ドゥカティ ハイパーモタード939
- 掲載日/2016年07月20日【試乗インプレッション】
- 取材協力/Ducati Japan 取材・文/中村 友彦 写真/Ducati Japan、VIRGIN DUCATI.com 編集部
アップライトな乗車姿勢とストロークの長い前後サスで
他のドゥカティとは一線を画するスポーツ性を獲得
近年では異なる道を進んでいるものの、2007年にデビューしたハイパーモタードは、もともとは初代ムルティストラーダの基本設計を転用して生まれたモデルだった。2003年から発売が始まったムルティストラーダの特徴は当時、ドゥカティらしからぬとも言われた“アップライトな乗車姿勢+ストロークの長い前後サスペンション”で、ムルティストラーダがその特徴をツーリング性能に活かしたのに対して、ハイパーモタードはスポーツ性を重視して開発。もっとも、両車の思想と構造に共通点が感じられたのは2009年型までで、ロングランでの快適性を重視するムルティストラーダは2010年から、軽さと親しみやすさを追求するハイパーモタードは2013年から、それぞれの分野に最適化した専用設計のエンジンとシャシーを採用している。
既存のスーパーバイク系やモンスターなどと同様に、初代では796と1100の2機種を設定したハイパーモタードだが、フルモデルチェンジを受けた2013年型では、排気量を821ccに一本化。そして同年からは、STD、足まわりの高品質化を図ったSP、ツーリングに特化した機能を持つストラーダと、3台がラインアップに並ぶようになり、このバリエーション展開は、排気量が937cc(車名は939だが)に拡大された2016年型でも踏襲されることとなった。
ハイパーモタード939の特徴
ユーロ4規制に対応しながら、従来型の資質を継承するため
テスタストレッタ11°の排気量を821→937ccに拡大
2016年型ハイパーモタード最大の特徴は、ピストン径の拡大によって(88→94mm。67.5mmのストロークは不変)、テスタストレッタ11°エンジンの排気量が821→937ccに増大したことである。もっともこの変更の主な目的はパワーアップではなく、ヨーロッパで施行されるユーロ4をクリアしながら、従来型と同様の資質を維持することで、最高出力は従来型とほぼ同等の108hpを公称。ただし最大トルクは9.1→9.7kgmに向上している。なお2016年型では排気量の増大に併せてインジェクションマップが刷新されているが、3種のライディングモードが存在することや(STDとストラーダはスポーツ/アーバン/ウェットで、SPはレース/スポーツ/ウェット)、ABS+DTCの介入度、エンジン特性が任意で変更できることなど、電子制御の基本は従来型のシステムを引き継いでいる。
一方の車体に関しては、シリーズ全車のホイールベースがやや短く(STD:1500→1,493mm、SP:1505→1,493mm、ストラーダ:1490→1,485mm)、装備重量がやや重くなっている(STD:198→204kg、SP:194→204kg、ストラーダ:204→210kg)ことが2016年型の特徴だが、鋼管トリレスフレームや足まわりの基本構成は、従来型をそのまま踏襲。前後サスペンションのホイールトラベルも従来型と同じく、STD: 170/150mm、SP:185/175mm、ストラーダ:130/130mmだが、SPに関してはフロントのブランドがザックス→オーリンズに変更されている(リアは従来と同じオーリンズ。なおSTDとストラーダの前後ショックは、従来と同じカヤバ/ザックス製)。
それ以外の細かい要素としては、冷却効果を高めるオイルクーラーの新設やフロントウインカーのLED化、液晶メーター内のギアポジションインジケーターの追加、2次減速比のハイギアード化(15/45→15/43)などが挙げられるものの、基本的に2016年型ハイパーモタードは、従来型を洗練させた熟成仕様と言っていいだろう。
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ハイパーモタード939SP