これまでの450ccモトクロッサーにはない軽快感を持つパワーユニットだ。
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フロントブレーキにはブレンボ製2ピストンフローティングキャリパーと、ガルファー製260mmディスクを装備。強力な制動力はもちろん、泥だらけの状況下でも指先一つでコントロールできる繊細なタッチは、さすがブレンボといった仕上がりだ。
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美しい輝きを放つアルミ製ペリメーターフレーム。鋳造、鍛造、押出成形のパーツを適材適所に配置し、溶接ビードを最小限に抑えることで剛性バランスを最適化している。太田選手曰く「欧州車らしいカチッとした剛性感がありつつ、コーナリングは素直」とのこと。
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ハンドル左側のスイッチボックスは多機能型。手元の操作だけで「マイルド/レーシング」のマップ切り替えや、トラクションコントロール(DTC)、クイックシフター(DQS)、ローンチコントロールのON/OFFが可能。状況に応じて瞬時にマシンの性格を変えられるのは大きな武器だ。
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フロントフォークはSHOWA製のφ49mm倒立タイプを採用。インナーチューブにはカシマコーティングが施され、初期作動の良さを追求している。日本製の足回りが標準装備されている点は、セッティングやメンテナンスの面でも日本のライダーにとって安心材料と言えるだろう。
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リアショックもSHOWA製で、リンク式を採用。スイングアームは鋳造アルミニウム製で、高いトラクション性能を発揮する。サスペンションストロークはフロント310mm、リア301mmを確保しており、ビッグジャンプの着地もしっかりと受け止める。
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標準装着タイヤはピレリの「SCORPION MX32 MID SOFT」。モトクロス界では定番中の定番と言えるタイヤで、幅広い路面コンディションに対応する。ホイールは高砂EXCELリムにアルピナ製スポーク、アルミ削り出しハブという豪華な組み合わせだ。
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エキゾーストシステムにはレゾネーター(共鳴室)を備え、厳しい音量規制(109dB)に対応しつつ最大限のパワーを引き出している。エキパイの取り回しも美しく、機能美を感じさせるデザインだ。
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ラジエーターは従来形状より表面積を6.5%拡大した菱形タイプを採用し、過酷なレース環境でも安定した冷却性能を確保。シュラウドのデザインも空力と冷却効率、そしてライダーの動きやすさを計算し尽くした形状となっている。
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太田選手が「少し短めで、慣れが必要かもしれない」と指摘していたシフトペダル周り。エンジン側にオフセットされた配置となっており、ブーツのサイズや好みに合わせて調整や慣熟が必要になるポイントかもしれない。
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シート高は970mm。フラットな座面とスリムなタンク形状により、前後への体重移動が非常にスムーズに行える。イタリアンレッドのボディワークは、ドゥカティ・チェントロスティーレ(スタイルセンター)によるデザインで、機能性と美しさを両立している。
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クラッチはブレンボ製の油圧式を採用。450ccの強大なトルクを受け止めるクラッチながら、レバーへの入力は軽く、レース後半の疲れた状態でも正確な操作をサポートしてくれる。
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メンテナンスサイクルの長さもデスモドロミックの恩恵の一つ。ピストン交換は45時間、バルブクリアランス点検も45時間毎と、レーシングマシンとしては異例の長さを誇る。アワーメーターも標準装備されており、管理もしやすい。
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燃料タンク容量は7.2リットル。タンクキャップはフラットに収められ、ライダーのアクションを妨げない。外装パーツの脱着も容易で、レース現場での整備性も考慮された設計となっている。

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